3話
紫色の空から時折雷が鳴る。
ここは魔王城。
この世界の魔王の名はタロウという。
名前のせいで幼い頃他の子供達からいじめられてきた魔王の性格は大変ひねくれている。
「認めん!我と戦うのが魔法使いなど、許さぬ!勇者が我の城に来て我を倒すのだ!」
「倒されるの前提ですか……タロウ様、魔法使いでもそれなりの力があるかと思われますが」
「ええい!その名を呼ぶなと言ったであろう!」
魔王の座る椅子のそばに仕えているのは魔王城の執事長であるルイ。
「タロウ様、お名前が全てはございません」
「お主は普通の名前だからだろう!」
「姉はジャコラータという名ですが」
「それはお主ではない、姉だろう!」
魔王の名前に関しての敏感度は異常だ。
美しく、綺麗な名前の者には酷く当たる。…が、ルイには当たらない。
気に入っているからだ。
「タロウ様…魔法使いの件ですが、先程冒険に出発したとのことです」
「そ、そうか……」
ルイは嫌な話題になると話を変える癖がある。
しかも、イライラしている時。
魔王は一度、ルイが限界に到達した時の悲劇を目の当たりにしているので、決してルイを怒らせないようにしている。
ルイは約5年前、死者5名、負傷者28名の大惨事を起こしたことがある。
これも、ルイに酷く当たらない理由なのかもしれない。
「……ルイ、その魔法使いとやらの情報を集めてこい」
「かしこまりました」
ルイが王座の間から出て行くと、魔王は一人溜め息をついた。
「我は今回も倒されなければならぬのか…」