レオン君 泣き崩れる
冒険者登録をする為に冒険者ギルドのギルドカウンターで名前を言って、更に詳しく出身地やら年齢などを聞かれると思っていたのだが、ギルドの受付の人からカードを手渡された。
そのカードには、親指の形の中に渦巻き模様の印が二つある、左手の親指の形をした印と右手の親指の形をした印があって、ギルドの受付の人が自身のカードを持ちながら身振り手振りで説明する。
「こうやって、右手の印の所に右手の親指で、左手の印の所に左手の親指で、そうしたら魔力を右手から左手方へ流してください。」
え、この世界の人達は、普通に魔力が扱えるのか?、と思いながら言われたように流そうとすると、カードが光リ輝き「ピ・」と音を立てる。
「はい、登録が完了しましたので、確認のため、こちらでカードを一旦、お預かりしますね。では息子さんも同じような形でお願いします。」
俺はギルドカードを受付の人に渡し、カゲマルのギルドカードの登録申請を待っていると、後ろから俺を見つめる視線を感じる。振り返るとレオン君がそこに居た。
「お久しぶりです、えと、カゲマル君のお父さん」
ま、マズイ~、今はカゲマルではなく、セロ・チチノマで登録している真っ最中じゃないか!っと、アブなぁ、そういやカゲマルはギルドに一回来てるんだった。
「あ~と、今日は息子のセロと一緒に来てるんだ、レオン君ちょっと今は・・、後でゆっくり話そう」
「はい」
そうしているうちにカゲマルの冒険者登録申請が終わりギルドの案内の人が話す。
「はい、確認が取れましたので、そちらの入り口から新入り冒険者の道を歩いて行って、チェックポイントでチェックリストに、クリアのチェックをカードに記憶させて、またこのカウンターに戻ってきてください」
「は~い」
どうやら新入り冒険者の道というのを歩いて行って、色々な審査や確認を行うようだ。俺がそちらに行こうとすると、カゲマルがレオン君に気づき、話しかけていた。
「グフフ~、レオン君、父上から、今日から冒険者になるレオン君へのサプラァ~イズプレゼント、受け取ってくださ~い」
「え、こんな、こんな物・・・ううああ・・ああ」
うおぅ~い、カゲマルぅー、なにぃしてんのぉさ~、レオン君泣いちゃったろうがぁ。レオン君はその場で泣き崩れて動かない。
そりぁそうだ、孔雀みたいな羽が背中に、そして肩に金色のモップみたいなのが付いている服なんて、渡されたらそりゃ嫌だろう、俺はカゲマルに小声で話しかける。
「おいっ、カゲマルぅ、もっと空気を読んでくれ」
「すいません、父上、レオン君に喜んで貰いたくて、つい舞い上がってしまいました」
「あんな服、プレゼントされて喜ぶ訳ないだろう」
「え、レオン君は喜んでいますが?」
「え、なんだってぇええ」
周りがザワザワしてきた、そうこうしてるうちにレオン君が、落ち着いてきて顔を上げる。
「こんなイイ物をくださり、嬉しいです、ありがとうございます。」
そう言った後、レオン君はちょっと「待ってください、直ぐ着替えてきますから」、と言って、俺が「嫌なら着なくていいんだよ」、と言っても「嫌じゃありません!」とキッパリ言い返され、どこかに行ってしまった、そして、冒険者ギルドの入り口から派手な少年が入ってきた。
「お待たせしました」
レオン君がそう言い放つ、正直、話しかけられると恥ずかしい。
「また少し待っていてもらえませんか?、何度も待たせてすいません、僕の冒険者カードを貰ってきます、一緒に新入り冒険者の道へ行きましょう。」
「うん、待ってるよ気にしないでね」
そして、レオン君が冒険者登録申請をしている時、ギルドの案内の人が俺の方を見ながらレオン君に話しかける。
「あの方々は、レオン君の知り合いなんだね、じゃ、レオン君に案内は任せてもいいかな?」
「はい、任せてください」
レオン君、ギルドの人からの信頼度、高っ、というかギルドの人にかなり知られているっぽいな。そして、レオン君の冒険者登録申請が終わり、こちらに駆けてくる。恥ずかしいので目立たないで欲しい。
「さぁ、行きましょう、カゲマル君のお兄さんとお父さん、えと、お名前を伺ってもよろしいですか?」
「レオン君、とにかく新入り冒険者の道に入ってから説明するから、ささ、行こう」
とりあえず、新入り冒険者の道に入って、周りに人が居ないのを確認してから状況を説明する。まず、俺のギルドでの登録名がマルス・チチノマである事、そして息子のギルドでの登録名がセロ・チチノマである事を説明して、これは、レオン君と俺達だけの秘密だよと言ってカゲマルに声をかける。
「カゲマル、ちいさくなってみてくれ!」
「はい、父上」
「え、う、うわ、カ、カゲマルなの?」
「そうです、レオン君、私ちいさくなれるんですぅ」
直ぐカゲマルに元に戻ってもらって、レオン君と共に新入り冒険者の道を進むと、第一チェックポイントがあった。
そこには水晶玉の様な物が八個並んでいて、真ん中にお金入れるような小さくて細長い穴が開いており、右側に親指の形の中に渦巻き模様の印があり、左側に目立つ赤いボタンがあった。レオン君がボタンを押した。
「冒険者の道へようこそ、ここでは冒険者カードの使い方をマスターしてもらいます」
おっ、自動音声か、魔法道具なんだろうがよくできてんな~
「まず、空いている魔法水晶に左手で触れてください、そしてを右手でカードの右側の印に親指を添える様に持ってください。」
言われた通りにすると「ピ・」っと音が鳴る
「はい、確認しました。これで第一チェックポイントはクリアです。」
終わった。第一チェックポイント、終わった。
「それでは、続きまして第二チェックポイントです。」
此処で続くのか!此処で。
「先ほどの行為で、皆さんに金貨を一枚、贈与しました。ギルドカードの中心から下がった所に小さな印があります。そちらを人差し指、もしくは親指以外で押してください。メニューが表示されたら、金貨のマークがあるところを押して、金貨が+1のメッセージがあるので、それを指でなぞれば、第二チェックポイントはクリアになります。」
良いのか、金貨一枚って相当な価値がある筈だが、俺は言われたようにすると、カードの左側に金貨が一枚贈与されたメッセージがあり、ネットゲームのログウィンドウの様な形式になっていた。
カードの右側に十四の絵柄が並んでいる、一番上の、宝箱から溢れる金貨の絵柄の横に。
100000という数字が載っている、その宝箱の絵柄の下に十三の硬貨の絵柄があり、上から三番目の金貨の絵柄の横に
1という数字が載っている、これは金貨が一枚という事なのだろう。俺はカゲマルと共に銭袋から硬貨を取り出して見比べてみる。
「なるほど、金貨一枚が十万円相当というのは、ここからきているのか」
「そうです、父上、一番下の硬貨の絵柄を一円玉だと思えば簡単です、その上が五円玉、そして、十円、五十円、百円、五百円、千円、五千円、一万円、五万円、十万円、五十万円、百万円ということです」
「なるほど、円だと思えば分かりやすいな、宝箱の絵柄は合計金額か?」
「そんな感じですよね、レオン君?」
「合計金額で合ってますけど・・・あのぅ、円というのは?」
「あっ、き、気にしなくていいよ、家の故郷のお金の呼び方みたいなものなの」
「そうなんですか」
そして俺達はギルドカードの金貨が+1の所をなぞった。
「はい、確認しました。これで第二チェックポイントはクリアです。」
終わった。第二チェックポイント、終わった。
「それでは、続きまして第三チェックポイントです。」
ですよね~、続きますよね~、まだ終わりませんよね~
「今度は先ほどとは逆の形になります、空いている魔法水晶に右手で触れてください、そしてを左手でカードの右側の印に親指を添える様に持ってください、そして頭の中で想像してください冒険者ギルドに金貨一枚を渡す想像をしてください」
言われた通りにすると「ピ・」とギルドカードから音がした。
「はい、確認しました。これで第三チェックポイントはクリアです。」
終わった。第三チェックポイント、終わった。
「それでは、続きまして第四チェックポイントです。」
来たぁ、知ってた、続きがあるの、知ってた
「それでは、ギルドカードの中心から下がった所に小さな印があります。そちらを人差し指、もしくは親指以外で押してください。メニューが表示されたら、金貨のマークがあるところを押して、金貨が-1のメッセージがあるので、それを指でなぞってください」
言われた通りにすると「ピ・」とギルドカードから音がした。いつも道理だが・・・このままでは金貨一枚を冒険者ギルドに渡すことになる、せっかく貰ったのに返すのか?・・・また返ってくるのかな?
「はい、確認しました。これで第四チェックポイントはクリアです。」
終わった。第四チェックポイント、終わった。
「以上です、ありがとうございました。」
えぇぇぇ、いやいや、お金、えぇぇ、金貨一枚は、まさか、終わるのか・・・