その13
「真澄ちゃんっ!真澄ちゃんっっ!!」
どこからか真琴さんの声が聞こえる。
あれ?どうしたんだっけ私。
……目を、目を開けなきゃ
「真澄ちゃん!!」
「真琴…さん?あれ?私…」
「良かった、気がついたのね!?
今、救急車向かってきてるからそのまま動かないで?」
「え?救急車?」
「大丈夫?覚えてる?」
「…覚えてる?」
身体のあちこちが痛い。
真琴さんの問いに少し考える。
「女の人にぶつかって、携帯落として…で、ぶつかられた?」
「そうよ、真澄ちゃんぶつかられた勢いで階段から落ちたの」
階段から落ちた?
「さっきの人は…」
「携帯投げ捨てて逃げたわ。
追いかけたかったんだけれど真澄ちゃんをそのままにはできないし」
そう言って、真琴さんは私の携帯を渡してくれる。
電源、落ちてない。
結構頑丈なのね と、思ったらヒビと削れたような跡が。
これって機種変かなぁ。
そんな事を考えていたらサイレンの音が聞こえてくる。
それに誘われるかのようにざわつく公園。
居心地が悪くて身を起こそうとしたら真琴さんに怒られる。
そうして私は人生初の救急搬送をされた。
*
救急車って乗り心地悪い。
あの後、救急隊の人がストレッチャー持って来てくれて
頭を打ってるけど意識はあるのを見て少しホッとしていたような気がする。
「動けますか?」と聞かれたので頷くと真琴さんがすっごく睨んできて…
怖いです、おねえさま…
どうにかストレッチャーの上に移動し、救急車が止まっているところへ。
靴?救急車内で脱がされました。
で、血圧を図られ心電図のモニターをつけられ現病歴、既往歴を聞かれる。
それと平行しながら他の隊員の方が病院に電話をしていて。
救急車ってすぐに病院へ直行するものだと思っていたのに意外だった。
救急車に運び込まれて30分くらいたった頃、ようやく車は動き出した。
動く前にこれから行く病院の名前が告げられる。
それを聞いた真琴さんが何やら携帯を触ってる。
何してるのかな?
聞きたかったけれど救急車って結構ガタガタ揺れていて
打ったあちこちが痛くって そんな余裕なんかカケラもなかった。
*
病院に着いて、すぐ検査室に連れ込まれてあちこちを触診される。
「意識少しなかったんですよね?念のため頭の画像撮りましょう。
後、点滴もしておきましょう。」
先生がカーテンの向こうに行くと、看護師さんに身ぐるみ剥がされて検査着に。
「動かないで身体だけ少し傾けてくださいね?」
…本当に手際良かったです。
寒くないようにと身体にタオルをかけられ、レントゲンとCTを撮ってまた検査室へ戻る。
「画像の結果が出るまで少しここで待っていてくださいね?
気分が悪くなったらこれを押してください。
お付き添いの方に入っていただきますか?」
「あ、お願いします」
「じゃあお呼びしてきますね」
そう言って看護師さんが出ていってすぐカーテンの端から真琴さんがひょこっと顔をだした。
「真澄ちゃん?」
「真琴さん!」
「だめよ?頭を打っているんだから静かに横になっていなさい?」
そう言うと真琴さんは壁に立て掛けてあったパイプ椅子を静かに動かして腰を下ろす。
「真澄ちゃん、貴女さっきの女の人知っていたの?」
「たぶんコンビニのATMで私の後ろに並んでた人じゃないかと…」
「あの人、槇原さんのこと言っていたわね。
もしかして今日私を呼び出した事と関係あるんじゃない?」
「…実は」
幸い辺りに人の気配はない。
それでも誰が聞いているかわからないので小声で真琴さんに今までの事を話していく。
真琴さんの綺麗な眉が顰められる。
そして小さなため息を1つつくと真琴さんは私の前髪をかきあげてくれた。
「想像していたことが当たっちゃったわね」
「真琴さん?」
「いいの。真澄ちゃんは今は何も考えなくていいの。
怖かったわよね、今は大丈夫よ?」
気遣ってくれているのがわかる声。
その声に少し涙腺が緩みかける。
「真澄ちゃんよく聞いて?今、警察の方が来られてるわ」
小さな、集中して聞かないと聞き取れないくらい小さな声でかけられた言葉。
思いがけない言葉に涙がピタリと引っ込む。
「え?警察の方?」
「ええ、直接あの人と真澄ちゃんの会話を聞いていたわけではないけれど
時間もまだ早かったし公園内にいた人が真澄ちゃんが突き飛ばされて
階段から落ちたのを見てらしたのね…警察の方に通報してくださったみたいなの。
で、今外で待ってらっしゃるわ」
「待ってるって…何をですか?」
「真澄ちゃんから見た事実を聞きに来られているのよ。
私も少し話しを聞かれたわ。
真澄ちゃん、これは立派な傷害事件なのよ?」
傷害事件!?
思いがけないセリフに私はしばし絶句していた。
活動報告にも書きましたが
年内最後の更新になるやもしれません。
足掻いてはみますがダメだったらごめんなさいです。




