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第17話:ロックドラゴンとホワイトドラゴン

「……実を言うと、ゴルドランから少し離れた岩山地帯に、『岩殻竜ロック・ドラゴン』が迷み着いちまってな」

「ロック・ドラゴン……ですか」


 ギルドマスター・ガストンの言葉に、俺は眉をひそめた。

 ロック・ドラゴン。全身が鋼鉄よりも硬い岩の鎧で覆われた、Aランク相当の凶悪な魔物だ。しかも今回現れた個体は異常に巨大で、小山ほどのサイズがあるらしい。


「あいつが岩山を崩しながらゴルドランの方へ向かってきている。うちの高ランクパーティーも何度か討伐に向かわせたんだが、魔法も剣も分厚い岩の装甲に弾かれて傷一つつけられず、撤退を余儀なくされた。

 ……だが、伝説のナイトメアの蹴りなら、あの硬い装甲も砕けるんじゃないかと思ってな」


「なるほど。そういうことなら、引き受けます。……なあ、シリウス」


 俺が念話で問いかけると、一階で待機しているシリウスから『任せてよ! あんなのただの動く石ころだよ!』と頼もしい返事が返ってきた。

 俺はガストンから依頼書を受け取ると、さっそく専属受付嬢となったセリアさんに見送られ、ゴルドラン郊外の岩山地帯へと向かった。


 都市からシリウスを走らせること数時間。

 岩山地帯の開けた荒野に、そいつはいた。


『グルルォォォォォォッ!!』


 地鳴りのような咆哮。体長は優に三十メートルを超え、全身が鋭く尖った巨大な岩石で覆われている。一歩歩くごとに大地が揺れ、周囲の岩山がガラガラと崩れ落ちた。


「でかいな……。シリウス、やれるか?」

『もちろん! エルヴァンはそこで見てて!』


 シリウスが青い炎を蹄に纏わせ、弾丸のように飛び出していく。


 ドゴォォォォンッ!!


 凄まじい轟音と共に、シリウスの蹴りがロック・ドラゴンの前脚に直撃した。並の魔物なら木端微塵になる一撃だが――。


『グガァッ!?』


 ロック・ドラゴンは体勢を崩したものの、その分厚い岩の装甲にはヒビが入った程度だった。


『硬っ……!? なんだこいつ、ただの石ころじゃない?!』

 シリウスが舌打ちをして距離を取る。


 どうやら、岩の装甲の内部に強大な魔力を巡らせて硬度を上げているらしい。ナイトメアの攻撃力でも、一撃で仕留めるのは難しいようだ。

 その時、怒り狂ったロック・ドラゴンが、大きく息を吸い込んだ。


「まずい、ブレスが来る! シリウス、避けろ!」


 俺が叫んだ直後、ロック・ドラゴンの口から無数の巨大な岩塊が、散弾銃のように吐き出された。


 シリウスは機敏な動きで岩塊を躱していくが、そのうちの一発が、後方にいた俺の頭上へと降り注いできたのだ。


「しまっ――」

『エルヴァン!!』


 家ほどの大きさがある岩塊。回避は間に合わない。

 シリウスが血相を変えて俺を庇おうと飛び込んでこようとした、その瞬間だった。


 ピキッ……パリンッ!!


 俺の胸元で、乾いた音が響いた。

 見れば、ファルが入っていたあの透明な『龍玉』が、粉々に砕け散っていた。


 ――ぼくの、エルヴァンに……。


 いつもは「あむあむ」と幼児言葉を話すファルの声が、底冷えするような、絶対的な威圧感を伴った低い声へと変わった。


 ――我の愛し子たちに……何をしておる。


 次の瞬間、砕け散った龍玉の中から、目も眩むような純白の光が溢れ出した。

 光は一瞬にして天を衝くほどの巨大な柱となり、周囲の空気がビリビリと震え上がる。降り注ごうとしていた巨大な岩塊は、その光に触れただけでチリのように消滅してしまった。


『な、なんだ!?』


 シリウスが驚愕して立ち止まる。

 光の中から姿を現したのは――モフモフネズミのような小動物ではなかった。


 天を覆うほどの巨大でしなやかな胴体。

 真珠のように輝く、白く神々しいもふもふの毛並み。

 そして、全てを見透かすような、深く澄んだ黄金の双眸。


 それこそが、伝説に語られる『幸運の白竜』……ファルの姿だった。


『グルォォォォ……ッ!?』


 本能で「絶対的な格の違い」を悟ったのだろう。先ほどまで猛り狂っていたロック・ドラゴンが、ガタガタと震えながら後ずさりを始めた。


『……去れ。愚かな土塊つちくれよ。貴様に我の愛し子を傷つける資格などない』


 それは、何百年もの時を生きるファルの威厳ある声だった。

 ファルが静かに黄金の瞳を細めると、その口元に眩い純白の光束が収束していく。


『消え去るがよい』


 カッ――!!


 ファルの口から放たれた純白のブレスが、荒野を薙ぎ払った。

 音すらなかった。

 光が通り過ぎた後には、あの硬牢なロック・ドラゴンの姿は跡形もなく消え去り、大地には一直線にえぐられた巨大なクレーターだけが残されていた。


「す、すげえ……」

『ふええ……ファルお爺ちゃん、本気出すとあんなにヤバかったんだ……』


 俺とシリウスがポカンと口を開けて見上げていると、上空のファルがゆっくりとこちらを振り向いた。


『エルヴァン、シリウス。怪我はなかったか?』

「ああ……助かったよ、ファル。お前、強すぎだろ」


 俺が安堵の笑みを向けると、ファルはふわりと目を細め……直後、その巨大な姿がシュルシュルと縮み始めた。

 そして、空中にポンッと新たに生成された『龍玉』の中にスポッと収まり、ふらふらと俺の手の中へと落ちてきた。


 ――あうぅ……おっきくなったら、まじょく(魔力)からっぽになっちゃったの……。おなかへったぁ……。


 玉の中で目を回し、すっかり元の「幼児化モフモフネズミ」に戻ってしまったファル。

 その凄まじいギャップに、俺とシリウスは顔を見合わせ、たまらず吹き出してしまった。


「ははっ! やっぱりお前は、こっちの姿のほうがらしくていいよ」


 ファルが残した大地の傷跡を眺め、やはりファルの存在は隠しておいた方がいいなと思うエルヴァンであった。

◆◆◆◇◇◇◆◆◆


 読んでいただきありがとうございます。


 面白いと思って書いてはいるのですが、反応がないと不安になったりします。メンタル劇弱なので…

 少しでも面白かったと思っていただけたら、ブックマークや評価を頂けると幸いです。


 毎日、午前8時30分に更新予定です。よろしくお願いします!!

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