2 異世界にて
早くも迷走中
少女がハニエルを見て口角を上げている。
「もしかして、ハニエル、佐々木くんって言う人が好きなの?」
ハニエルはあの後、友人の元へと訪れていた。
友人とは目の前でゲームをしながらこちらを見てニヤニヤしている女神エレインの事で見た目とは裏腹に自堕落な生活を送っている。
「べっ···別にそんな彼氏とかじゃないし」
エレインはその様子を見てさらに口角を上げる。
「へーあのハニエルを落とす問わねー、ふーん」
「だっ···だから違うってば」
「それじゃあその子私が貰っていい?」
それを聞いた瞬間ハニエルが豹変した。
「私の佐々木に触れたら殺すぞ」
エレインは見たこともない友人のいきなり過ぎる豹変ぶりに本気を感じ取る。
「なっなーんてね、うそうそ本当に嘘だって、ははは。あっそうだ、これからハニエルに言われた通りに彼氏くんの転生の設定するからハニエルも来なよ」
エレインはハニエルの手をつないだ。
すると足元に光る文字が円状にエレイン達を囲い次の瞬間にはモニタールームへと移動していた。
モニタールームに移動したエレインは置いてあるパソコンを使い検索を始める。
「ハニエルー、彼氏くんいたよー」
エレインは佐々木 悛の文字に指をさして言った。
「ああ、俊さま私があなた様をお守り致しますわ」
エレインは変になった友人を無視して設定へと移る。
「えっと〜、これをこうしてこうすればと。ハニエル〜設定終わったよー」
しかしハニエルはまだ自分の世界に入っていた。
「ああ、俊さま私がいつまでもいつまでも見守っていますわ」
エレインはそれを見なかったことにした。
[緊急事態、緊急事態、システムが何者かに攻撃を受けています]
急に警報が部屋に鳴り響いた。
「何だ何だ、この私が作ったシステムに攻撃するとかどこの誰だよ」
エレインは急いでパソコンに向かいシステムへの侵入を妨害する。
「エレイン?これはどうなっているのですか?」
エレインは黙ったままパソコンを打ち続ける。
少し時間が立ちエレインが手を止めつぶやく。
「やられた。ハニエルごめん彼氏くん持ってかれちゃった〜」
それを聞いたハニエルは笑顔のまま固まった。
#################
「気がついたかしら」
声が聞こえ意識が浮上する。
「あうあう」
(ここは)
佐々木は目が見えない状況に戸惑うしかし先程のやり取りを思い出し。
そうか生まれ変われたか、どうやらハニエルがうまいことやってくれたらしい。
佐々木はそのことにとても安堵する。
「どうやら問題ないようね」
なんだ?、さっきから声が聞こえる。
佐々木は今ベットに寝かされていて自分が無防備な状態なのに気付いた。
「新しく生まれ変わった体はどうかしら?、あなた、自分の名前覚えてる?」
「あうあいあう?あういあう!」
(何を言ってるんだ?自分の名前くらい覚えている!)
「そうそれならいいわ。もしただの赤ん坊になってたら私が育てなきゃいけないもの」
待て、そういえばおかしい、確かあの時ハニエルは記憶を消すと言っていた、なのに記憶があるということは。
「そう、その通り、あのブスはあなたの魂をこの世界に送ったわ。本来なら貴方の魂は転生に耐えられず記憶を失うはずだった。
けど私が貴方の魂を保護して記憶をそのままで転生させてあげたの。」
ハニエルをブスと罵った者はさらに話を続ける。
「貴方あのブスのお気に入り?。
あいつはけっこうあなたを気に入ってたみたいだけど。まさかわざわざ女神に頼んで人に転生させようとするとは…ふふっ」
佐々木は話を聞いて記憶が失って無いことに納得する。
「ところであなた突然だけどあのブスのものじゃなくて私のものにならない?」
全身に鳥肌が立ち本能が逃げろと言ってくる。
しかしこの体では逃げる事すらもままならない。
「ふふふ、そんなに震えちゃってかわいいわね。取って食べたりしないわよ」
(そういえばまだ名前を聞いていないのですが)
佐々木はとりあえず敬語を使う、今下手をすればまた死ぬ可能性がある。
「私?そういえば言ってなかったわね、私の名前はアザゼル。アザゼル様と呼びなさい」
(それではアザゼル様、なぜアザゼル様はここに?)
「ふふふ、それはあのブスのお気に入りのあなたを私の眷属にしてあいつから奪ったからよ。貴方を人族から悪魔に変えてあげたの。
貴方は私の眷属になったから問題がないか私自ら確認しに来たってわけ」
悪魔?、記憶が無事だったのを考えるといい条件だった…のか?
(しかし今の状況から見て、人だと思うのだが?)
佐々木は重い体を動かし手で腕や足を動かし人とは異なるものが無いか確認する。
「ええ外見は人よ」
(外見は?)
「あなたの場合、今は下級の悪魔だから人の体を使わないと現世に居続けられないのよ」
(なるほど、つまりこの体は借り物の体だと?)
「いいえ、あなたの場合は違うわ。
さっき下級の悪魔だからといったけれど本来なら人の体を使わなくてもいいのよ。
だけどあなたの場合ちょっと特殊なケースでその子の魂とあなたの魂とがあなたがこの世界に来たときに混じっちゃたみたいなの。
だからあなたは半分あなたで半分はその子ってことになるのかしら」
アザゼルは頭をかきながら言った。
(はあ?どうゆことだ俺は俺であって俺じゃないということか。)
「まだ私も初めて見るからよくわからないけど今のところ問題なさそうだし大丈夫なんじゃないかしら、さてと確認も終わったしそろそろ行くわ」
アザゼルの気配が消えて周りが静かになる。
(よく分からんとりあえず大丈夫らしいし寝るか)
###################
朝日が佐々木を照らし朝を伝えてくる。
それにしても腹が減った、赤ん坊の時のご飯って言うとミルクとおかゆみたいなやつか。
佐々木は食事のことでため息をつく。
その時、体の異変に気づいた。
なんだ!?、体を思うように動かせない!。
「うあああああん!」
何だ体が勝手に
体がまるで操られているかのように動き出す。
泣き始めてから数分たった。
どれくらいたっただろう、泣いているせいで正確な時間は分からない。
泣いているとこっちに近づいて来る足音がきこえた。
続いて扉を開けて人が入ってくる音がする。
「※※※※※※」
なにを言ってるのかは分からない。
けど多分俺の今の母さんか、父さんだろう。
情けない話だが自分にとって父と母はトラウマだ。暴力を前世のときに受けていたから。
それを思い出すだけで体が震えてしまう。
母さん(仮)が俺を抱き上げ抱きしめてくる。
何を話しているのか分からないがさっきまで泣いたのが嘘かのように俺が笑顔になっている。
ここで佐々木は気づいた、体の主導権が借りている体の人格に持って行かれていることその恐ろしさを。