新入り冒険者の道の終わり
レオン君からプロポーズをされてはいないが、結婚します宣言を受けたスライムのジョシュはポカーンとしていた、スライムも心が上の空になるのだろうか?
詳しい話はこの新入り冒険者の道を出てから、ということで第十一チェックポイントに向かう。
俺はレオン君に本当に結婚したいのか、もしかしたら俺のせいで無理やり結婚をするという選択をせざるを得なかったのでは、と思いレオン君の気持ちを確かめる為、いろいろ話をする。
「えと、レオン君はどんな女性が好きなんだい?」
「じ、女性ですか、それはジョシュさんの様な女性です」
いや、違うから、そういう答え求めて無いから、もっとこう砕けて欲しいんだよ、これじゃあ圧迫面接みたいじゃないか~、俺は恐くないよぉ~レオン君。
「じゃぁ、昔というかちょっと前まではどんな女性のタイプが好みだったんだい?」
「え~と、ドワーフの女性が自分の好きなタイプでした」
「ほぇ~、ドワーフぅ、あの髭もじゃのこれは意外だなぁ、毛深い人が好みという事かな?」
「い、いや、ドワーフは年を取っても子供っぽくて魔法や鍛冶が得意な亜人です、一見、小人族に見えますが、小人族は年と共に外見も変わります。あと毛深い人は好みという事は無いです。」
へぇ~、この世界のドワーフはずっと子供っぽいままなんだなぁ、俺の父親と同じか、だとしたら相当高位なドワーフという事だな、ふぅ、ちょっと喉が渇いたのでカゲマルに聞いてみる。
「カゲマル、ちょっと喉渇いちゃったよぅ、なんか飲み物持ってない?」
「ん、父上、飲み物ですか?、お乳の入った哺乳瓶しか持ってないです」
「いやいや、俺は子供じゃないから、というか赤ん坊だろぅ哺乳類でゴクゴク飲むのは、もういいやぁ我慢する、早く終わらせよう。」
「みなさん、お水でしたら僕が持っています、一緒に飲みましょう」
「えっ、レオン君、水持ってんの?ありがとう、いただきます」
レオン君はそう言って俺達に見えない様に後ろを向き、何かガサゴソやった後、ちいさなコップが四つとちいさなヤカンを取り出した、そのヤカンはちいさくてとってもカワイイ、そのヤカンから酌んでは渡し、酌んでは渡しをして最後にジョシュが嬉しそうにレオン君から水を手渡され、みんなで水を飲む。
「プハァ、うまい!、ジョシュの分のコップも用意してるなんて気が利くなぁ、レオン君は」
レオン君は、ちゃんとジョシュの分まで用意してくれて本当に気が利く子だなぁ。
「いえ、コップはいつも四つ持っているので」
どうやら俺の勘違いだった。
「しかし、レオン君がドワーフの女の子が好きだということで、ジョシュが人の女の子の姿になる時、猫耳は消えちゃうね」
「えぇぇぇ!、ジョシュさんは人の女の子の姿なれるんですか?」
「うん、なれるよ」
「そうなんですか!」(ポワ~ン)
い、いや、やっぱりそうだよねぇ、スライムの姿よりも、人の女の子の姿ほうが良いもんねぇ
「レオン君はジョシュにどんな女の子になってほしい、ある程度融通が利くから言ってみて」
「それでしたら髪の毛は僕と同じ髪の毛の色で猫族の女の子でいいですか?」
「猫族?その人たちは猫耳なのかな?」
「はい、猫耳と普通の耳が両方付いてる亜人なんです、空間察知能力に優れた人達です。」
どうやらこの世界には猫族の亜人が居るらしい、レオン君の髪色は美しい金髪で多少カールがかった髪質をしている、肩に金色のモップみたいなのが付いている服を着ている今の姿はまるで某アニメの皇帝の様だ。
アニメでいえば白銀の髪で片目を隠しているカゲマルとこれから金髪の猫娘になるかもしれないジョシュを二人並べたらハリウッド版の某妖怪アニメみたくなるなぁ。
「しかし、レオン君が猫族とはねぇ」
「僕の名前の由来が雷のライオンなんです」
「ライオン、確かに大きな猫だねぇ」
ん、ライオン?、この世界には普通にライオンがいるのか、ちょっと聞いてみるか。
「レオン君、ライオンってどの辺に居るの?」
「えっ、ライオンですか?、たぶんこの街にも居ると思いますけど」
ライオンめっちゃ近くに居た、びっくりするわ、もう。その後、レオン君にライオンについて詳しく聞いたらこの世界のライオンは喋る事が出来て、人の言葉を理解出来るので、魔物から街や畑を守る為に飼われるらしい、更に雷の魔法が使えるとの事だ、もうライオンじゃナイオン。
「レオン君、スライムが人の女の子の姿になるのって、そう簡単な事じゃ無いんだ、だからジョシュをスライムの学校に行かせようと思ってるんだ」
「スライムの、学校?、学校?」
「あ、あぁ、そうか学校を知らないのか・・・なんかみんなで集まって勉強する場所だよ」
「なんかを勉強する場所なんですね」
「いや、違う!、なんかは要らない、みんなで勉強する場所だよ」
ふぅ、知らない事を教えるのって難しいね
「レオン君は早くジョシュに、人の女の子の姿になって欲しいでしよ」
「はい」
「だから、ジョシュにスライムの学校に行って、サクラ・スライミィの加護を貰って、帰ってきてもらおうかと思ってるんだぁ~」
「その・・サクラ・スライムの加護とは何なんでしょうか?」
「サクラ・スライミィだよ、レオン君、ん~と、詳しく説明するね」
俺はレオン君に説明する。サクラ・スライミィというのは転生した時スライムとして転生してしまった、お姫様の事であり、俺達の世界の神様の一人だ、サクラという名のお姫様が転生してスライムになった時、自分の事をスライミィと名乗った。
このスライミィがずる賢い犯罪組織の野望を打ち砕き、戦争を終わらせ、更に地上を蘇らせるといった奇跡を成し遂げる。
そんな凄い神様の加護を貰うという事は、その神様に助けてもらう事はもちろんだが、もっとも重要な事はその神様と同じ技が使えると云う所にある。神の技、まさしく神技だ!
「レオン君、そのサクラ・スライミィは、人間に戻って人として生きる事も出来たけど、あえてスライムから人の姿に化ける事を選んだ、そしてサクラ・スライミィの加護を得るという事は?」
「ジョシュさんも人に変化する事が出来るんですね!」
「フッ、話が早くて助かるよ、という事でジョシュと一緒に暮らすのはサクラ・スライミィの加護を得た後でいいよね?」
「いいもなにも、僕はマルスさんの指示に従います、僕はマルスさんが居なければ死んでいたんですから、マルスさん、本当にあの時はお世話になりました。」
「いや、あれはカゲマルが助けた様なものだから、お礼ならカゲマルに言ってちょーだい」
「はい、カゲマル、助けてくれてありがとう」
そうこうしてるうちに、第十一チェックポイントにに着いた、そこは今までのチェックポイントとは全く違っており、似ている所が、唯一あるとすれば右側にある赤いボタンのみである、
ぶっとい鎖に繋がれた八冊の本が並んでいて、その下に宝箱も八個並んでおり、その宝箱の中にはおもちゃの剣や盾などのガラクタが入っている、俺が本の表紙を見ようとしていると、カゲマルが笑顔で俺に話しかけてきた。
「父上、これはアイテムブックスです、本ではありません、魔法道具です」
「アイテムブックスぅ~?、アイテムボックスだろぅ、それかアイテムブック」
「いえ、父上、これはアイテムブックスというものです」
その時、レオン君が赤いボタンを押した。
「皆様、お疲れ様です、ここではアイテムブックスの使い方をマスターしてもらいます。まず、手元にある本の空白のページを開いてください、そして空白のページの右下にある親指の印に右手の親指を乗せて、左手で下にある宝箱の中から適当なガラクタを掴んでください。」
「やったぁぁ、父上に勝ったぁぁ」
「マァジでぇ~、本当にアイテムブックスなのかコレ~」
喜んでいるカゲマルを横目に見ながら、言われた通りにやってみる、とりあえず宝箱から左手で剣を掴んでみたら剣が消えていた、本当に消えてしまった、その時ギルドカードから「ピ・」と音がした。
「チェックポイントの確認をしました、アイテムブックスを確認してください、そして第十一チェックポイントはクリアとなります」
終わった、第十一チェックポイント、終わった
アイテムブックスを確認しろって言ってたな、あれっ、剣があるぅ、絵になってさっき掴んだおもちゃの剣がある。なるほどコレはアイテムボックス、本の姿をしたアイテムボックスだ。となると次は出すほうか。
「続きまして第十二チェックポイントです、まず、手元にある本の先ほど追加したアイテムのページを開いてください、そして先ほど追加したアイテムのページの左下にある親指の印に左手の親指を乗せて、右手で下にある宝箱の中へ先ほど追加したアイテムを入れてください。」
俺は言われた通りに先ほど追加したおもちゃの剣をアイテムブックスから宝箱へ戻した。その時「ピ・」とギルドカードから音がした。
「確認しました、これで第十二チェックポイントはクリアになります、そして新入り冒険者の道はここで終了となります。ここから真っ直ぐ行けばギルドカウンターです、それではみなさんごきげんよう、さようなら」
終わった、新入り冒険者の道、終わった




