表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/41

第21話:青き炎の光跡

 ゴルドランの中心にそびえる大迷宮。


 その浅層である第10階層は、見渡す限りの広大な『地底湖』が広がる神秘的なエリアだった。天井の光苔が水面を青白く照らしている。


「あそこにいるのが、はぐれボスの『水晶巨蟹クリスタル・エンペラー・クラブ』か」

 地底湖の岸辺。そこには、馬車ほどもある巨大な蟹が鎮座していた。全身が本物の水晶で構成されているかのように美しかった。


『任せてよエルヴァン! あんなカニさん、僕がパキッと割ってあげる!』

 シリウスが意気揚々と駆け出す。


 巨大なハサミの攻撃を軽やかにステップで躱すと、水晶巨蟹の側面に回り込み、自慢の強烈な後ろ足の蹴りを叩き込んだ。


 ガキィィィィィンッ!!


 迷宮内に、金属同士がぶつかり合ったような甲高い音が響き渡る。


『っ!? 硬っ!?』

 シリウスが驚愕の声を上げた。


 ロック・ドラゴンの岩の装甲すら砕いた蹴りだったが、水晶巨蟹の殻には傷一つ、ヒビ一つ入っていなかった。ダイヤモンド級の硬度というのは伊達ではないらしい。


「シリウスの蹴りが通じないなんて……。なあ、シリウス。無理そうなら、またファルにブレスでやってもらうか?」

 俺が胸元の龍玉をトントンと叩きながら提案すると、シリウスはピタッと動きを止め、不満そうにブルルッと鼻を鳴らした。


『やだ!僕が倒す!ファルお爺ちゃんにばっかりいい格好させないもん!エルヴァンの一番の相棒は僕なんだから!』


「お、おいシリウス……!」

 闘争心とライバル心に火がついたシリウスは、水晶巨蟹から大きく距離を取り、地底湖の岸辺を長く使って助走の構えをとった。


 そして――ボッという音を立ててシリウスの漆黒のたてがみと四つのひづめに、美しい青い炎が燃え上がった。


 その瞬間。少し離れた岩陰からエルヴァンたちを監視していたテイマーギルドのマスター、ボルグは、息を呑んで目を見開いた。


(馬鹿な! あれはただの馬じゃい!! 伝承にのみ語られる悪魔馬、ナイトメアだと!?

 なぜあんな無名のガキが、あのような規格外の魔物を……!!)


 ボルグが驚愕で震え上がっている間にも、シリウスの集中は極限まで高まっていた。


『いくよぉぉぉぉっ!!』

 ドンッ!!と地底湖の岸辺が爆発したかのような踏み込みと共に、シリウスが超高速で駆け出した。

 速い。あまりの疾走速度に、空気を切り裂く風鳴りが遅れて響き渡る。


 蹄と鬣から燃え盛る青い炎は、空中に置き去りにされ、まるで夜闇を切り裂く一筋の雷光のように、鮮烈な青の光跡となって空間に一直線に描かれていく。

 周囲の湖水が炎の圧倒的な熱量で一瞬にして蒸発し、白い霧をもうもうと巻き上げる。

 それは神話に語られる星の落下を思わせるほどに圧倒的で、美しく、そして破壊的な光景だった。


「いけぇっ、シリウス!!」


 ドゴォォォォォォォォォンッ!!


 青い流星と化したシリウスの『超高速体当たり』が、水晶巨蟹の正面に激突した。

 凄まじい衝撃波が放射状に広がり、地底湖の水を数十メートルもの高さまで激しく吹き飛ばす。


 硬度において絶対の自信を持っていた水晶巨蟹の殻は、それでも割れることはなかったのだが……

 

「……なるほど。殻は硬くても、中身はそうじゃないもんな」


 どんなに外側が頑丈でも、内部にまで伝わる強烈な衝撃は殺しきれない。超高速の体当たりによる脳震盪、あるいは内臓への凄まじいダメージ。


 水晶巨蟹は、ブクブクと口から大量の泡を吹き出すと、ゆっくりと後ろへ傾き……ゴロンッ、と無様に仰向けにひっくり返った。

 ピクピクと足を痙攣させ、完全に気絶している。


『えっへん! 見たかファルお爺ちゃん!気絶させてやったよ!』


 ――むきーっ! エルヴァンのいちばんの相棒は、ぼくだもん!


 龍玉の中でファルが短い手足をジタバタさせて張り合っている。

 俺は苦笑しながら、気絶した水晶巨蟹へと近づいた。


「すごいぞシリウス、完璧だ。ファルの龍玉には鮮度を保つことはできないから、こうやって生きたまま持ち帰るのが一番だな。

 これなら依頼書の条件も最高クリアだ!」

 俺は龍玉のハッチを開けて水晶巨蟹の巨大なハサミに押し当てた。

 シュルンッ!と掃除機のように吸い込まれていく巨大な蟹。


(ひ、ヒィィッ……!? なんだあの玉は!? 巨大な魔物を一瞬で収納したぞ!? 伝説のナイトメアに、未知の魔導具……あいつ、何者なんだ……!!)

 岩陰でボルグが腰を抜かしていることなどつゆ知らず。


 エルヴァンたちは「今夜はカニ鍋だ!」と歓声を上げ、意気揚々と迷宮を後にするのだった。

◆◆◆◇◇◇◆◆◆


 読んでいただきありがとうございます。


 面白いと思って書いてはいるのですが、反応がないと不安になったりします。メンタル劇弱なので…

 少しでも面白かったと思っていただけたら、ブックマークや評価を頂けると幸いです。


 毎日、午前8時30分に更新予定です。よろしくお願いします!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ