悪役令息、承ります
『さぁ、罪を受け入れろ!』
正義の名の元に、皇太子と主人公。
………男でもヒロインに当たるのだろうか?
ガチホモカップル二人は寄り添いながらこちらをねめつけた。
これから婚約破棄ついでに悪行の暴露と、
“悪役令息”を断罪するつもりなのだろう。
勝利を確信している様だが、それは不可能である。
残念ながら。
………本当に……残念ながら……。
『──無い罪を認める事は出来ないな』
ようやく、俺は口を開く。
中々口を挟めなかったのだ。みんな早口だねえ……。
まぁでも、世界の主人公ごときにどうにかされるオレでは無い。
と言うか、オレはそもそも悪役令息ではなく“代打”であるのだ。
(………だからまぁ、物理的に無理なんだよな)
キリッとした顔で静かに、予定通りの台詞を吐く。
真偽を確かめるめっちゃ便利な面白道具がこの国にはあるのだ。
『───折角なので、天秤と、真実の鏡や宝珠を使えば良いだろう。そこまですれば納得出来るはず』
すかさず顔を顰める皇子。自信満々ボーイめ、恥をかくぞ。
『……愚かな。あれは国宝。金で改竄出来るような物ではない。――だからこそ、俺の権限で許可する。逃げるな。貴様が言ったことだぞ』
……という訳で俺の勝利は確定したのである。
俺の名はキリヲ。仕事の出来るナイスガイ。
悪役令息として弾劾されたのは本来、キリオン·グランヴェルという名前の少年である。簡単に言えば、俺の仕えているのが彼キリオンであった。変装が得意だし背格好も近い為、影武者も兼ねて護衛しているのだ。権力の前では時間外労働とか無いんだよ♡
まぁその分銭貰ってるけど。
見ての通りこの場の皆、キリヲをキリオンだと認識している。
前方でハッスルしている皇子はエリオット殿下、だったかな?
たしかそんな名前。髪が金髪だね。
あとなんかピンク髪の女子っぽい内巻きショートの方がアルト少年である。
ちなみに彼等の名誉の為に言うと、このキリオン氏は彼等の言う通りのカス野郎であった。
勿論、アルト達を滅茶苦茶虐めていた。
キリオンという男は陰湿で、嫌がらせにベストを尽くす事で人生のモチベーションが上がり、嫌いな奴を陥れる事に喜びとやり甲斐を見出すタイプの、陰険悪質差別体質な鬼畜野郎なのだ。
一点の曇りなく有害悪である。
つらつらこんな酷い事をされましたぁ!
なんて彼等がクラス会よろしくシクシクしているのだって、
別に何1つとして嘘じゃない。
根も葉もあるどころか、なんならコイツラが把握してない果実が実って種も埋まってると思う。
そしてざわつく皆の衆は、案外懐疑的。
「婚約者に対して言い過ぎでは?先に浮気したんだろうに」
「どうせ冤罪じゃないのか?自分から調査を依頼しているし………」
「高位貴族がどれだけ忙しいと思ってるんだ。1人でそんなに沢山の苛めを実行出来るわけないだろう。殿下じゃあるまいし……」
「まぁ殿下は下民の雄ガキにしか相手にしてもらえないからな…」
「自分よりはるかにブスな平民と付き合ったんじゃプライドも傷つくだろ」
実はこの裁判ごっこ、皇子とキリオンが婚約している所に、彗星のごとく新たなホモが割り込んで来てむさ苦しい三角関係となった、国を巻き込んでの痴情のもつれである。世も末だな。
キリオンはろくでなしだが外面はいいのだ。加えて皇子は予想以上に人望が無いらしい。
だからかな、皇子を信じて俺を攻撃する奴は少ない。
案外周りの皆は懐疑的だ。
確かに俺も、休日出勤させられて聞かされるのが上司の寝取り寝取られ修羅場の裁定だったら『知らんがな、勝手に好きな穴ほじくりあっとけよカス』とか思うけど……。
ちなみに皇子君たちの話に嘘はないが、
あんまり信憑性はないと思われているのだろう。
俺ことキリオンの罪状があまりに多過ぎるし、
動機が理不尽な上に全部1人でやった事になっているのに目撃者はいないのだ。不自然過ぎ。
普通に考えて、嘘っぽいよな。
しかも虐められた方はハーレム以外には好感度が低い。
そこかしこで別の男と【大乱交!アナルでスマッシュブラザーズ】してる所を日々目撃されてるし。あと浮気してる。
元気なのはなによりだけど、日常のちょっとしたパーティー感覚で学校中汚されて始末書書かされた清掃員ほほんと可哀想だったわ。犯人が高位貴族と皇子とか言うおえらいさんの息子だもんなぁ。
比べてキリオンは政治の勉強とかマナーを忙しく学んでいたので普通に考えてそんな時間無いと誰だって思う。
しかしキリオンの奴は体力の限り苛めをやった。
何1つ冤罪などない。断言する。しかも変なところで完璧主義なので自分の手で全てやっている。引くほど忙しいのに……。
人格が最悪なのに努力家なのだ。せめて努力するなよお前。
―――――――――――――――――
『準備はいいか?』
嘘を見破る国宝の天秤の前に立つ。
わざわざ皇子が審判を呼んだからである。
「――以上の行為を行ったことを認めますか」
「私―――キリヲ…は行っておりません。神に誓う」
トドメに天秤に血をいれる。勿論、“俺“は虐めてないから白だ。
中心にある宝石が輝く。ざわめく周囲。青褪めたカップル達。
『う、嘘だ!これは何かの間違いだ――』
せやで。本人じゃないから嘘だし間違いなんやで。
君等なんも嘘ついてないけど俺もほら、お金もらってるからさぁ……なんかごめんね♡
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キリオン·グランヴェルには嫌いな男がいる。
無能で楽観的で然程可愛くも無い、強いて長所を挙げるならば自分より能力の低い所が安心感を与えるから馬鹿な男にだけモテるのだろう。相手は少年だが。
侯爵たるグランヴェル家には国宝に指定された遺物がある。
未来を見える本型宝具だ。そいつを勝手に持ち出して遊んでいた時のことだ。思えばこれが全ての始まりだったな。
見たい未来を思い描き、ページをめくる物語が見える仕様だ。
『さらわれ御子は溺愛される〜ほっといてほしいのにイケメン皇子に執着されて困ります〜♡』
脳味噌腐ってんのか?このタイトル考えた奴と思いつつ、
借りにも宝具ゆえまずは物語を読み込んだ。
おかしなことに、この国と自分に起こることを思い描いたはずなのに何故か物語の主人公は見知らぬ平民だった。
手違いで入学した平民が追い出されそうになるが
直前で不思議な力に目覚めて〜と言う内容だ。
そいつの言動がぶち殺したくなるほどムカつく。
具体例を上げるとこうだ。
役に立つわけでもないのに惚れた男が向かった戦場に無理矢理付いていって、案の定脚をひっぱり窮地に陥り愛の力で(モブを犠牲に)男に助けさせた挙句に、
『遅いよ馬鹿ぁ………怖かったんだから/////』
とかほざいて、帰ってからすりゃいいのにその場でセックスパーリナイをおっ始める様なクソッタレなやつだ。
おい敵!そこだ!逃げずにセックス中の馬鹿がいるぞ!!背後から斬りかかれよ!かせ、俺が手本を見せてやるっ!
コイツの事は家の者に身元を調べさせたが分からない。
見ているとサブイボで大根おろせそうなんだが。
最初から最後までイライラした。
出来る事なら少年の頭をココナッツみたいにカチ割って鉄製のストローでも刺してやりたい。
ただ、面白かったページもある。
戦場に行った猿共が交尾するちょっと前に、
少年が別の男とセックスしていた事だ。
これには手を叩いて笑った。キャッキャッ!
相手の男──これはまさかのこの国の皇子だったのでこの国は
おしまいなのだが──は散々キメ顔で助けに来たのに。
まさかのこのガキ、敵国の男ともしっぽりお楽しみしていた訳である。
(──多分コイツチ○ポあれば何でもいいんじゃないかな。)
『なーにが怖かったぁ♡んだよ性病のリスクの事ですかァ〜〜!?』
ケッと美しい顔を歪めて下卑た台詞を吐き捨てたキリオン。
まぁ国がどうなろうが皇子のセフレが寝取られようが、
どうでもいいことではある。
だが問題はキリオンが住む国で、キリオンが高位貴族で、
キリオンが本来の皇子の婚約者であることだ。
極めつけはキリオンの通う筈の学園にこの猿がいることである。
入学から卒業まで。延々と関わってくるのを見せられたのだ。
いかにもキリオンが虐待したくなるようなタイプのガキだった。
無理矢理言う事をきかせるなんて!と言った口で
『皆で仲良くしましょう!一人でいるから駄目なんですよ!』と他人に自分の意見を強制するとか。
男に興味ありません、イケメンだからって靡くと思わないで!
とか言った後で顔の良い男全員ともれなく即パコ。
『誰か1人なんて決められない僕は悪いのかな……』とか
言って(ソンナコトナイヨ)って言われるまでチラッチラしてくるのだ。
初対面時に脊髄反射でラリアットを決めたキリオンはそんなに悪いことをしたろうか?
あんなの殺すだろ、普通。
最後はなんだ?
※(以下意訳)
『こんなに酷い事をされたけど、許してあげます』
『友達になってあげる!僕からこんな事言われて嬉しいだろ!』
(カス共)「マンセー!マンセー!ボキュたちのヒロイン優すい!可愛い!聖母!キリオンは悪い奴なのに許す心の広さと戦場にも向かう芯の強さがうんたらかんたら!結婚しても好きなチ○ポとセックスしてエエよ!毎秒浮気されてる現実を愛情深いと言って現実逃避するしやりたい放題しても好意を無くしません!アイラビュー!イェーイ♡」
愛がうんちゃらとか言っていたのは耳が拒否をしたからあんまり覚えてない。概ねこんな感じの事を言っていた。
エロ催眠でもかけられたのかと思うような崇拝ぶりである。
ハーレムに関してはそうだな……彼等の中だけで好きにしたら良いと思う。
率直に言って関わらないでほしい。
キリオンにも相手を選ぶ権利はある。
コイツの言う友達って、つまり逆らわない駒かチ○ポの事だし。
友人感歪み過ぎだろ。
まぁまだ起きた未来ではない。
何かの間違いだろう―――。
そう思っていた。
庶民街で本人を見かけるまでは。
本当に存在すると言うことは、このままではこの未来が訪れるのではないか?
「今殺すか……あの餓鬼…」
「やめなさいね」
トラブルの種の早期解決は従者一同から止められた。
クソがッッッ!
未来を改善するにはどうしたらいいのか。
そう。例えば────
①ムカつくが虐めをしない
②皇子周辺と仲良くしておく
③味方を作り罪に問えなくする
④全員殺す
『駄目だ、結末を知ってても殺してしまう』
実質④以外の選択肢がない。絶対虐めるし。
アレの友達になることがそもそも刑罰の一種だと思う。
奴隷より惨めじゃないか。
(こんな時のためのアイツだな)
───リィン。
ベルを鳴らせばすぐ様メイドがやって来る。
「キリヲを呼べ」
「申し訳ございません。キリヲは本日お休みで…」
申し訳無さそうにメイドが言う。
「お遊びはそこまでだ。キリヲ。お前だろう。」
メイドは困った笑顔をしたが、キリオンが引かぬため諦めた。
「何故分かったのです」
「当然だろう。お前に休日などない」
+++++++++
キリヲは在りし日の記憶を思い出しながら嘆いた。
結論から言うが、キリオンは他人との関係改善など一切しなかった。ありのままに生きている。
アルト君も虐めに虐めた。しかし人前では素っ気ない態度だけでボロは出さなかったらしい。
その努力を何故良い方に使えなかったのだろう。
人生はままならないね。
こうしてキリオンは虐めたくせにわざと裁判で潔白を晴らして逆に相手を冤罪浮気野郎と反撃をしている。
自分だって普通に可愛い彼女いるくせに……。
そういえば悪いことばかりでもなかったな。
元々この国には光の属性の御子と呼ばれるガキを洗脳して搾取している文化背景があるのだが。
(表向きはちやほやされるから情弱の平民とかから選ばれるよ♡)
人間の力を生贄に瘴気を払う事を宗教を絡めた教育をしていたが、光属性に変わる方法をキリオンが開発に成功したものな。
だからもう、回りくどい御子担ぎはいらなくなったんだ。
いずれ真相は民にもバレて糾弾されるだろうけど、その頃には陛下も死んで後は後継ぎ達が頑張るでしょ。
御子であるアルト君にも悪い話じゃないのに何故か新しい瘴気浄化方法を拒んでいたな。なんでだ。
つーか、転生者ってなんだったんだろ?
アイツ妄想ヤバいし病院行くのかな。




