4 孤児院 (出)
今、孤児院の人たちがユリスを見送るために全員が孤児院から外に出て来て居る。
孤児院は丘の上にあり風が心地よく吹き草の匂いがする、柵の向こうには街が並んでいるのが見える。
地球の都会では味わえない気持ちよさだ。
そんな中、ユリスは少し落ち込んでいた。
孤児院から離れるため、友達との別れが寂しいのだろう。
ユリスはあれから順調に育ち話す事や歩いたりする事が出来る様になっていた。
ユリスの父と母はユリスの手を握りマザーや子供達と話をしている。
ユリスの父の外見は30代くらいで騎士をやってるらしいため胸板が厚く腕の筋肉などもしっかりと付いている、それに加え顔は上の下と言った感じで顔に傷跡がある。
その傷は頬にあり、目の付近から一本あって目から下に伸びていた。
ユリスはそんな父と手を繋ぎながら孤児院のみんなに別れの挨拶をしている。
「ばいばい」
ユリスがそう言いながら手を振る。
ユリスにとって孤児院の皆は家族のようなものだ。
ユリスが動いている時、自分の体が勝手に動かされている感覚があるがもう慣れた。
ユリスの声に答え、子どもたちが一人一人ユリスに話しかけてくる。
「ばいばーい」
「また遊ぼうね」
「またねー」
ユリスもまたそれに答えて手を振る。
孤児院の子供たちの最後に子どもたちのリーダーのフィンが来た。
フィンはユリスに近づいて来て頭に手を乗せてたった一言いう。
「またね」
フィンはそれだけを言い笑顔をユリスに見せる。
フィンが俺の頭に手を載せたあたりから顔が妙に顔が暑いんだがなぜだろう?
佐々木は自分の体の変化に首を傾げる。
ユリスはというと顔を真っ赤にしてうつむきながらフィンに言う。
「うん、またね」
どうやらユリスはフィンに照れてしまっているようだ。
ん? なんだこの展開
誰か!! 誰でもいいからこの状況を止めてくれ!
佐々木はまさかの展開に狼狽え心の中で叫ぶ。
俺の願いが届いたのかマザーが話しかけてきてくれた、そのおかげで視線がフィンからマザーに変わりフィンから開放される。
よし、ナイスだマザー。
佐々木は心の中でガッツポーズを取る。
マザーは屈んでユリスの顔を見る。
「ユリスちゃん、いいかい? 母さんを困らせないように言うことを聞いてしっかり守るんだよ、それと好き嫌いもしてわいけないよ、あとそれから··········」
マザーはユリスをよほど心配しているらしく長々と注意を続ける。
おい、マザーいつまで喋ってんだ、心配なのはわかるがほどほどにしてくれ。
マザーにそんな佐々木の願いが届くはずもなく佐々木の願いとはうらはらマザーの話は続く。
「あと最後に、ここにはいつでも帰って来なさい、もうここはあなたの家なんだから。
それと困ったことがあったら私に言いに来なさい」
マザーがユリスに言い聞かせているときに馬車の準備をしていたユリスの父の部下が声をかけてくる。
「フリード隊長準備終わりましたー。」
「あら、もう時間? それじゃあユリスちゃん、元気でね」
「うん分かった、マザーも元気でね、ばいばい」
ユリスが泣きそうな声と顔で言う。
おいユリスしっかりしてくれお前が泣くと俺まで巻き込まれるんだぞ。
まあこう思ったところで聞こえていないが。
俺の意思とは関係なしにユリスはとうとう泣き出して母さんと父さんを困らせていのが見える潤んだ瞳から見える。
その泣いているユリスの姿を見てフィンはユリスに近づきユリスの頬に手を当て指を使いユリスの涙を拭う。
「ユリス、別にこれが最後じゃないんだから、ほら泣いてるとかわいい顔が台無しだぞ」
フィンが手をユリスに当てた時からユリスの涙は止まり先程泣いていたのが嘘の様に笑顔になっている。
「えへへ、私かわいい?」
フィンはそんなユリスの姿を見て笑顔を再び見せる。
ユリスは目を赤くしながらも笑っている。
ああ、精神がゴリゴリとすり減っていく。
「あらあら」
母さんが微笑ましそうに見守っている。
「ふふ、若いっていいわね〜昔を思い出すわ」
マザーも何か言ってる。
フィンはそんな母さんやマザーを見て恥ずかしがりながら慌てユリスの肩を押す。
「ほらユリス、ほらお父さんお母さんが待ってるよ」
フィンに肩を押されてユリスが振り向くとフィンはいつもの笑顔で手を振っている。
「うん、ありがとう」
ユリスはそんなフィンにお礼を言い母さんの元へ歩いていく、そして母さんに手を引かれて馬車に乗った。
「ばいばーい」
「またーねー」
子供たちが馬車に乗ると同時にみんなで手を振っている。
ユリスは馬車の窓から身を乗り出しながらそれに答えた。
································
馬車に乗って少し時間がたち馬車の横窓から大きな城が見えた。
うお、城じゃん城があるってことはここ王都だったの? そういえば父さん騎士やってたな、この馬車も父さんの部下の人が馬車を操っているし。
「ほら見てごらん、あそこに王城が見えるでしょ?あそこにはね王様と姫様が暮らしているのよ。」
母さんが城を指しながら話してくれる。
ユリスはお城と聞いて前に聞かせてもらった物語を思い出す。
「いいなー私もお城でお姫様になりたい」
ユリスのその言葉を聞いてフリードは笑う。
「ははは、ユリス、姫様ならパパはロイヤルガードだなー命に変えてもユリスを守るぞ」
父さんがユリスの頭を撫でて笑いながら言った。
そんな話をしながら馬車に乗っていると父さんの部下の人から声がかかった。
「フリード隊長そろそろお屋敷に着きます」
それを聞きフリードは頷きユリスに振り返る。
「さあユリス、そろそろ家につくぞ」
そう父さんが言ったときにちょうど大きな屋敷が並ぶ住宅街に入った。
「うわ~大きい屋敷がいっぱいだよ」
どうやらユリスのテンションも上がっているらしい、実は俺も上がっている。
馬車が一つの屋敷の前に止まる、どうやらここが俺の家らしい。
家の前にはメイドの服を着た人がが二人、執事と思われる人が一人とあといかにもファンタジーで冒険者として出て来そうな男女がいる、そんな男女の方を見て父さんが驚き馬車を降りる。
フリードは男女に近づき話始める。
「父さんと母さん、来てるのなら言ってくれれば良かったのに」
フリードの声に男の方が応える。
「ははは、何ちょいとばかしお前さんを驚かそうと思ってな」
どうやらこの二人は爺ちゃんと婆ちゃんらしい。
フリードと爺ちゃんが話している途中に婆ちゃんが話を遮る。
「そんなことはいいから早く孫の顔を見しとくれ」
婆ちゃんはそう言って馬車を覗いてくる。
爺ちゃんは、いかついおじさんという言葉がしっくりくる見た目で婆ちゃんは若い頃モテていただろうと思わせるほど顔が整っているうえにスタイルもいい、とてもじゃないが二人とも爺ちゃん婆ちゃんに見えない。
「母さん、お久しぶりです」
俺の母さんことリオンが俺を持ちあげて婆ちゃんに渡す。
「ほら、ユリスお婆ちゃんに挨拶をしなさい」
ユリスは恥ずかしながらも名前を口にする。
「はじめまして、ユリスです」
ユリスが喋った瞬間に婆ちゃんの顔が緩み急に最初の印象から離れていく。
「偉い子だね〜、私のことはばあばと呼んで」
その会話を聞いていた爺ちゃんが話に割って入る。
「ん?、お前がばあばなら俺はじいじだな」
爺ちゃんがそう言って豪快に笑う。
ユリスは婆ちゃん達に言われた事を実践してみる。
「じいじ?、ばあば?」
ユリスを見て爺ちゃんがユリスを抱いている婆ちゃんに詰め寄る。
「おい婆さん、早くユリスを俺にも抱っこさせてくれよ」
婆ちゃんはそう言ってくる爺ちゃんを人睨みする。
「はっ、あんたが触っち待ったらあんたの脳筋がうつっちまうよ、この子は私が魔術師にするのさね」
爺ちゃんは魔術師と聞いて頭にきて言い返す。
「なんだと、ユリスは剣士になるんだ。
そして俺と同じ冒険者になるのさ」
その言葉をきっかけに爺ちゃんと婆ちゃんは言い争いを始めた。
その姿に見かねてユリスが間を取る。
「じいじ、ばあば喧嘩しちゃだめ」
すると二人ともなに事も無かったかのようにユリスに話しかけてくる。
「ふふふ、ばあばは喧嘩なんかしていないよ」
爺ちゃんは婆ちゃんの話に乗る。
「そうだそうだ、俺達は喧嘩なんかしてねーぜ。
あっ、そうだユリス小遣いをやろう」
そう言い爺ちゃんは腰に下げている袋に手を突っ込んだ。
すごい速さで手のひら返したな。
てゆうか爺ちゃん冒険者やってんの? だから腰に剣とかつけてるのか。
爺ちゃんの服装は胸当てや小手などをつけていて冒険者らしい服装をしている。
婆ちゃんはローブを着ていて見るからに魔術師だ、杖とか持ってるしな。
「ほれユリス小遣だ」
そう言い爺ちゃんは金貨を出した。
それを見て婆ちゃんは爺ちゃんを睨む。
「はあー? あんた何子供に大金持たせようとしてるんだい」
ゴキ
ズシャ
婆ちゃんが爺ちゃんの頭をおもいっきり杖で殴った。
「ぐは」
爺ちゃんが目の前に倒れている。
おい、今なっちゃいけない音がした気がするんだが爺ちゃん死んでないよね。
ユリスも心配そうに見ている。
婆ちゃんはそんな心配そうなユリスを見て慌てて爺ちゃんを起こす
「ほらあんたさっさと立ち上がんな」
婆ちゃんに爺ちゃんは片腕で無理やり立たされる、体格差があるにも関わらず持ち上げるため不思議な光景に見える。
爺ちゃんは立たされた瞬間に婆ちゃんに向き直り文句を言う。
「婆さんいきなりなにすんだ!」
その言葉に先程よりも怒気を強めた声で言う。
「なにすんだはこっちの台詞だよ!」
再び喧嘩が始まったのでユリスは苦笑いをしている父さんと母さんの所へもういいかと歩いて行く。
フリードは爺さん婆さんを見て言う。
「また始まったよ、ああなるとまだしばらく掛かるから先に家に行こうか」
父さんに手を惹かれ庭を通り屋敷へ入る、すると先程屋敷の前にいたメイドと執事がいた。
「初めましてユリス様、私めはあなた様のお父様に使えております執事のアルバートと申します」
アルバートさんは髪は白くこれぞ執事って感じで前世で思っていたのとあまり変わらない姿をしている。
「初めましてユリスお嬢様、私は家の家事やお手伝いをさせて頂いております、メイドのクリスタと申します。
何かありましたらお気軽にお申し付けください」
クリスタはそう言って微笑む。
クリスタの髪は金色のポニーテイルだ。
「私はこの度ユリス様のお世話をさせて頂きますセシルと申します。
なのでこれからよろしくお願いします」
セシルさんはとても冷たい印象を受けるが髪は黒色でストレート、俺のお世話係の人は目が鋭くてとても美しい人だった。
とりあえず話を進める