1、腹黒王子? いいえ、へたれ王子です
いつも読みに来て下さってありがとうございまするv
「ゼフ! どうでした。上手くいきましたか?」
なかなか届かない報告に焦れ、勝手知ったるとばかりにその国の第三王子の私室へと押し入ってきた男がそこに見たものは、誰もいない真っ暗な空間だった。
否。誰もいない訳ではなかった。
第三王子の忠実な侍従により指し示された隣の部屋、寝室の奥のベッドの上には、こんもりと盛り上がる物体がそこにいた。
なにやら震えているそれに向かって、不安を抑えて声を掛ける。
「もしかして……、あの下衆男の婚約破棄をぶち壊して遣り込めることができなかったんですか?!」
「……それは上手くいった、と思う」
たっぷりと時間を空けて返ってきた答えに、眉根が上がる。
「どういう意味でしょう? きちんと教えて下さい」
すでにイリスがひとり王宮から下がったと聞いている。
当初の計画では、ここにイリスがいるうちに招き入れられてこの後について説明する筈だった。
それなのに。
病弱で、学園に在籍することも叶わなかった自分は直接足を運ぶ訳にもいかず、こうしてひとり不安に苛まされつつ留守番をしていたのだ。そんな自分には誰よりもきちんとした説明を受ける権利があると思っているのか、その問い詰める声には徒ならぬ圧が込められていた。
「ゼフ。…ゼフィール第三王子殿下、きちんとお答えを」
更に圧を上げて再度声掛けを行えば、その塊はびくんと大きく一度跳ねた後、もそもそと動き出した。
黄金そのもののような濃い金色の髪が現れる。
しかし、今そこにあるものは普段の快活な第三王子ではなく、ひどく萎びた少年だった。
「…アイツと、アイツの仲間達の不義は公にした。そうしたら、アイツが自分で言った婚約破棄を無かったことにしようとしたんだけど、それにイリスが怒って。…で、アイツとその仲間たちが激高して襲ってきたから、イリスがボコボコにした」
そこまでなんとか呟くように報告したものの、言葉が途切れる。そのまま待つことに焦れた男は残っている中で、最も重要だと思ったそれを口にした。
「それで、ゼフィール殿下の求婚は受け入れて貰えたのですか?」
その言葉に、ゼフィールの身体がびくんと小さく跳ねたが、男は気が付かなかったのか、続きを口にする。
「父は婚約破棄騒動を受けて領地を出たそうです。しかし王都へ着くのはどんなに馬を飛ばしても三日は掛かるでしょう。その前に領地に残っている母に手紙でだけでも報告をしたいのです」
咽喉の奥底から、ぐぎゅっと締まったような音がして、ついにゼフィールが泣き出した。
「僕、イリスに嫌われた。求婚を受け入れて貰えなかっただけじゃない。ぼく、イリスが、い、一番いやだっ、て、思うことを……うわあぁぁぁんっ!!」
大泣きだ。ベットカバーの中へ逆戻りして泣くゼフィールに、ネリウスは驚いた。
『断罪できるような大きなことが起きる前に、虐めがあると気が付いた時点で学園に訴えるなり、学園内で過ごす時に彼女のコンパニオンとなる女生徒を見つけるなりすればよかったのだ。それこそが、彼女にとっての救いとなった筈だ』
ゼフィールが「ぼくのことだ」と震える声で懺悔する。
ゼフィールは何もせず傍観していた訳ではなかったが、実際に目に見える対処をしていたかといえば、できていなかったと判じられても仕方がないだろう。
「そうですか。イリスがそんなことを」
泣きながらされた報告による情報をなんとかつなぎ合わせたネリウスは、頭を抱えていた。
「殿下もですけど、私も女性の心の機微には詳しくないですからねぇ」
敗因はそこでしたねと、ため息と共に反省の言を述べる。
ずっとベッドの中で本を読み、辺境伯家の軍師による手解きを受けて広く知識を詰め込もうとも、人付き合いについて詳しくなれた訳ではない。もっといえば、身近な女性と言えばイリスと実母のみ、未だ婚約者もいないネリウスにとって女性の心の動きなど範囲外もいいところだ。
そんなネリウスと、ネリウスを師と仰ぎ長く同じ時を過ごしてきたゼフィールが考えた今回の計画に、その部分への配慮が欠けているのはある意味当然の結果であった。
師弟には女性の視点が欠けている──その事に気がつくことすらできなかった自らの不明をネリウスは恥じた。
「い、イリスのその言葉を聞いたら、ぼく、頭の中が真っ白になっちゃって。なんとか頑張って、言わなくちゃいけないこととか思い出して。イリスの前だけでもって思って頑張ったんだけど、でもなんか順番も、滅茶苦茶で。きっと、イリスは僕を呆れてる。でも、焦れば焦るほど、口が変に、動いて…」
「それで言わなくてもいい部分まで次々白状してしまった、と」
「うっ…うわあぁぁぁー! 僕は馬鹿か、僕は馬鹿なのか、僕は馬鹿だったのか!!」
計画では、スタンプまでは明かしても、情報を流したことまではイリスに伝える筈ではなかった。
なにより外堀など埋め終わっていない。エリントン辺境伯のサインはネリウスと二人がかりで『イリスを大事にしない夫を認めるんですか?!』と説得し続けてようやく『本当にケインがイリスとの婚約を破棄して、イリスが自身でこの婚約を受け入れた時だけだ』と貰えただけだ。
「それにしても……ご自分の閨教育についてとか。ぷぷっ。本当に伝える必要のない情報ですね」
「うるさい!!」
でも、どうしてもあの時は主張せばならない気がしたのだ。自分はやっていない、と。
それとは別に、ずっと遠くから見つめていただけだったイリスが目の前にいると思うと、これは夢ではないかと触れたくなって、調子に乗っていつか触ってみたいと思っていた赤味を帯びた艶やかな髪を手に取ったりしてしまった。そうしたらイリスが嫌がらなかったのでやっぱり夢の様な気がして、その髪に唇を寄せることまでしていた。
その瞬間、イリスが嫌そうにたじろいだのが判って(やっぱり夢じゃなかったんだ!)と手を離したけれど仕出かしてしまったことは無かったことにはならない訳で。
自分の我慢の利かなさというか、これまで我慢しすぎて何かが壊れたのか判らないけれど、自分のやらかしに目眩がするばかりだ。
ゼフィールはネリウスには死んでも明かすつもりはないが、やたらと恰好つけた気もする。断られたくなくて必死になった言葉を重ね、縋った記憶もある。あの時自分がとった言動を思い出すだけでゼフィールは死ねる気がしていた。
とにかく誠実にならなければという意識が働いた結果、どう考えても不必要な暴露までしてしまったと泣くゼフィールに、ネリウスは一応の慰めの声を掛けた。
「でも、イリスの婚約は無事あの下衆男の有責で破棄されましたし。うん、計画倒れというほどでもないでしょう」
ネリウスとしては十分な成果だ。元々の妹に対する態度だけでも許せないものがあったというのに、あの売女を傍に侍らせるようになってからの行いを知ってからは腸が煮えくり返る思いだった。あれを義弟として妹の伴侶としエリントン辺境伯家に迎え入れないで済むよう情報を集め、自分の主である第三王子の下へと話を持ち込んだのだ。
勿論、主たる少年の積年の想いに気付いていたからでもあったのだが。
「…ネリウスはそれでいいんだろうけどさ」
涙声で師であり部下である自分を責める第三王子に、眉を下げる。
「でも、殿下は殴られたりされなかったんですよね?」
「それはさすがに、ねぇ」
それをやったら不敬になるからだと思うよ、とゼフィールは肩を下げた。
結局、いくら想いを告げても受け入れては貰えなかった。
我ながら往生際が悪いと思いながらも、何度も何度も、言葉を遮ってまでクドいほど説明を入れて縋った。
それでも、駄目だったのだ。
それなのに大丈夫も糞もあるかとゼフィールは瞳に溜まる涙がこれ以上零れないよう必死で堪えた。
「なら、大丈夫ですよ」
ネリウスが安請け合いをするから更に腹が立つ。
「大丈夫じゃないよ!」
「大丈夫ですよ。自慢ではありませんが、我がエリントン辺境伯家の人間で、本気で怒った時に手が出ないのは私だけです」
私は自分が怪我をすることになるのでしませんが、と不思議な自慢をされてゼフィールはジト目で自分が唯一、その師と仰ぐことに決めた存在を睨みつけた。
「なんだそれ」
「武を貴ぶ我が家では自分の意見は拳に載せて語り合うんですよ。私はしませんけどね。もし我が家の誰かに拳を向けられたらすぐに『参った』と降参する方が得策だと思いますね」
そう笑ってみせるネリウスに、ゼフィールは大きくため息を吐いた。
「もう、これ以上しつこく縋るようなことをしてイリスに嫌われたくない」
ぽつり、と呟いたゼフィールに、ネリウスも掛ける言葉を見つけられなかった。
そこへ、
「では、殿下は嘘吐きということになりますね」
思いもよらない、鋭い声が掛けられた。
「……ランド」
すっかり冷たくなっていた紅茶を淹れ替えるその手付きはいつもと同じほれぼれするような流れる仕草だ。
ランド・メリック。5つ年上のこの侍従は、ゼフィールの乳母である子爵家夫人の次男でもある。つまりは乳兄弟であり、ゼフィールより1つ年上の妹を持つ兄でもあるランドにとってゼフィールは主といえどもどこか末っ子めいた庇護する存在でもあった。
本来ならこの妹に意見を求めるべきであったのだろうが、閨教育係という案件故に、年若い少女に説明する勇気は誰にも出なかった。
妹より弟が欲しかったランドは、実の妹よりゼフィールと仲が良かったし、長じて自らの仕事を探す時も、孤独な少年だったゼフィールの侍従になりたいと直訴するほどだった。
しかし、常なら温かく幼い主を見守っている筈のその視線は、今はどこまでも冷たく突き放すようだった。
「イリス様をお見送りされる時に告げた言葉を違えるおつもりですか?」
その言葉に、ゼフィールの身体がびくんと跳ねた。
「ゼフ?」
訳も判らないネリウスが、前に座るゼフィールに説明を求める。
「『明日からガンガン行くから』そう仰ってましたよね」
喝を入れるように、ミントを入れた爽やかな紅茶を主の前に置き、ランドはゼフィールに問い掛けた。
「あれは嘘だったですか?」
「……嘘じゃない。あの時は本当にそう思って言ったんだ! けど」
「「けど?!」」
涙目でぷるぷるするゼフィールに、大人たちが容赦なく問い詰める。
「……だって、ほんとに。これ以上しつこくして、イリスに、本当に嫌われたら僕は生きていけない」
テーブルに突っ伏してしまったゼフィールに、模範となるべき大人たちが喝を入れる。
「大丈夫ですよ、殿下! すでに嫌われているなら誤差の範囲です」
「そうですよ。好感度が谷底にあるならあとは上がっていくだけです」
大人達ふたりに涙目のゼフィールを揶揄っているつもりはなくとも、傍から見ればそうとしか思えない。しかし、ふたりはどこまでも本気で真剣だった。
勉強ができても人間関係それも女心とかその機微に無縁の生活を送ってきた者たちから送られる言葉に、ゼフィールが頬を膨らませる。
「ふたりとも。自分のことじゃないと思って勝手な事ばっかり言って!」
そう拗ねたゼフィールに、ネリウスはその視線を緩ませて告げる。
「あの計画は、私が立てて殿下に協力を求めたものだと、きちんとイリスには説明しておきます。だから安心して下さい」
実際に、そうだった。
ゼフィールは、イリスに婚約者がいる、それもイリスの心がその婚約者に在ると知った時点で、あっさりと引き下がってしまった。
視界に入るのも苦痛だとばかりに避けまくるので、かの婚約者の悪評もネリウスから相談を受けるまで知らなかった程だ。
とはいえ、本人がそう思っているだけで、すぐ傍にいた者達には主が無意識に彼女の姿を追い求めていた事くらい判り易すぎるほど判っていたのだけれど。あくまでゼフィール本人としては避けていたつもりだった。
そんな、初恋の少女への想いを拗らせていたゼフィールに、いつも穏やかな表情をした自分の師が般若のごとき顔をして大量の資料を抱えて私室へと飛び込んできた日を思い出していた。
『ゼフィール殿下にご相談があります』
学園内で横行している婚約者のいる男子生徒達による不純異性交遊、校内で隠れて女子生徒とくちづけを交わしていただの手を繋いでいたといった苦情に関する資料を見せられたゼフィールは動くことを躊躇っていた。
「こういうのは学園の教師陣に持っていくべきだよ。入学したての一年生に持ってくる話ではない」
「しかし! 私は自分の妹がこんな邪険な扱いを受けていることを静観するような教師たちに任せておくことはできないです」
「でも、…それでもそのイリス嬢自身は、婚約者のことが、すき、だろう?」
辛うじてゼフィールはそれだけ口にすると、見透かされたような視線に曝されているのが嫌で、立ち上がり窓辺へと移動した。
しかしそんなゼフィールのやんわりとした拒絶に大人しく従うつもりはその日のネリウスには無かった。
「ゼフ! ゼフィール殿下、そうは言ってもアイツの言動には目に余るものがあってですね」
イリスの幸せは絶対に違う場所にあると兄であるネリウスは信じていたのだ。
「でも、イリス嬢は彼を、彼との未来を諦めてないでしょ?」
必死の形相で訴えかけてくる師の咎めるような視線が嫌で、ゼフィールは視線を遠く空を見上げる。
ネリウスが言いたいことはなんとなく分かった。この不埒な行いを突破口として妹の婚約を取りやめにしたいのだろう。しかし。
ゼフィールが見上げる先にある空は澄み渡り、婚約破棄を仕掛けるような不穏な話をするにはあまりにも不似合いだ。
その脳裏に、先週学園で見かけた遠い目をして婚約者の姿を見つめるイリスの姿が思い浮かぶ。
「他の誰からどう思われようと、自身の想いを勝手に捻じ曲げられる事をイリス嬢は望まないと思う」
ゼフィールが「この話はおしまい。イリス嬢は素晴らしいご令嬢だ。そのうちきっと婚約者の目も覚めるさ」そう口にしたことで、その日は終わりになったのだった
一年前のあの時にネリウスの言う通りにゼフィールが行動に移しておけば、婚約者が不貞を犯すこともなかったのだろうか。そう思うと罪悪感で胸が痛んだ。
「これは、本当のことなの?」
最初にネリウスが話を持ってきてから更に半年が過ぎ、怒りにより顔色をどす黒く変えたネリウスから渡された資料にあった学園内で行われているという不埒な行為に、幼さ故の潔癖が残るゼフィールの眉間に皺が寄った。
男子生徒は婚約者がいる者ばかり。それも複数。
そしてその相手の女子生徒はひとりだ。
「授業をサボり、高位貴族専用のサロンに立てこもることもあるとか」
とっかえひっかえその女生徒が高位貴族の子息との逢引きを交わしているという内容にゼフィールはその額に片手を当てた。
最上級生ともなれば、卒業後に備えて本格的に独り立ちを考えるべく自らを律するべき立場である。
それなのに、授業をサボり不貞に走るなどそれだけでも許しがたい行為である。
その上。
「この、バーカントン侯爵家三男のケインって。その…ネリウスの、妹さんの…」
それ以上続けられなくて口籠るゼフィールに、ネリウスがはっきりと告げた。
「えぇ、私の自慢の妹イリスの婚約者です」
「よし、全員殺そう」
「だめです、殿下! 冗談でもお止めください」
必死に止めに掛かったランドの言葉も、今のゼフィールとネリウスには届かなかった。
「そうですよ、ゼフ。ただ殺したのでは我が最愛の妹イリスに、バーカントン家との縁が残ってしまいます」
「ネリウス様もやめてください!! 大体、これだけの人数が関わっているのに、ネリウス様はご自身の妹のことばかりですか」
「「当然だ」」
止めるランドを無視して「どうせなら徹底的にあの男を排除しましょう」と続けたネリウスの瞳は強くて昏い光を帯びており、共に頷くゼフィールの瞳も負けないほど昏く沈んでいた。
あの時、ネリウスの計画に乗ると決めたのは僕自身だ。──だからゼフィールはネリウスの申し出に首を横に振った。
「それは要らない。イリス嬢に、責任を転嫁する卑怯者だと思われるのは嫌だ」
実行に移すと決めたのはゼフィールだ。実行したのも。
だから、そこから逃げるつもりはない。
ただ更に嫌われる可能性を考えると、明日、即行動に出る覚悟がつかなかった。
同じ学園に在籍しようとも、5か年制の学園では一年生と五年生では学び舎となる棟すら違う。
ごく稀に、朝の降車場や図書館や食堂ですれ違うのみだ。
あとは窓辺にイリスが立っている時など、遠くから眺めるばかり。
ゼフィールは、学園でイリスにほぼ話しかけ無い。
この計画を実行に移す為に、ネリウスを介して再び話をするようになったところだった。
なにしろ、それまでゼフィールとイリスがきちんと会話をしたのは、幼い日にエリントン辺境伯領に赴いた時の一度だけなのだ。
そんなゼフィールがいきなり断罪の場に現れて話し掛けても、自分が誰か判って貰えないかもしれない。
その危険を回避するため、ネリウスにわざと忘れ物をしたと王宮まで物を届けて貰ったり、休日には王都のタウンハウスへと足を運んでは顔を繋いだ。
そこまでしても、実際にイリスと言葉を交わすことができたのは数回でしかない。
そんなゼフィールがあの断罪の場に乱入すること、それ自体が異常なのだ。
しかし、イリスの為だと奮い立ちあの場へと介入したのだ。
(かなり頑張ってみたんだけど、な)
『…殿下はまだ学園の一年生でもあります。これから幾らでも素晴らしいご令嬢と出会うこともおありでしょう』
イリスから、他の女性を見るよう勧められた痛みが胸にぶり返した気がして、ゼフィールは思わずそこを押さえた。
自分でも、ビックリするほどダメージを受けた。
気が付かないまま犯していた罪を暴かれたことや、泣きながら何度も断られるなど既に息も絶え絶えだったこともあるのだろうけれど、あの言葉ほど突き刺さったものはなかった。
またあの言葉を告げられたらと考えただけ身が怯む。
「では、諦めるんですね? 諦めて、他の女性を婚約者としてお迎えになられると。そしてイリス嬢も再び他の男性と婚約を」
「駄目だ!!」
思わず立ち上がった。
自分の婚約者もだけれど、イリスが自分以外と縁を結ぶのはもう耐えられない。
「そんなこと、受け入れる訳にはいかない!!」
嫌だ、と思った。
「では、頑張るしかありませんね」
得意げに自分を見下ろす侍従に、思わず目が座る。
「ふん。乗せられてやる」
「ぷぷっ。意地っ張り。いつまでも初恋を拗らせてないで成就させてこいよ」
その言葉は侍従としては失格だろう。
しかし、乳兄弟として掛けられたその言葉の温かさに、ゼフィールは強く頷いた。
notポンコツ、yesへたれ!
腹黒じゃないんです。ヘタレ王子やったんや