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天才の日常

2010年の11月のある朝、東京にキャンパスを置く日本一を誇る国立大学『星城大学』に通う1人の茶髪の男子学生………

(男子学生)「…………」

その男子学生はウォークマンで音楽を聴きながら、1人星城大学の門をくぐる。

何か頭の中で考え事をしているようで完璧に黙りこくっていた。


時刻は8時47分………


その男子学生は広々とした教室に入って席に座り、9時から始まる講義に向けてシャーペンやノートを取り出していた。

依然ウォークマンで音楽を聴き、周りを全く見ることなく真っ直ぐ前を見て講義が始まるのを待った。

その間にも彼は考え事をしていた………

(男子学生)「…………」


彼の名は高木真一。有名国立大学であるこの星城大学に通い、尚且つ常に校内トップの成績を修めている。

それは大学に入る前から、いや生まれた時から彼はトップという座位に降臨していた。

子どもの頃は有名私立小学校付属の幼稚園、その後その小学校を卒業し、これまた有名私立中高一貫学校に進学して、ついには今の日本一賢い星城大学へと進学し、一度も留年することなく4回生に上がってきた。


要するに彼は天才なのだ。しかも彼の知能は努力ではなく才能であった。つまり彼は日本中で誰よりも優れた頭脳を持った学生なのである。

だが彼はその事とは関係なく、常日頃から考え事をしていた………

(真一)「…………」


午前9時、一限目の講義が始まる時間となり、教諭が教室に入ってきた。真一は耳からイヤホンを外してウォークマンの電源をOFFにした。

(教諭)「よし、じゃ先週の話の続きだ………」

教諭は淡々と講義を始め、真一はさほどメモを取ることもなくただただ講義に耳を傾けていた。

これだけでも真一は講義の内容を完璧に理解することができるのだ。まさに才能である。


そんな真一だが4回生になっても就活は全くしていない。その証拠に今でも茶髪であるし、毎日のように講義に出続けている。

当然そうするには真一なりの理由がある。といってもまともな理由とは思えない理由だが………

(真一)「……暇だ………」

要は単なる暇潰しである。家にいてもすることがなく就活をする気もないから今までのようにただただ大学に出席して講義を受けている、ということである。

確かに着実に知識を仕入れている分家にいるよりかは有意義なのだが………

(真一)「…………」

頭がよく常に考え事をしている割には、就活など将来のことには一切関心を示さない。真一の同回生は就活を行っているのにも関わらずである。そのわけは………

(真一)「…………」


今日の講義は1限だけだった。友達は就活などで大学にいないので即座に家に帰っていった。真一は1人暮らしである。


時刻は11時。真一は自宅の扉を開け中に入っていく。家賃は4万5千円の1Kなのでそこまで広い部屋ではないが、真一は苦痛に思ったことはなかった。

真一は才能には恵まれていたが、真一の両親が数年前に他界してしまい、金銭面ではあまり恵まれていなかった。そのため幼稚園の頃から奨学金を借り、常に成績優秀者として授業料等は全額免除で生活してきた。

今は両親が遺してくれた遺産で生活費を賄っている。

(真一)「ふぅ………」

真一はソファに座ってテレビをつける。それと同時に机の上のパソコンの電源をつけた。

パソコンは静かに起動していく。真一はその間テレビを見る。

といっても時刻は午前11時、どれだけチャンネルを変えても真一が満足するような内容のテレビは一切放送されていなかった。

(真一)「あ~ぁ、マジでつまんないな………」

真一はリモコンでテレビを消してからソファから立ち上がり、椅子に座って起動しているパソコンと向き合う。

(真一)「…………」

真一はまた黙って考え事を始める。パソコンは着々と起動していく。

そしてパソコンが起動しきると、真一はインターネットに接続して黙々とサイトを閲覧しだした。

(真一)「…………」

時にはネットサーフィンをしたり、時には課金して音楽をダウンロードしたりを繰り返していた。

その間ずっと考え事をやめることはなかった………


そうして真一がネットサーフィンを繰り返しているとチャットできるサイトを見つけた。

真一は暇潰しになると思い、そのチャットに参加することにした。


「ゲスト563さんが入室しました。」


真一は初めてそのチャットに参加したので、563番目のゲストとして『ゲスト563』という名前が与えられた。その他の参加者は3名いた。

 真一 > こんにちは。

するとその他の参加者が次々と挨拶をしてきた。

 花美 > こんちわ~♪

 ゲスト519 > こん

 コウキ > こんにちわ!

 花美 > ……ゲストさん達は名前つけないの?

真一はその言葉で一度は名前を考えたが、すぐにめんどくさくなって本名を入れることにした。

「ゲスト563さんは『真一』と名前を変えました。」

「ゲスト519さんは『デンデン』と名前を変えました。」

 デンデン > これでいいかな?

 コウキ > いいと思うよ!

 真一 > 改めてよろしく。

 花美 > 真一さんデンデンさんよろしくね♪

そして真一はチャット内で他愛無い話をして暇をつぶそうとした。

 真一 > 皆さんどこに住んでるの?俺は東京。

 花美 > 私は鹿児島♪

 コウキ > 鳥取。

 デンデン > 青森だよ。

 花美 > 真一さん都会に住んでるんだね♪

 真一 > 星城大学に通ってるからその近くで1人暮らししてるから。

真一が星城大学の名前を出した途端チャット内の空気が変わった。

 コウキ > 星城大学!?すげぇ賢いじゃん!!

 デンデン > 真一さん大学生なんですね。

 花美 > あの日本一の大学に通ってるなんてすごい!!!

 真一 > いや、それほどでも………

真一からすれば星城大学の入学にそこまで苦労はしていないので持ち上げられて複雑な心境となったが、一般人からすれば今よりももっと大きなリアクションが起きていてもおかしくないことである。

 デンデン > 日本一の大学ってことは本当に賢いんですね!

 花美 > そうだよ!デンデンさんは大学生?

 デンデン > 僕は中学生ですよ。

 花美 > そうなんだぁ♪

「ラビリンスさんが入室しました。」

突然ラビリンスという名前がチャットに参加してきた。

 ラビリンス > こん

 花美 > こんちわ~♪

 デンデン > こん

 真一 > こんにちは。

 コウキ > すげぇマジかぁ!星城大学とか夢のまた夢だ……笑

 ラビリンス > 何の話?

 花美 > 真一さんが星城大学に通ってるんですって!すごくない!?

 ラビリンス > 星城大学?

 真一 > よろしく。

するとラビリンスは突然こんなことを言い出した。

 ラビリンス > 星城大学とかウソだろwwwww

(真一)「はぁ?」

真一はパソコンに向かって声にだして怒りの表情を表した。もちろんチャットの他の参加者はそれを察することはできない。

 ラビリンス > 注目されたいからってそんなウソつくなよwwwww

 真一 > ウソじゃねぇよ!

 花美 > そうだよ、真一さんはウソついてないと思う♪

 ラビリンス > ムキになってる時点でもうバレバレwwwwwそんなウソついて恥ずかしくないのwwwww

真一はラビリンスの発言に物凄く腹を立てる。でも本当に星城大学に通ってることをチャットじゃ証明できないこともわかっていた。

 ラビリンス > ウソじゃないってんなら証拠見せてみろよwwwww

(真一)「………(出た出た、馬鹿が言う決まり文句。こんな奴を相手にしてても面白くねぇ………)」

真一はそう判断し、ラビリンスを相手にすることをやめた。

 真一 > コウキさん、何か話しませんか?

 コウキ > いいですよ。

 ラビリンス > おいおい証拠見せれないってなったら無視かよwww低脳だなwwwww

 花美 > ちょっと!悪口はよくないよ!みんな仲良くしよ!

 ラビリンス > うるせぇよババァwwwwww

ラビリンスは真一だけでなく花美にも暴言を吐く。

 デンデン > ラビリンスさんいい加減にしてください!見てて不快です!

 ラビリンス > あいつがウソついたのがそもそもの原因だろwwwww

(真一)「………(もう無視してても腹が立つな。もういい。)」

真一はマウスを動かし退室の所にカーソルを持って行って!

「真一さんが退室しました。」

退室をクリックしてそのチャットルームから出て行った。そしてそのページを即座に閉じた。おそらく真一が退室した後でもラビリンスが馬鹿の一つ覚えのように罵っているのだろうと思いながら。

(真一)「あ~ぁ、何してても面白くねぇ。どうしたもんか………」

真一は椅子から立ち上がり、部屋のソファに座り込んだ。

(真一)「…………」

そしてまた真一は考え事を始めた………


時刻は12時を回って午後12時15分………


その時テーブルに置いてあった真一のケータイが鳴り出した。どうやら電話着信が来たようだ。

(真一)「誰だ………」

真一はケータイを取って確認すると、同回生の友達の津崎卓司から電話がかかっていた。

そして真一は卓司からの電話に出た。

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