惨いケガをした子供の治療と新しい助手
(とりあえずいつもと違うやり方で治療しよう)
恐怖の糞食い村から、基地に帰ってきた。まずは酷いケガを負った子供の治療だが風呂に入れながら治療することにするか・・・。地球に住んでる医者からすれば卒倒ものだろうけど、ここは異世界だし魔法もあり医療技術も全然違うからね。
(ただ、ショック死してしまうかもしれないので薬は飲ませておこう。)
薬を飲ませて睡眠状態になっている子供の服を脱がせようとしたが、服が肌にくっついてしまっている。
(そんな時はコイツの出番だ!)
俺は自分用の特殊な救急セットから、ちいさな小瓶を二つ取り出した。たまたま近くにあったティーカップに水を入れて、それぞれの小瓶から一滴ずつ、ティーカップに注ぎ、魔法鉄のちいさな細い棒を右手に、魔法金のちいさな細い棒を左手に持って、それぞれのちいさな細い棒の先っちょをティーカップの水につけて、魔力をティーカップの水に込める。ブワッっと紫色の煙が立ち上がり、その煙が収まるとヌッっとゼリーの物体が這い出てきた。
(よっし、服を溶かすスライムの出来上っがり~)
とりあえず、これを服が肌にくっいてるとこに乗せた。そして救急セットから魔力が込められた小さな宝珠をスライムの中にぶち込む。これで優れた知能を持ったスライムになるだろう。
(服を溶かしているあいだに目の治療をするか・・・)
治療セットから小さな医療用ナイフを取り出して、その医療用ナイフで目の玉の血の混じった濁った液をぬいた。最低だと思うかもしれないが目の玉の濁った液を、先ほど使ったティーカップに入れてある。いや・・・入れるものが無かったし・・・ちょうどいい感じにそこにあったから・・・別にいいよね誰も見てないし・・・その時、頭の中に自分だけの目の治療のやり方をひらめいた!。
「そうだ!、この液をスライムにして眼球にぶち込んじまえばよくね!」
思わず興奮して思っていたことを声に出してしまっていた。そしてさっきと同じように二つの小瓶からティーカップに液を入れようとしたのだが・・・
「待って下さいご主人様!」
「ぬわっ!」
その時、声がしたと同時に、俺の手を生暖かくて、それでいてヒンヤリしたものが巻き付いてきた。びっくりして叫んでしまった。その声の方向を見るとスライムしかいない。まさか・・・
「驚かせてしまって、申し訳ございませんご主人様。」
間違いなくスライムが喋ってるぅ~!、マジで速すぎだろ、知能を持つの!
「ス、スライムが喋ってるんだよねぇ?」
「はい、分かりにくくてすいません。そ、そのぅ、もう少し喋ってるのが分かりやすくなるように努力します。」
「い、いや大丈夫だ、それよりなぜ?、止めたのかな」
スライムに思うところがあったのだろう。プルプルとしているが喋るときはプルプルが早くなる。もう努力しているのが目に見えて解かる。というか自分より知能指数が高いんじゃないかと思えてくる。
「ご主人様、お願いがございます。」
「何だい、何でも言ってみな!」
「この子を私のやり方で治療させてもらえませんか?」
「うん、いいよ」
「ありがとうございます。ご主人様」
スライムの言うことに間違いなし。スライムが正しい。自分よりも知能指数の高そうなスライムが言ってるんだから正しいのはスライム。その後はスライムの言うことにおとなしく従った。そしてスライムがリリゼト産の寝袋を持って来てと言うので、基地の中を探したら見つかった。
「で、スライム、どういった治療をするのかな?」
「はい、私の分体を眼球の中にぶち込んじまえばよくね!と思いましてその治療法でやってみたいと思います。」
聞かれてたぁぁ~、嘘やろ、マジ恥ずかっしいぃぃぃ、俺のひとりごと聞かれてたぁぁ~ハァ~。ご主人様の悪い癖は真似しないでください。で、その後は寝袋の中にスライムと裸の少年を入れてチャックを全綴じした。というか、惨いケガをした子供は男の子だった。スライムは女の子っぽかったなぁ・・・声も雰囲気も・・・。もしかして恋か?スライム、恋しちゃったのか?・・・。
(スライムも恋する季節か・・・)
アホな事を考えていたら、カゲマルが糞食い村から帰ってきた。糞食い村の人々と交流して、いろいろな情報とお土産やら、この世界のお金まで貰って帰ってきた。お土産は指輪で、指にはめていれば、この世界の言葉が解かる。さらに、魔物の言葉も解かってしまうという。魔法の指輪でその指輪を二つもくれた。凄い人々だよね糞食いなのに。そんな話していると、カゲマルが寝袋を見て、俺に訊いてきた。
「父上、あの寝袋は?・・・なにか凄いことになってますが・・・」
カゲマルが見ている寝袋は小刻みに震えたり、内臓の肉が肉と混じりあうような音を立てていた。
「カゲマル、あの中にケガをした子供が入っている。気になるとは思うけど、絶対に中を見ようとチャックを開けちゃダメだよ!たぶん開けたら幸せが逃げていくと思う。」
「なるほど!、昔、訊いた日本のおとぎ話ですね、肝に銘じます。」
その後は二人で一緒にお風呂に入る。あまり長く惨いケガをした子供がこの場所に居ると、家族が心配するので早く帰らせて、自宅療養させる話や街に行ってこの世界の情報を知りたいと言うカゲマルの希望。そして、この世界に黒髪は少なくて、とてもモテるらしいと、カゲマルが訊いた情報を話した時だった。・・・
「えっ、じゃあ、俺、この世界ではモテんじゃね?」
「父上、何を言っているのですか?、今の父上は金髪ですよ。」
「なんだってぇええ」
そう言われて鏡で自分の姿を見てみる。そこには金髪の自分の姿があった。というか明らかに母親の髪色にそっくりだ。おそらくこの世界の、この体は母親の基本情報を元に作られているのだろう。多少がっかりしたものの、すぐに気を取り直した。そして、泥人間の人達の話をする。
「泥のゴーレムって、あんなに知能を持つものかね?」
「父上、あの人達はゴーレムではありません。」
「マジでぃぇ~!、人なの、あの人達、人なの?」
「どちらかと言えば植物系の魔人だと思います。」
「へぇ~、そうなの」
植物系という事はユグドラシル系列だなぁ。最近は人材不足で悩んでたから、もしかしたら借りを作れるかもしれない。そしてカゲマルから街に行くので、カゲマルと酷いケガをした子供の為に、目立たない服や肌着を作っておいてほしいと言われる。お風呂から出た後、早速、服を作る。選んでポチっとボタンを押す簡単なお仕事!。服を作った後はベッドに倒れこんだ。そして直ぐに眠ってしまった。
「父上、朝ですよ!起きてください」
カゲマルに起こされると見知らぬ少年がいた。
「レオンという名前らしいです。これからこの子の家族に会うため街に行きたいと思います」
カゲマルから少年の名前を教えてもらった。少年の名前を呼び、話しかける。少年は首を傾げている。
「おっと、これを忘れてました。」
カゲマルは、そう言って指輪を差し出した。ああ、これを付けないと言葉が通じないんだったな。しかし、ずっとつけてないといけないのは、面倒だと思っていると、カゲマルがそれを察したようだ。
「三ヶ月程度で付けなくても喋れる様になるみたいですよ。」
へぇ~、良くできてんなー。学習用として最適じゃないか!
「えーっと、レオン君、さようなら元気でね!できればカゲマルの友達になってね!」
「はい、」
そう言って、かがんでレオン君を抱きしめていると、なぜかカゲマルもその中へ入ってきた。ふと誰かに見られているような感覚がして見渡すと、スライムが激しくプルプルしていた。そしてカゲマルと共にレオン君は家族の元へと帰って行った。
「行ってしまいましたね。ご主人様」
スライムが悲しそうに声をだした。というか、いつの間にか瞳と口、そして頭に猫耳のような突起がある。そういえばスライムに名前があったほうがいいな。そして思いついたのだが、改めて自分の適当さに泣けてくる。スライムに目を合わせて、名付けをする。
「スライム、名前があったほうがいいよね」
「はい」
「今日からスライムの名前はジョシュって名前でいいか?」
「はい、ありがとうございます。ご主人様」
助手だからジョシュという安易な名前、でも喜んでくれてよかった。
「もしも、男の姿に変化したらジョシュアって名乗ればいいよ」
「ご主人様、その必要は無いと思います!」
やっぱり惚気かよ~恋しちゃったのかよ~、レオン君に~!
「しかし心配だなぁ」
「どんな事がですか?」
「カゲマルがドスケベな事が・・・」