日出づる社にて
私は山奥のド田舎から父の仕事の都合で東京に移り住む事になった。最初は不安で仕方がなかった。いや、引っ越して来てからも不安は継続中です。まだ17年しか生きていないがその17年間でこれ程不安な気持ちになるとこは無かった。その不安の種は「果たして友達ができるのか?」「慣れない土地でしかも人が多い」「電車なんてほとんど乗った事ない」「道が複雑」など上げていけば切りが無い。正直胃が痛い。
「おかぁさーん、学校いつからだっけー?」
一階で引越し作業の追い込みをかけている母には二階から発するこの声は届いていず反応は全くなかった。
渋々下の階に降り、直接母に聞きに行く事にした。が、体が動かない。動こうとしない。布団から出たくない。不安が憂鬱に変わりもう何もやる気が起きない。
そんな中下の階から母が私の事を呼んでくる。
「ちえーっ! ちえーっ! 起きろーっ! おーつーかーいー! おーねーがーいー!」
「もー 聴こえてるし、起きてるし。 今行くー」
重たい体を布団から起こし一階へ向かう。部屋の扉を開けるとまだ見慣れない廊下、廊下の窓からは見慣れない隣の家の壁。去年まではこの季節だと緑々とした山々の木々が廊下の窓から見えた。その窓のサッシが額縁の様でまるで絵画の様な美しさだった。
それが今見えるのは無機質な隣家の壁。今置かれてる現状全てに違和感があり、今私は違和感の中で生きている。
階段の下には母がいた。
「ちょっとその格好でおつかい行くの!? ここは東京よ?年頃の子がそんなジャージって東京に飲まれるわよ!」
どうやら母は私の何倍も東京生活を楽しみにしてるらしい。最近妙にキラキラしてる。
「いーよ別に… ちょっと近居に行くぐらい。いいからそのメモとお金ちょうだい。」
母は若干呆れた顔をしつつ私にメモとお金を渡した。
「それじゃ行ってきます。」
そして玄関へ向かおうと階段の最後の一段を降り、廊下を玄関の方へと足を進めた。
すると母が背中越しに
「ついでにこの辺少し散歩してみたら? あんたもう引越して3日経つのに家からろくに出てないでしょ。」
「気が向いたらね。」
確かにその通りで家から出てなかった。だって出ても街には知らない人の家、家、家、家でウンザリしてしまう。いや、もしかするとウンザリしてしまうのではないのか、ここでウンザリしてししまったら更にこの現状に嫌になってしまうかもしれない、とゆう恐怖で閉じこもってたでもしれない。
でもおつかいに行かない訳にはいかないのでとりあえず家を出る。