027 意外な本性
あのすさまじい眼力はなんなんだ……。先ほどまでの気の弱そうなロランさんが、突然別人になったような雰囲気を醸し出していた。
「あの人……やっと本気を出してくれたわね」
「本気?」
エレーヌさんはロランさんがああなることを知っていて、それを望んでいたようだ。あれだけのやる気を出せるなら、どうして今まであんなに気弱だったんだ。
「ええ。ロランは元々冒険者だったの。それもかなり強い」
やっぱりそうだったのか。風魔法が使えると聞いていたし、世界を回っていた、とか言っていたから、そうだろうとは思っていた。かなり強い、というところは意外だったが。
「そうだったんですか。……そんな強いんだったら、なんであんなに……」
「そこよね。確かにロランは強かった。……だけど、自分で想像できないことには踏み出せない、臆病な人だった。……私はそのギャップに惚れたんだけどね」
なるほど、つまり今回はこうなった理由が分からないから、解決に乗り出すことが出来なかった、というわけか。なんだか、町長には向いていないような気がするが……あと、別にエレーヌさんがロランさんに惚れた理由なんて聞いていない。
そもそも、なんで冒険者をしていたロランさんが、急に町長なんてやっているんだろうか。そんなことあるのか?
「でも何故、ロランさんは町長なんてやってるんですか?強いなら、そっちを活かす方が良さそうですが」
「そう思うわよね。でもそう出来なかった理由があるの」
「それは……?」
そう聞いたところで、屋敷のドアが勢いよく開く。そこには、乱れた髪をそのままにしたロランさんが立っていた。
「終わったよ」
そう一言。……この短期間に何が?
「……えっと?」
「元凶を見つけて、二度と今回みたいなことをしないように分からせてやった」
「いや、早くないですか」
「私の風魔法にかかればこんなものだ」
ぞろぞろとついてくる町民の前で、持ち前の風魔法を使って、向かってきた者は吹き飛ばし、逃げようとした者は引き寄せ、聞き出した元凶は服を身ぐるみ剥がしたらしい。やることが分かればこんなにも早いものか、恐ろしいなこの人。
「今回の件について、解決はできた。だが……」
しかし、そこまでしても、本人はまだ納得いかないことがあるようだ。
「だが?」
「町民に、何か詫びをしてやりたい。出来れば税関連がいいんだが、何も思いつかなくてな」
「……はあ」
なんともお人好しな人だ。……ん?何も思いつかない、だと。それって、また悩み続けるやつでは?……ここは俺が案を出したい。
とは言っても、すぐに案が浮かぶわけでもない。税関連にこだわらなければいけないとなると……
「税って、元々高めにしてあるんですよね」
「そうだな。町民によっては、払うのが厳しいと感じるだろう」
「町民によっては、か。……ん?」
そこに俺は違和感を覚えた。確かに税金は、払うのがキツいと思う人もいるが、それは本人の事情であることが多い。例えば、借金の返済など必要な分が別にあるとか、単にお金を使いすぎているとか。だから、町長がそれを気にすることはない気がする。ということは、税の取り方に問題があるのか。
「屋敷に集まっていたのって、町民全員ですか?」
「いや、もっといるはずだ。そういえば、上の方の家の者は来ていなかったように思う」
なるほど、見えてきた。屋敷に集まっていたのは上の方、つまり大きな家に住んでいる者以外だ。服装を見ても、高そうなものを身に着けているような人はいなかった。だから前提としては、お金に余裕のない層の人間が怒っているのだ。
逆に上層の人間が税を倍増されても動かなかったのは、それだけ蓄えがあるから、そこまで問題視しなかったのだろうと推測する。
だからやはり、税の取り方に問題があるみたいだ。
「案を思いつきました」
「なんだと!?教えてくれ」
「税って、どの家も同じ額取っていますよね」
「ああ、そうだな」
「それを辞めましょう」
「辞める?税を取らないと、この町は運営できなくなるんだが」
「話はまだ終わっていません」
「……すまない、続けてくれ」
まだ肝心なところを説明していないのに、話を進めないでくれ。あんたも眠らせられたいのか。
「辞めるのではなく、徴取の仕方を変えるんです。家の小さな、所得が少なめの人からは少なめに、家の大きな、所得が多めの人からは多めに取ればいい。例えば、その家の所得の何割、とか」
「なるほど。……レーブ、お前天才か。お前のほうが町長向いてるぞ」
「そんなことはないです」
前世ではそういう考えは当たり前だったし、俺としては逆にそうしてないのがおかしいと思う。
「……記憶も失くしたのに、そんなことに気付けるなんて、やっぱりレーブ兄はすごいです」
あ、そういう意味か。いやでも、記憶を失くしたからと言って頭が悪くなるわけではないと思うんだが……
「レーブ、その案を採用する。町民達には今すぐにでも通達しよう。助かった」
俺の手を握った後、ロランさんは再び屋敷の外へ飛び出していった。なんとかすべて解決しそうで何よりだ。




