怪しい冒険者ギルド
「ガイアはこの大地には居ないのなら、ユグドラシルの眷属は実体を保てないんじゃないか?、そういえばカゲマル、お前、モクレンにはちゃぁぁんと、地獄に行くから、しばらく会えないって、言ってきたんだろうなぁ?」
「いえ、言ってませんが」
「えぇぇぇ、何してんのカゲマルぅ~!、」
「いえ、だって極秘任務ですから」
カゲマルが言うには極秘任務だからこそ、大事な人には言わない物なのです。と云う主張だ、たしかにそういう主張もあるが、モクレンはカゲマルの奥さんという事もある為、言っておいた方がいいと俺は話すが・・・
「いや、しかしカゲマルとモクレンは夫婦だろ、さすがに言わなきゃダメだろ。」
「あの夫婦の契約は、モクレンは嫌々引き受けた物ですよ、父上もご存じでしょう?」
「たしか、モクレンがユグドラシルから求婚されて、何度追い返しても、ユグドラシルから使者が来るから、追い返す口実としての、カゲマルとの結婚だったな?」
「そうです、大体私はモクレンに嫌われていますし、極秘任務を言う必要は無いのです」
本当にそうだろうか?、元日本人の勘だが、モクレンのアレは間違いなくツンデレと言う奴では・・・、いや、ツンデレというよりはヤンデレに近いか・・・、カゲマルにいろいろやらせて、出来たらギュッと抱きしめてるもんなぁ、カゲマルに抱き付きたくて、色々な無理難題を言っているだけなんじゃないのかなぁ?
「それより、父上、私も聞いて欲しい話があるんですぅ」
「ん、何だい、言ってみて?」
「私、セーラさんから、レオン君のお父さんのアイテムブックスを調べて欲しいと言われて、調べて見たんですが、ある筈のアイテムが無くなっているらしいのです。」
「セーラさんは、レオン君のお母さんか・・・、で、レオン君のお父さんのアイテムブックスを、なぜ、カゲマルが調べる事になったんだい?」
「はい、なんでも闇魔術による封印がされているらしくて、それを解除出来るのではと、私にレオン君のお父さんのアイテムブックスを渡してきたんです。」
この世界のアイテムブックスは特別だ、本来、アイテムボックスの様な収納魔法は、闇もしくは光の魔法を使って行うものだが、この世界の収納魔法は、主に土の魔法で出来ている。
この今までに見た事が無い収納魔法であり、土の魔法のアイテムブックスをカゲマルに調べさせるという事に、違和感を感じていたのだが、闇の魔法の封印と云う所で違和感は無くなった。
「それで解除は出来たのかい?」
「はい、出来ました、そうしてセーラさんに、レオン君のお父さんのアイテムブックスを返した所、セーラさんが泣きながら私に言うのです、この中にはアイテムブックスを作る道具やアイテムブックスを作る為の材料が全て無くなっていますと・・・」
「それが、何か問題でもあるの?」
「レオン君のお父さんは闇の魔法は使えなかったらしいです、そして、レオン君のお父さんは遺体が見つかってないのに、冒険者ギルドは死亡認定している事、さらにレオン君のお父さんの残した遺産がとても少ない事、父上、なにか怪しいと思いませんか?」
「でも、ギルドカードにお金が残っているんじゃないの?」
「父上、遺産というのはギルドカードに残っている、お金です」
「んじゃ、本当に遺産が少ないんじゃないの?」
「父上、それなんですが、レオン君のお父さんのギルドカードは偽物だと思われます」
「えぇぇ、マジでぇ、それなんかヤバくない」
これはヤバい、なにがヤバいかというと、冒険者ギルド自体が不正をしている可能性があるからだ。下手に深入りすると、冒険者ギルドと問題を起こす事になってしまう、やっとギルドカードを手に入れたのに使えなくなるのは痛い、とにかく冒険者ギルドカードは便利だからなぁ。
「カゲマル、その件はもう少し待ってくれないか、冒険者ギルドカードは今使えなくなると色々面倒なんだ、もっと状況を把握しなくちゃならないし、まだ冒険者ギルドが悪いわけでもないからね」
「父上、それに繋がる話をもう一つ聞いて欲しいのです」
正直、まだ、あるのかと思ったが口には出さない。
「ん、何だい」
「グリフィンに乗った聖騎士がバリスカの街を燃やしたり、破壊したりした話は知っていますよね?」
「あぁ、知ってる、俺から見れば、グリフィンに乗った悪党だけどな」
「その人達、レオン君の家にあるアイテムブックスを作る工房をめちゃくちゃに破壊していったらしいのです、その工房は・うう・セーラさんと・だん・なさんの・ぅ二人の思い出がいっぱい・ぅうう」
カゲマルが泣いている。レオン君がカゲマルの頭を優しくなでる、おれはカゲマルが落ち着くのを待つている。しばらくして、カゲマルが落ち着きを取り戻し、また話を始める。
「取り乱して申し訳ありません、私が思う要点をまとめて話します、この国で戦争が起きている事と、アイテムブックスを作る工房が破壊された事は、繋がっていると思うのです。」
「どうしてそう思うんだ?」
「私が封印を解除した時、致死毒も一緒に解放されたのです、それはちいさな街一つを消失させる程の物でした、もし冒険者ギルドで解放したら多くの人が亡くなる大惨事になっています、冒険者ギルドは知っていたから封印を解除しなかったのではないでしょうか?」
カゲマルじゃなかったら、レオン君の家の周りはみんな毒で死んでたって事か、冒険者ギルドも知ってたとしたら、レオン君の家族を殺すことに同意してるのか?、いや、そんな難しい事では無いのかも、考えすぎなだけなんじゃないか・・・、そういえば冒険者ギルドの本部ってどこだ?
「レオン君、冒険者ギルドの本部って知ってるかい?」
「え~と、水の都・・・!、水の都ロールバッハです、」
「ロールバッハって街なんだね?冒険者ギルドの本部がある街は?」
「はい、正確には皇都ロールバッハ、ダルグマ皇国の首都ですね。」
「その街はここからどのくらい遠いんだい?」
「バリスカから一番遠い街と云われています、あくまでも首都で云う所のですけれど」
一番遠いか・・・、やっかいだなぁ、しかしお菓子みたいな街の名前だ、国の名前もダルイ熊とか、いや巻いてる奴とか小川とか、分かってはいるがお菓子を想像してしまうのは元日本人の性だな。
「とにかく、その話は後でじっくり考えよう、な、カゲマル」
「父上、私、今まで自分がやってあげた事で、喜ばれたことはあっても、泣かれた事はなかったのです、どうかセーラさんを助けてあげて欲しいです」
「約束は出来ないが其の為に頑張るよ、カゲマルも、今回の行動で亡くなってた人の命を救ってるかもしれないぞ!落ち込んでも始まらないし、今は前に進もう」
「はいっ、父上」
とにかく前に進むしかない。俺達は食事を終えて会計を済ませた後、執事の人に案内されて[石焼亭]の奥に着くと地球で見慣れた物がそこにはあった、だが、地球のと違っている部分がある、入り口が二つある様に見える。
「これは、エレベーターだな」
「イェレベィトッアァですか?」
学校の英語の先生を思い出した、地球だったらレオン君はいい英語教師になるだろう、その時、カゲマルが俺の袖を掴む。
「父上、右側の入り口からですよ、エレベーターから出る時も右側の入り口から出ます」
「えっ、あぁギルドカードの常識か!」
この世界はギルドカードで常識を知るんだなぁ、改めて冒険者ギルドを敵に回すより、良い落としどころを見付けなきゃならないなぁ。
そしてエレベーター中に入ると、俺は壁に触ってこの世界のエレベーターの構造を調べる、これはマルスの加護の力だ、この加護の力は触れるだけで内部構造を知ることが出来る。人に使えばすぐ病気の原因がわかるし、物に使えばその物がどんな原理で作られているのがわかる。
「父上」
「カゲマル、今はダメだ、後でな」
カゲマルはこの加護の力を知っていて、俺にどんな原理か聞こうとしたが、執事の人が居るので、やめさせた。どうやらこの世界のエレベーターは四本ケーブルで動いている様だが、ケーブルで動いているというよりケーブルを伝っていると言ったほうが妥当だ、しかも、リニアケーブルであり、前後左右に四本のケーブルを伝って動いている、それは現代地球文明の完全敗北の品物だった。
「俺がこの[石焼亭]のオーナーのパインガスだ、店を出したいらしいね、詳しい話を聞かせてくれないか?」
ラーメン屋の営業について、話をしてくれる人は[石焼亭]のオーナーだった。