表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/39

第37話:変わらない日常

 自分たちのテイマーギルド『白竜の翼』を設立したからといって、俺たちの日常が劇的に変わるわけではない。


 優秀な秘書であるセリアがすべての事務作業やギルドの管理を巻き取ってくれたおかげで、俺は相変わらずニーナや相棒たちと一緒に冒険者ギルドへ顔を出し、掲示板から依頼を探しては迷宮や森へ食材探しに向かう日々を送っていた。


 そして、拠点となるギルドハウスが完成した後も、俺たちは変わらず常宿であった『陽だまりのしっぽ』亭へと通い続けている。


「いらっしゃいませーっ! あ、エルヴァンさん! ニーナさんも!」

 カラン、と食堂の扉を開けると、宿の息子であるルカが満面の笑みで駆け寄ってきた。

 昼時の食堂は、冒険者や商人たちで溢れかえり、空席が一つもないほどの超満員だ。


 実はここ最近、この『陽だまりのしっぽ』亭は凄まじい繁盛ぶりを見せている。

 宿の主であるロランさんの飯が美味いのはもちろんのこと、おそらく俺が抱えている龍玉に入ったファルが数ヶ月間滞在したことで、『幸運』の残り香が宿に定着したのかもしれない。


 ちなみに、ロランさんは「命の恩人からお金は絶対にいただけません」と俺から一切の宿代を受け取ろうとしなかったため、俺たちがギルドハウスに引っ越して中型魔物対応の大きな部屋が空いたことは、宿の売り上げ的には大助かりだったかもしれない。俺としても、気兼ねなく美味しい飯を食いに来れるようになってホッとしている。


「今日も大繁盛だな、ルカ。親父さん、忙しそうだけど大丈夫か?」

「はいっ! 目は回ってますけど、父さん毎日すごく楽しそうですよ! さあさあ、皆さん『特別室』へどうぞ!」

 ルカに案内されて食堂の奥へと進む俺たち。


 通されたのは、豪華なVIPルーム――というわけではなく、ロランさんとルカが普段生活している『自室』だった。

 連日満員の食堂で、目立つシリウスを連れた、俺たちが食事をすると他のお客さんの迷惑になるため、俺たちが来ると必ずこの自室を「特別席」として開放してくれるのだ。ある意味、最高のVIP待遇である。


「おお、エルヴァンさん! 今日も足を運んでくださったのですね!」

「ロランさん、忙しいのにすいません。これ、今日の森の探索で見つけた『極太のホーン・ボアの骨』と『霜降り肉』です。よかったら使ってください」


「おおっ! こんないいお肉を、いつも本当にありがとうございます! 命の恩人であるエルヴァンさんには返しきれない恩義があるというのに、いつもお気遣いばかりさせてしまって……。

 よし、今日はこれを使って、皆さんに特製の煮込みをご馳走しますから、少し待っていてくださいね!」

 俺がお裾分けのレア食材を渡すと、ロランさんは豪快かつ嬉しそうに笑って厨房へと戻っていった。


 やがて運ばれてきた絶品の煮込み肉を、俺とニーナ、そして龍玉のハッチから顔を出すファルとシリウス、プルちゃんで一緒に囲む。


「んん〜っ! ロランさんのご飯、やっぱりすっごく美味しいです!」

「エルヴァンのご飯も美味しいけど、お父さんのご飯もおいしー!」

『お肉、とろとろなの! もっと食べる!』

ブルルルッ!(激しく同意!)

 賑やかで、美味しくて、温かい時間。


 ギルドマスターという肩書きがついても、俺の本質はただの動物好きで料理好きの凡人だ。こうして大切な仲間たちと一緒に美味い飯を食える日常こそが、俺にとっての何よりの宝物だった。


 ◇ ◇ ◇


 そんな穏やかな日常回を満喫していた、ある日のこと。

 『白竜の翼』の執務室で、俺がファルの毛をブラッシングしていると、コンコンと扉をノックする音が響いた。


「エル、少しよろしいですか?」

 入ってきたのは、秘書のセリアだ。彼女の手には、一枚の羊皮紙が握られている。

 その表情は、普段の穏やかな彼女らしからぬ、少しピリッとした真剣なものだった。


「どうした、セリア? そんな難しい顔をして」

「先ほど、冒険者ギルドのガストンさんから使いの者が来ました」

 セリアは羊皮紙を俺のデスクの上にコトリと置き、真っ直ぐに俺の目を見た。


「私たち『白竜の翼』宛に……冒険者ギルドからの指名依頼です」

◆◆◆◇◇◇◆◆◆


 読んでいただきありがとうございます。


 少しでも面白かったと思っていただけたら、ブックマークや評価を頂けると幸いです。


 毎日、午前7時頃に更新予定です。よろしくお願いします!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ