そして天使が生まれた
俺がフェルシオーネさんに、俺の作った魔法道具での空の飛び方を教え終わった後基地に帰ると、少し基地がざわついていた、どうやら、もじゃもじゃの草の体から抜け出して、人間の様な姿に脱皮した泥人間の人達が何人か出て来たらしい、俺も直ぐに泥人間の人達の状態を見てみる、そしてモクレンと話し合い、此処からラーメン屋ギルドは男の子供達と女の子供達に分かれて治療をする事にした。
「それじゃ、俺とレオン君は男の子供達と一緒に泥人間の人達の男性の治療ををする、モクレン達は女の子供達と一緒に泥人間の人達の女性の人達を治療してくれ、ジェシーはしばらくモクレンの指示に従って行動してくれ、モクレンはジェシーの事をよろしく頼む、この子はカゲマルの妹みたいな存在だから、可愛がってくれ!」
そう言って俺はジェシーをレオン君の肩からモクレンの肩に移動させた、ジェシーがプルプルと緊張しているのが伝わったので落ち着かせる。
「ジェシー、大丈夫だ、モクレンはカゲマルの事が大好きなんだ、大好きなカゲマルの妹をいじめたりはしないから安心しなさい、モクレンにとってジェシーはジェシーが大切にしているレオン君の妹のエリーみたいな存在だ!、だから仲良くするんだぞ!」
俺はふとナラコとモクレンを会わせた事を思い出す、ナラコは緊張してしていて、殆ど会話は無かったが、今はとても仲良くなっているし、ジェシーもモクレンに引っ付くようになるだろう。
「さて、始めようか!、リストを診て着替えや食事をあらかじめ部屋に用意しておくぞ」
泥人間の人達には、あらかじめ着替える服や日用品の好みを聞いておいたので、それを子供達と一緒にそれぞれの部屋に回り用意しておく、子供達も良く働き直ぐに終わる、今度は各部屋に起き上がったら何が食べたいかというリストを見て、食事とテーブルと椅子を用意していく、コレは子供達では不安なので各部屋を見回りながら、少し温めれば食べられる状態まで作っておく、後は泥人間の人達から俺達を呼ぶリモコンボタンをテーブルに置いておき、俺達はキャンプで待機だ。
「しかしラーメン屋台セットについてる、注文を受ける機械が、こんな事で役に立つとは思わなかったな、どの部屋で呼ばれているのが判り易くていい、後はさらに判り易くするか・・・」
俺は男性は黒、女性は赤に番号の色を変えて、キャンプで待機している子供達に判り易くする、呼ばれたら一番小さくてあまり仕事ができない子供が患者の様子を見て、その患者が危険な状態であればその患者を優先するようにした、そして食事を用意する者、身の回りの世話をする者、健康状態を調べる者の三人態勢で看護にあたる、次々と泥人間の人から俺達を呼ぶ表示が出て忙しくなる。
一人の看護が終わったらキャンプで待機している俺の所に連絡が入り、トランシーバーで次の場所の指示を出す。どうにか子供達が看護作業を上手く回しているのを見て、レオン君が俺に話す。
「今の所、子供達だけで何とかなってますね」
「子供達も男の子の方が何故か多いからね、確かエリーの友達なんだよねぇ、あの子供達って」
「えぇ、でもエリーの友達は女の子ばかりですが、その友達の兄弟も多くいるようです、なので、あの人数になったのでしょう、元々エリーは錬金術師としての才能がありましたから、今、エリーは錬金術師ギルドで働いていますが他の友達は錬金術師ギルドでは雇って貰えなかったみたいなので、エリーと一緒に働けるのが嬉しいんじゃないでしょうか?」
「レオン君も割と近所では有名だったりするんじゃないのぉ、この男の子の多さ、ちょっと不思議なんだよねぇ」
「実は僕もマルスさんに助けられた時、行方不明の状態だったので、もし見つかっても既に死んでいると思われていたみたいです、僕が燃やされている所を見ていた目撃者が何人かいたようですし、その死んだか、もしくは大怪我をしている筈の人間が無傷で帰ってきたので、別の意味で有名になってしまって居る様ですね」
ほぉ、レオン君が無傷で帰って来て、レオン君の家の近所では大きな話題になったのだろう、レオン君も嫌われる様な子供では無いので、ラーメン屋ギルドに入りたいと子供達が親にお願いしたのだろうなぁ、ここで俺は子供達への介護の連絡をレオン君に任せて、ふと思い出したある物を基地に帰って注文してくる事にする。
「レオン君、直ぐ戻って来るから、子供達への支持を俺の代わりにやっといて」
「はい、わかりました」
俺は直ぐ基地に戻り、リリゼト産の寝袋を六十個注文した、そして直ぐキャンプに戻る。
「レオン君、ありがとう、もう大丈夫だよ」
「一体何をしてきたんですか?」
「レオン君もお世話になった寝袋があるでしょ、アレ!、そのリリゼト産の寝袋を六十個注文してきた!」
「六十個!?、そんなに使うんですか?」
「いや、運ぶのがねぇ、大変だと思ってさ、リリゼト産の寝袋だとモクレンが運びやすいからね、泥人間の人達の泥の抜け殻が残るので寝袋に詰めて、その寝袋に自分の名前を書いて貰おうと思うんだ、そういやレオン君の治療に使った寝袋が、俺のロッカーに入ってたなぁ、レオン君どうするぅ、欲しけりゃあげるけど?」
「はい、是非、頂きたく思います!」
「うん、分かった、寝袋を取りに行くとき、ついでに持ってくるね」
そうしてるうちに、男性の泥人間の人達の治療が全て終わる、男の子供達はキャンプで眠るように指示を出した、後は女性の泥人間の人達の治療が残っている、その状況を見てレオン君が俺に尋ねる。
「男の子供達も看護に回って貰いましょうか?」
「いや、もう男の子供達の仕事は終わったよ、後は女の人の治療だからね、泥の体から抜け出る時は裸だから男に見られるのは嫌だと思う、年頃の子もいるからね、俺はそういった気遣いもケアの一つなんだと思うんだぁ」
「なるほど、僕の考えが間違っていました、すいません」
「いや、いいんだ、考え方は人其々だから、それよりレオン君のお父さんの状況と似た様な状況の人が見つかったんだ!」
「えっ、誰ですか、その人は?」
「行商人のブラッドさんの奥さんが、レオン君のお父さんと同じ様に、行方不明なのに冒険者ギルドでは死亡扱いされていて、その冒険者ギルドから家族へ返された冒険者ギルドカードは偽造されたものという、レオン君のお父さんと似た状況の人だね」
「実は僕も気になる事があったんです、グリフォンの住む森に生息する蚕、ベルケス蚕の事を・・・」
「ん、蚕、ベルケス蚕?、何かあるのかい、その蚕に?」
「そのベルケス蚕なんですが、僕の記憶が正しければ、アイテムブックスを作る材料としてベルケス蚕が必要になるんです」
「へぇ~、色々繋がってきたねぇ~、そのグリフォンの住む森について、色々調べていけばレオン君のお父さんについて何か分かるかもしれない、この仕事が終わったら調べに行こうか?」
「はい、よろしくお願いします」
俺はまた子供達への介護の連絡をレオン君に任せて、基地に戻る、クリエイトルームに届いた大量のリリゼト産の寝袋を自分の体に取り込んで、自分のロッカーからレオン君の治療に使ったリリゼト産の寝袋を手に持って再びキャンプに戻る、キャンプに戻ると見慣れない美しい男性がブラッドさんと話していた、俺は手に持っていたレオン君の治療に使ったリリゼト産の寝袋をレオン君に渡して、その見知らぬ男性に挨拶する。
「どうも初めまして、此処の管理をしているマルスといいます、失礼ですがお名前を聞かせてもらっても宜しいですか?」
「あぁ、マルスさん、俺ですよ俺、アーロンですよ、この姿では分からなかったかもしれませんが、マルスさんは俺の事知ってるでしょう?」
「へぇ~、アーロンさんだったんですかぁ~、あまりにも別人過ぎてビックリですよ、それよりアーロンさんも空を飛べたりしますか?、アビーさんみたいに」
「コレですよね、もちろん飛べますよ!」
その見知らぬ美しい男性はブリタニアの村の村長の息子であるアーロンさんだった、どうやら俺の思った通りブリタニアの村の人、つまり泥人間の人達は皆、美男美女である可能性が高くなった、そして今、俺の目の前で楽しそうにフワフワと空中に浮かんで飛んでいるアーロンさんを見る限り、泥人間の人達は泥の皮を脱げば皆、空を飛ぶ能力がある可能性が出てきた、泥人間の人達の本当の姿は天使の様な姿だった。
「はぁ、凄いですねぇ~・・・、アーロンさん、まだ泥の状態から抜け出していない人達の治療が終わってないんです、手伝ってもらえますか?」
「えぇ、いいですよ、ただ聞きたい事があるんですけど、アレは何ですか?」
「えっ、アレ?、どう・・・!?」
俺はアーロンさんの見ている方向を見てみると、そこには馬車があった、どうやらカゲマルが帰ってきたらしい、だがその馬車の上に知ってる神獣が乗っていた、俺はカゲマルに尋ねる。
「このグリフォンはどうしたんだ?」
「はい、父上、この子は奉仕活動しに来ました、悪い事をしたのでそのお詫びとしての奉仕活動です」
カゲマルがエレオローラの迷宮に繋がる転移門を造る専門の職人と一緒に連れてきたのは、子供のグリフォンだった




