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034 仲間と仕事

「無理……ですか」

「うん、教会の人間は皆プライドが高いからねぇ。他所者のそれも冒険者なら、間違いなく相手にしてもらえないだろう」

「そうですか……」


 現実を知り、セレノは目に見えて落ち込んだ。だが、ヘンデルさんの顔は全く曇っていなかった。


「まあそれは……他の教会の話だけどね」

「……え?」

「私は、歓迎するよ」

「え?……いいんですか?」


 まさかの一言に、セレノは目を見開いた。


「もちろん。命の恩人に知恵を貸すくらい、何でもないさ。……まあ、ここの手伝いもしてくれると有難いんだけど」

「やります!……あっ」


 元気よくそう返したセレノだったが、俺の存在を思い出したようで、どうしようかとオロオロしている。


「俺のことは気にしなくていいよ、好きなようにやればいい」

「……じゃあ、何日か置きにここにお手伝いと魔法の授業を受けにくる感じですかね」

「俺はそれでいいけど……ヘンデルさんは?」

「私も問題ないよ。……そうだ、後、ミーナに冒険者のことを教えてやってほしい」

「……私?」


 急に話の中に自分が出てきて、頭にはてなを浮かべるミーナ。


「ああ。ミーナは魔法にはあまり適性がなくてね……その分、体を動かすのは得意なんだ。だから、ここにいるより冒険者をする方が向いている」

「それは俺も思いました。……ミーナが良ければ、俺は歓迎するよ」


 ヘンデルさんと俺を交互に見ながら、猫耳が段々と下がっていく。


「ヘンデルさんそれじゃ、ここは……」

「大丈夫、代わりにセレノちゃんが来てくれる。それに、私はミーナが生き生きとしている方が嬉しいよ」

「!……私、頑張ります」

「ああ、頑張っておくれ。ミーナの活躍を、私に聞かせておくれ」


 それを聞いて、下がっていた耳は立ち上がり、ピコピコと忙しなく動いている。やる気に漲っているようだ。



 話し合いの末、セレノの勉強日は三日に一回、明後日から開始となった。この街に関してまだ知らないことが多い中で、急に明日から、というのは流石にしんどいだろう、という判断だ。

 ミーナだが、今日はミーナ分の宿を取っていないので、明日の朝またここに迎えに来ることになった。それからは、基本的には俺達と一緒に行動することになる。

 最後に、まだ疲れていそうだったヘンデルさんに俺の魔法を提案したら興味を持ってくれたので、しっかりと休んでもらった。今でも大変そうなのに、そこにセレノが来るんだから、さらに大変になるだろう。だから、少しでも力になれるように、と。



 そういうわけで、セレノの治療魔法の勉強の場を手に入れ、一人猫耳の仲間ができた。なんとも都合よく決まって、俺は大満足だ。



ーーーーー



 翌日は、ミーナに冒険者がしていることを簡単に教えた後、冒険者ギルドに行った。ここ神聖王国の冒険者ギルドは本部らしく、入ってみるとセンブルのギルドより大きく感じた。特にやることは変わらないが。

 ミーナの冒険者登録を済ませ、とりあえずやっていることを体験してもらうために、ゴブリンあたりの雑魚を倒してもらうことにした。

 その流れで、ミーナの戦闘スタイルに合う、武闘家用のガントレットと鉄板入りのブーツを購入し、装備させた。買ってもらうのは申し訳ないという風に言われたが、もう仲間だし、その分活躍してくれればいいと言っておいた。……まあこの時使った金は俺が稼いだ金じゃないけど。



 それで今は、街の外を歩いているところだ。耕作地帯は騎士が常駐していて魔物が討滅されているそうで、それ以外のところを攻める。


「あっ、あれは?」

「ゴブリンだな」

「あれがゴブリン。気持ち悪いけど……行ってくる!」

「あっおい」


 止める前にミーナは高速で走っていった。俺が走ったところであれには追い付けないし、実力は知ってるから……まあいいか。


 のんびり歩きながら様子を見ていると、まず一体のゴブリンにドロップキック、次のゴブリンに正拳突き。……戦闘は終わった。


「……つっよ」

「……すごいですね」


 動きにためらいが全くなかったな、俺とは大違いだ。俺達が追いつく前に終わってしまうとは、ゴブリンに気の毒に思ってしまう。ゴブリンでは弱すぎたか……


「一瞬で終わってしまった。他のやつも倒してみたい」

「……おう」


 ゴブリンの魔石を受け取りながらそんなことを言われたが、俺はもう止めない。


 それからはもう言うことはなかった。初心者は苦戦するといわれるプレインウルフの群れは蹴散らし、冒険のつもりで挑んでもらった銅級適性のオークの群れも、俺の手を借りることなく難なく壊滅させた。


「……もう私いらないですね」

「……それは俺もだよ」


 二人して自己喪失感にかられたが、なんとかそれはミーナに気付かれないように努力した。




 さらに翌朝。セレノの勉強の日ということで、ヘンデルさんの教会に皆で行き、送り向かいのついでにヘンデルさんによろしく言っておいた。セレノが居ない間、俺とミーナはどうするか迷ったが、どうせ冒険者稼業以外にやることがないので、適当に依頼をこなすことにした。


「そういえば、昨日レーブは戦わなかったけど、どんなことができるの?」

「ああ、俺はな……眠らせることしかできない」

「眠らせる?」

「そう、使った相手に夢を見るほどの深い眠りに誘うんだ。拘束手段として使うんだが……昨日はいらなかったからな」

「……ふうん」


 今後もいらないかも、と言いかけたが、それを肯定されると自信を無くすので止めた。



 今の冒険者ランクは、俺とセレノが銅級、ミーナが石級だ。とりあえずミーナを銅級に上げたいので、暇なうちに量をこなそうと思う。


 そう考えて、ミーナが余裕を持ってこなせて、かつ報酬が美味しい依頼を探す。達成回数目的なら報酬がしょぼいやつの方が早く終わっていいんだが、ミーナがつまらないと言っていたので、仕方なく。まあ金は稼げるから文句はない。


「これとかどうだ?」

「ん?プレインウルフの群れ?……うーん、ちょっと面倒くさいかも」

「……これ、割と美味しいやつだぞ」

「そう?じゃあやる」

「おう」



 そんな感じで良さげな依頼を選んでいると……後ろから声をかけられた。


「すみません、そこの人」

「……ん?俺ですか……って、あ」



 そこに立っていたのは、フードを深めに被った青年。少しだけ見える髪の色は黒く、何よりその平面的な顔立ちに、俺は親近感を覚えた。

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