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閑話 ズズズの木蓮 後編

「えぇ、ゴドウィン様って、お爺ちゃんじゃなかったの?」

「いや、お祖父ちゃんだが、若く見られて威厳が無いから、いつもは(じじい)アーマーを着ているんだよ、とにかく落ち着いて話せる場所に案内するから来なさい」


私は机を挟んでソファーが二つ向かい合った場所の片方に座る、ナラコは私の隣に来てソファーに寝転んで私の膝に顔を乗せている。

宙車(そらぐるま)はさっき居た場所に置いてきた。ゴドウィン様の(じじい)アーマーなるものも置いておかれてたので大丈夫だろう、ちなみにナラコの角もそこで外して置いてきたのだが、角を外した時、城の中の人が呆然(ぼうぜん)としていた。

そして、オウルズ夫妻が対面に座る。はりきった感じの若い執事がお茶を出してくれる。私は問いただす。


「なぜ、影丸と連絡が取れないんですか?」

「影丸は今、極秘任務のお手伝いをしている筈だが、影丸から聞いていないのか?」

「まったく、なんにも、一切、なにもかも、知らされていませんが!」

「じゃぁ、影丸が悪いな」

「カァ・ゲェ・マァ・ルがわぁるぅぅぅぃぃぃですって!」

「いやいや、落ち着きなさい、木蓮(もくれん)


いえね、信じられないんですよ、過去に影丸を幽閉した事がありますからねぇ、とにかく落ち着けと言われたのでちょっと黙りますか。


「まず、俺の嫁への自己紹介をさせてくれ、初めて会うだろ、木蓮(もくれん)は?」

「先ほど、会って自己紹介は済んでますが!」

「いやいや、木蓮(もくれん)から、俺達への自己紹介をして欲しい、嫁は木蓮(もくれん)の事をあまり知らないから」

「あぁ、そうですか、では(あらた)めまして、影丸の妻の木蓮(もくれん)です。」


私がそう自己紹介をするとオウルズ夫妻は一瞬固まってしまった、二人でコソコソ話した後、イーモリさんが私に問いかける。


「あのぅ、木蓮(もくれん)さん、影丸の妻という事ですけど、私はそんな話、聞いたことがないんですが?」(ニチャァ)


おぁぁ、ヤル気か!、さっきの仕返しのつもりなのか!、やってやろうじゃねぇかぁぁ


「はて、おかしいですねぇ、オウルズ家という(いえ)では、孫は結婚の報告をお婆様にしなければならない義務があるんでしょうか?、もしそうであるなら影丸の責任になります。ですが今、影丸とは会う事が出来ず、連絡も取れない為、影丸に聞く事が出来ません、しかしながら報告を聞いていないという事は影丸の責任です、私がお婆様への報告をしなかったからだと言い、影丸を百発ぐらいぶんなぐって、お婆様の前に連れ出させて、私も影丸と一緒に土下座をして謝りますので、それで許して貰えないでしょうか?」

「いえ、結構です、あ、あと、ごめんなさい」


ふぅ、分かればいんですよぉ、わかってくれれば、それに影丸のお婆様は、影丸をとても可愛がってくれていると聞いているので、大好きな影丸をそう簡単に取られてたまるかという意地もあったのだろうが、影丸への熱意がお婆様を上回った。いや、お婆様の、影丸にそんな事をしたら可哀そうという気持ちと、影丸に嫌われたくないという気持ちに賭けたのだが、結果、私は賭けに勝った。


「ゴドウィン様、影丸は何処(どこ)に居るんですか?」

「影丸はマルスの手助けをしている、実はマルスは下神(げしん)へ昇格したんだ」

下神(げしん)というと神子(みこ)から神へですか?」


この世界の神はランクがあり、下から、下神(げしん)中神(ちゅうしん)上神(じょうしん)高神(こうしん)最高神(さいこうしん)、という五つのランクがある。神になると、自分の眷属(けんぞく)に加護を与える事が出来る様になる。


「そうだ、神の仕事をある程度しておかなければ、また神子(みこ)にランクが下がる。だから、神としての仕事を任せることにした、地獄を管理するという、何もしなくてもその世界に(とど)まって居れば良いという仕事だが、一応、神命なんだ。」

「神命となると何か制約があるのですか?」

「神命では神は手助けできないんだ、手助けするとペナルティを食らってしまう、故に俺と妻であるイーモリはマルスと連絡を取ることは控えているんだ。といっても、ひと月程で、制約も緩くなる、少しだけなら実家に帰れるし、連絡も取れる様になるから、それまで待ってくれないか?」

「嫌です!」(ムン)

「フッ、即答だな!」


嫌に決まってる、冗談じゃない、実際に影丸を見てみないと安心できない。


「だが、どうする、マルスが神子(みこ)から神になった事で、影丸も神子(みこ)になった。神命は神子(みこ)でなければ他の神から、その世界に派遣することが出来ないんだ、つまり木蓮(もくれん)は派遣出来ない、マルスが認めれば神子(みこ)として、その世界に(とど)まる事が出来るのだが・・・」

「マルス様に会うことも連絡することも出来ないと言っていますが、それはゴドウィン様とイーモリ様がその様な制約があるだけで、私には何も制約は無いんですよね?」

「ん?、確かに木蓮(もくれん)には何も制約は無いが、マルスが居る世界に行けないだろう?」

「いえ、影丸を使えば行けますが、正確には影丸次第で行けると思います。」


なんか、難しい事言ってるが、要するに神様ルートって奴でしょ、いろいろ審査があって神様に言われた道を使って、その世界まで行く神様ルート、私のは、神様に言われた道を使わず裏道を使う、その方が近道だから。


「どうするつもりだ?」

「リリゼトを(とお)って影丸の居る世界に行きます。」

「リリゼト!、ガイアに愛された者だけが住める妖精の国、だが入る事が出来るのか?、いや、影丸が入れる事は知っている、しかし、俺が入れるのかを影丸に訊いたが、リリゼトに住んでいる姫の許可が居ると言っていたが?」


その時、私は立ち上がる、ナラコの頭を手で退()かしながら、左手を胸の前へ、右手はスカートの(すそ)を摘まんで。


「わたくしがリリゼトに住んでいる姫、木蓮(もくれん)と申します。どうかよろしくお願いします。」


そして、私は影丸の居る世界に行く手段を二人にを話す。その方法は影丸が次元の扉を、影丸が居る世界で開けば、その次元の扉は必ずリリゼトを通るので、その通路を繋げる、という簡単だが影丸次第という方法である。

私はリリゼトで待機して、影丸が次元の扉を開くのを待つことになるが、ひと月も待つ事はないと思う。そして、宙車(そらぐるま)は後で送ってもらう事になった。

おそらくマルスさんの部屋に、影丸の為のスペースがあって、そこにリリゼトへの転移門がある筈なので案内して貰っている時、イーモリさんがナラコを見ながら私に話しかける。


「その鹿は、神獣では無かったのね、残念だわ」

「いえ、神獣ですけど?」

「え、でも、喋らないでしょう?」

「いや、喋りますよ!、ナラコ喋って良いよ」

「わぁぁい、こんばんわ、イーモリちゃん、おかしちょうだぁい!」

「わぁぅぉ、わんだほぉぉなのじゃぁぁぁ!」


イーモリさんは、ナラコに大喜びだ、感情が高ぶるとジジイ言葉になるらしい、ババアなのに、見た目は子供なのに・・・、自分も見た目は子供なので、オウルズ夫妻を見ていると、私達もこんな風に見えるんだろうなと思う。

そしてマルスさんの部屋にある、影丸のスペースに入る。とても小さいが、マルスさんも、ここからリリゼトへ入って来るので、人が何とか入れる大きさだ、真っ暗な部屋に入り、扉を閉めて完全に光を遮断する、その瞬間、リリゼトへの道が開く。


「我が常闇の国リリゼトようこそ、皆様ご案内いたしますわ」


私は、挨拶をした後、リリゼトの中央にある居城へ案内する。案内すると言っても瞬間転移する通路を通るだけだけど・・・、その途中でゴドウィン様が私に話しかけてきた。


木蓮(もくれん)と影丸はどうやって知り合ったんだ?」

「影丸は私が眠っている場所にやってきて、眠ってる私をじっと見ていました、じっと見られてると落ち着かなくて、起きて影丸に文句を言ったのですけど、今度は影丸の奴、ずっと私に抱き付いて離れなくて、で、その後、影丸が私の手を引っ張って外の世界の連れ出して、そこで今度は・・・

「いや、もういい、大体判った!すまないが、俺は仕事が忙しくてな、今も神界から無理を言って抜け出してきたんだ、もうそろそろ戻らなければいけない、木蓮(もくれん)、マルスや影丸の事をよろしく頼む」

「そうですか、それではまた今度」


そうして、ゴドウィン様は神界での仕事に戻っていったが、ニッコリ笑顔でナラコに抱き付きながら、私を見つめる人が居る。


「イーモリさんは、どうしますか?」

「もちろん私は、ナラコちゃん達と一緒にここで待機するわ」

「えっ、ずっと居るんですか?」

「えぇ、ナラコちゃん達がマルス達の所に行くまでお話しましょうねぇ~」


はぁ~、たぶんネットゲームを一緒にやらされるんだろうなぁ。


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