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029 家族と計画

 神聖王国のとある建物の一室にて。


「何か報告はある?」

「俺からいいか」


 そう言って挙手したのは、屈強な体つきをした、顔に傷と疲労感を張り付けた男。


「うちのギルドで登録したやつなんだが、見たことも聞いたこともない魔法を使っていた」

「お前はセンブルのギルドだったな。どんな魔法だ?」

「ああ。〈催眠(スリープ)〉に似ているんだが、なんでも使った相手に夢を見せるらしい。息子相手に使われたんだが、効果は即効性で、長時間眠ったままだった」

「ほう、即効性で、長時間か」

「聞いている感じ、強そうには思えないな」


 横から口を出したのは、腰に幾つもの剣を携えた、長い銀髪を後ろで結んだ女。


「そうかのう?場合によっては使えそうじゃがのう」


 さらに横から意見を出したのは、先端に巨大な宝石をつけた高価そうな杖を持つ、長老のような見た目の老人。


「確かに、場合によって脅威となりえる。だけど、睡眠魔法であるなら、大きな問題になることもないだろう。……ところで、なぜご子息に?」


 最後に意見をまとめ、小さな疑問をぶつけるのは、ドラゴンや希少鉱石など、豪華な素材をふんだんに使った装備を纏った、金髪の男。


「それは……俺の不手際だ。あまり触れないでくれ」

「はは、そうか。他に報告は?」

「……」


 誰も口を開かなかったため、その集会は特に大きな印象を与えることもなく終了した。



ーーーーー



 フレンの町で生活を始めてから、これと言って何もしない日が大分続いた。この町を散策するのにも流石に飽きてきたので、そろそろまた旅に出てもいいか、なんて考えていた。もともとレーブとセレノがこの町を出たのは、旅をするのが目的だったしな。

 とは言っても、俺はこの世界のことについては、こんな国がある、なんて情報しかないので、次どこに行くのがいいのかなんて見当もつかない。

 だからまずは、情報収集から始めるべきか。


 というわけで、この世界のことに知っていそうな人物を思い浮かべる。……ああ、すっごい近くに居た。世界を回ってた、なんて言っていた人が。


「ロランさん、そろそろまた旅に出ようかと考えているんですが」

「だろうな、言い出す頃合いだと思っていた。私は止めはしないぞ」

「はい……それでなんですが、目的地を決めかねていて」

「なるほどな。確かセンブルにはもう行ったんだよな」


 そう言って、顎に手を置いて考えだすロランさん。


「どうかしたんですか」


 丁度いいところに、セレノが居間に入ってきた。


「そろそろまた旅に出ようと思って。セレノも来るよね」

「はい行きます」


 当たり前だと言わんばかりに食い気味で返答が来た。そうだろうとは思っていたので別に驚きはしない。


「まあ、行くとするなら、まずはやはり神聖王国だろうな。フレンからはセンブルの首都の次に近いのでな」


 神聖王国、か。秘薬エリクサーがある国、そんなイメージしかない。


「どういうところなんですか」

「ああ、神聖王国はな……」



 神聖王国。正式名称ハイリール王国は、その昔治療魔法の発展を願った者達が集まって研究を始め、その中で革命的な研究成果を上げた人物が、当時から数が少なかった治療魔法師を育成するのを目的として立ち上げた国、らしい。

 今もその国を立ち上げた人物の子孫が国王となって統治しており、何でも最上級に貴重な蘇生魔法が使えるのだとか。

 最近はその上に新たな分野の魔法にも手を出しているらしい。ただそれを公的に公開はせず、ひた隠しにしている。

 具体的な情報を得ようと他国が調査を行っても、絶対に漏らさない。むしろ偶然を装うように、送られた諜報員が悉く消されているのだとか。

 そこまでして知られたくないことでもあるのだろうか……いや、国同士の話だから、他国を出し抜きたいという意思があるのかもしれない。だがそれにしてはやりすぎな気もする。



「なんとも微妙な感じですが……」

「こういう話をするとな。別に王国を相手にしなければいいだけだ。それ以外は城や教会をはじめとした綺麗な建物が並ぶ観光向きの国だ」

「なるほど」


 観光向きなら、旅にはもってこいだ。それに治療魔法が発展しているということなら、セレノの勉強にもなるかもしれない。


「ちなみに、エレーヌは神聖王国の出身だ。若い頃あの国で冒険者稼業をやっていた時、俺についてきたいと言い出してな。私は困ることはないし、むしろありがたかったから受け入れたら、いつ間まにか結婚していた」

「……そうだったんですね」


 エレーヌさんもそうだが、ロランさんが急に自分らの話を入れてくる。聞いてないんだけどな。後、いつの間にかはおかしいだろ。

 まあ、それなら神聖王国が故郷というエレーヌさんにも話を聞いてみよう。暮らしていたのなら、ロランさんよりも詳しいことが聞けるだろう。

 先ほどから部屋を掃除していたエレーヌさんに声をかける。


「エレーヌさん、神聖王国について聞」

「聞いてたわよ。そうね、神聖王国っていうだけあって、治安は悪くないわね。組織がしっかりしているからかしら」


 声をかけられることを想定していたのか、俺の声を遮って意見を返してきた。ほう、組織がしっかりしていて、治安がいい。エレーヌさんがそういうなら、もう次の旅の行先は決まったも同然だ。


「でもちょっと教会がうるさいかもしれないわね。旅人とか冒険者だと思ったら近づいていくのよ。治療してあげるよ、お金は取るけど、って」

「あ、そういうのがあるんですね……他に良くないところは?」


 今なお貴重な治療魔法を使うことで、対価として金を得る。それは教会のやり方として正しいのだが、自分から金を取りに行くのはどうなのか。

 だがそれは断ればいいだけの話で、大した障害にはならない。よくお世話になるなら考え物だが、うちにはセレノがいるから、言い訳には困らない。


「他は……特に思い当たらないわね」

「なら、大丈夫そうですね。次は神聖王国に行ってみることにします」


 セレノの同意も得て、次の旅先は神聖王国に決まった。……のは良かったが、肝心なことを忘れていた。


「そういえば、金がないな……」


 ここに来るための旅費分しか稼いでいなかった為、今は本当に小銭しかない。しばらくは金稼ぎか……と思っていた時、


「金なら渡そう。旅費として使ってくれ」

「え、いいんですか?」

「ああ。町長だから金はあるが、贅沢するつもりもない。正直持て余しているんだ」


 そんなことを言って、ロランさんが金を用意してくれることになった。持て余しているなら、税をもっと減らせるのでは……まあそれとはまた話が別になるか。ここは素直に受け取っておく。



 数日後、双方の両親に挨拶した後、俺達は神聖王国、ハイリール王国行の馬車に乗った。フレンに来た時とは違い、今回はたくさんの乗客の中の一組となった。

 冒険者に溢れた馬車は賑やかで、前世の修学旅行みたいな雰囲気だ。人込みは苦手だが、たまにはこういうのも悪くはないと思った。

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