トンネルの中に倉庫を造る
クリエイトルームは主にパソコンで行う解凍処理のような事をする場所だ。ただ、解凍するのはデータではなく生物や現物であり。俺がこの世界に最初に表れた場所でもある。
「クリエイトルームにラーメン屋台セットを置いておくと、誤作動が起きる可能性があるから、この近くに置く場所を作らなきゃいけないんだが、ラーメン屋台セットを何処に置いとこうか?」
「それならば、一時的にトンネルの通路に置いておきましょう。今は私達しか使ってないので、邪魔にならないと思います。」
「フヌゥ、父上、トンネルとは何の事ですか?」
あ、カゲマルに言って無かったと思い、トンネルを作り、きれいな西の海の事やプライベートビーチの事を話した。カゲマルはトンネルを掘るところが見たいと言って、それよりも倉庫や物置の様な部屋をトンネルの中に作るので、それでも良ければとジョシュが言い、それにカゲマルが了承してラーメン屋台セットをトンネルへと運び出した。
「うおー、凄い迫力、これは素晴らしいものですねぇ」
カゲマルが驚嘆の声を出す、[トンネルン]で一瞬にトンネルの中の北側に倉庫部屋が作られる。しかし、熱が冷めるまでしばらく待たなければいけない。作るのは一瞬なので倉庫を十二部屋作ることになり、ジョシュが倉庫を造っている時、ふと天使のカードの事を思い出した。
「カゲマル、そういえばコレを渡すのを忘れていたよ」
俺は天使のカードを八枚、カゲマルに手渡した。十枚あったが一枚は俺が、もう一枚はジョシュが預かっておくことなっている。カゲマルも一枚を自分用に預かっておいてほしいと言い、カゲマルも了承した。残りの七枚はこの世界でカゲマルの大事な友達に渡しておけばいいと言ったら、カゲマルが笑顔で話す。
「父上、レオン君を送った後、街を見て回ったのですが、レオン君の妹のエリーちゃんに妙に懐かれまして、これはそのエリーちゃんに渡そうと思います。」
カゲマルがエリーちゃんに天使のカードを渡すと言ったとき、急に寒気がした。そして、いつの間にか、カゲマルの肩にスライムのジョシュが乗っていた。
「カゲマル兄様、エリーちゃんに天使のカードを渡すのは別に構いません。けれど先にレオン君に渡してくださいませ。お・ね・が・い・し・ま・す・ね・!」
「うぁーい、渡します、直ぐ渡してきます。今すぐ行ってきます。」
そう言ってカゲマルは今すぐレオン君の家に行きそうだったが、ジョシュに呼び止められた。
「カゲマル兄様、どうせならラーメンを作って持って行ってください。レオン君の家族に美味しいラーメンを食べさせてあげたいのぉ」
「ハイ、今すぐラーメン作って食べてもらってきます」
「カゲマル兄様、お箸を忘れないで持って行ってくださいませ」
そう言われて、カゲマルはせっせとラーメンを作り、その間にジョシュは俺に話かけてきた。
「ご主人様、確か、出前道具がある筈なんですが、何処にあるのかしら?」
「ん~と、あぁ、コレだろう、」
俺は取っ手の穴の付いた一枚の銀色の板を手に取り、取っ手を握って親指に軽く力を込めた。すると、板が膨らんで縦に長い長方形の銀色の箱になった。出前の箱だ。中には五つの区切りで丼やらを入れられるようになっている。
「おっ、カゲマル、五つまで入れられるらしいぞ!」
「ムッ、父上、それではチャーハンと餃子を五つ作ってください!」
「ヨシッ、判った、てか入るのか?、その銀色の箱に」
「入らなければ、私が食べますから」
そういえば、俺達は食べようと思えばいくらでも食べられるんだった。自分が少食なのでたまに忘れてしまう。でも、何気に俺の方が忙しくなってる~。俺は急いでチャーハンと餃子を五つ作った。カゲマルはすでにラーメンを五つ作り銀色の箱に入れている。俺のチャーハンと餃子もカゲマルに入れてもらう。
「入るのかって、思ったがちゃんと全部入るものなんだなぁ」
「父上、ラーメン、チャーハン、餃子、のワンセットで一つの棚に入るようになっているんですよ」
「なんだ、やけに詳しいじゃないか?」
その時、カゲマルが俺の方へ振り返った。
「父上も、いい経験になりましたね」(ニチャァ)
ちくしぃぃょぉぉぉぉ、コイツ知ってやがった、知っていてわざとチャーハンと餃子を作らせやがった。考えて見れば、カッパにラーメン作りをやらされた、とか言ってたもんな~。この悔しさを癒してくれるのはスライムのジョシュだなって事でジョシュを抱きしめる。ジョシュはプルプルと嬉しそうに揺れる。
「それでは、父上、行って来ます」
カゲマルは闇のマントを自身に被せると、それは黒い塊のような影になり、その影はだんだん薄くなる、数秒後には影は完全に無くなっていた。
「凄いですね。カゲマル兄様の技は、一瞬で消えてしまうなんて」
「今はもう、レオン君の家の近くに居ると思うよ」
「瞬間移動なのですか?、今の技は?」
「そうだよ、まぁ、カゲマルの瞬間移動はカゲマルにしか出来ないけど」
「ご主人様は出来ないのですか?」
「出来るよ、でもカゲマルの瞬間移動の様なやり方じゃないけどね」
その後、ジョシュが自分が瞬間移動を使えるようになるのは無理かも、と嘆いていたので、俺と一緒に練習しようと言ったら、めちゃくちゃ喜んだ。そして、もっとワガママを言っていいんだよって言ったら食べてない味のラーメンが食べたい、それからチャーハンと餃子も食べてみたい。と言うので作ってあげることにした。
「美味しいです、ご主人様」
「食いっぷりが凄いな、ジョシュは」
「できればご主人様も一緒に何か食べて欲しいのですが?」
「おぉぅ、それじゃぁ俺がカッパに異世界へ連れてこられた時、カッパが作ってくれた邪道メニューを一緒に食べよう。」
そう言って俺は二つのパックをお湯に入れる、そして、チャーハンを作る。底の深めな皿にチャーハンを盛る、もちろん二つ、その中に温めていた二つのパックを開けて中の具をかける。
「はい、チャーハンカレーの出来上がり、さぁ食べよう」
「わぁーい、おいしそうですぅ」
ふぅ、久しぶりに、このチャーハンカレーを食べるなぁ~、ふと横を見るとジョシュはもう食べ終わってしまったようで、俺が食べるのを見つめている。
「ご主人様、聞きたい事があるんですが?」
「ん、何だい、なんでも言ってみな」
何か、聞きたい事があったのだろう、先ほどの視線でどうした?と言ってやれれば良かったのだろうな。
「糞食い村って何ですか?」
「ブゥワァ!いや、それは食べてるときに言っちゃダメ」
「え、でも、今何でもって」
「言った、確かに、言ってたな、ゴメン、俺が悪いわ」
その後、糞食い村の事をジョシュに話した。ジョシュが行ってみたいというので、いろいろ考えた結果、闇のマントの生地でマスクを作れば俺でもあの悪臭に耐えられそうだと話し合い、基地に帰って早速作ってみようという事なったが、ジョシュが倉庫を仕上げたいので、と言うのでその作業を見届ける事にした。
「ご主人様、倉庫の仕上げが終わりました。」
「う~む、やっぱり扉かシャッターが欲しいなぁ」
「もしかしたら、糞食い村の方々に、そういった技術者が居るかもしれません」
「確かに糞食い村の人々は魔法が使えるし凄い人達なんだよなぁ、糞食いだけど」
俺は一番外側の倉庫にラーメン屋台セットをしまう。隣には[トンネルン]が置いてある。カゲマルは此処に寄るかもしれないが俺達が居ないと知れば基地に帰ってくるだろう。天使のカードもあるのでいざとなったら連絡も取れる。俺はジョシュを抱きかかえながら基地に帰った。
「ジョシュ、コレが闇のマントだ、これで瞬間移動が出来る様になるから、一緒に練習しような」
「わぁーい、ご主人様ぁ、ありがとうございます。」
「ただ、ほんの少し生地を貰っていいか?、ジョシュには大きすぎるだろうし」
「ご主人様、コレでマスクを作るんですよね。私が作ってもいいですか?」
「えっ、ジョシュが作ってくれるの?、じゃぁお願いします。」
「ハーイ、かしこまりました、ご主人様」
どうやら俺のマスクをジョシュが作ってくれるらしい、楽しみだ。そうこうしてるうちにカゲマルが帰ってきた。カゲマルから石鹸の匂いがするが問い詰めないでおこう。