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第十三話 未知との会合

「いやー、凄いね君! ワイルドピックを一瞬で倒してしまうなんて!」


 魔物との戦闘後、獣耳の女性は先程までの威勢とは打って変わって、ワイルドピックを倒した黒木に褒め称えた。


「さっきまで剣を向けてきた癖に、何だこの変わりようは……」


 アリシアの通訳によって内容を理解した黒木は悪態をつくが、彼の言葉は獣耳の女性には理解できない為、伝わることはなかった。

 そんな二人の姿に、アリシアはホッとした表情になった。


——良かった……


 あわや戦いが始まる一歩寸前であったが、何とか無事に収まることに安堵した。


「ボクはメリセル。まぁ、見ての通り獣人族だよ」

「私はアリシアといいます。彼はクロキさんです」


 アリシアは、言葉が通じない黒木の代わりに自己紹介をした。


「アリシアとクロキだね。よろしく!」


 メリセルは獣耳をピクピクとさせ、微笑みながら言った。


「あの、メリセルさんは魔物……なんですか?」


 メリセルの外見は普通の人間とは違い、獣耳や尻尾が生えていた。アリシアが初対面で感じた事を口にした所、メリセルは怪訝そうな表情になった。


「もしかして、アリシア達って王都の人間?」


 その言葉に、アリシアの心臓が飛び跳ね上がった。

 まさか、自分は第二王女であることに気づいてしまったのだろうか。

 アリシアが言いよどんでいると、表情を読み取ったメリセルが納得した顔になった。


「なるほどねー、道理で亜人の事を知らない訳だ」

「亜人?」

「君達人間が勝手に付けた総称だよ。ボク達獣人族だけじゃない。他の種族もそうやって元々住んでいた場所から、君達王国が『未開拓地』と呼んでいるこの地に追いやったんだよ。最近じゃ、王都の人間達はボク達のことを全て魔物として見ているみたいだけどね」


——王国が……追いやった……?


 アリシアは言葉を失った。


「元々はボク達もちゃんとした故郷があったんだよ。でも、100年前に王国が領地拡大のために、ボク達や他の部族の里を侵略したんだ。迫害されたボク達は、魔物が蔓延るこの森で住むことになったんだよ」

「そんな……」


 アリシアは、メリセルから語られた内容を信じることができなかった。

 王城で読んだ王国の歴史書では、王国や国民に害をもたらす魔物を倒すため騎士団や兵士たちが奮闘して、国が広大な土地を手に入れ、豊かな生活を手にすることが出来たと記されていた。

 しかし、本当はメリセルのような他民族を襲い、領土を略奪していたという事実。

 自分の国がそんな横暴なことをしていたことは、アリシアにとって受け入れがたいものだった。


「……申し訳ありません」


 アリシアは、メリセルに深く頭を下げた。

 彼女に謝罪したところで、ファルシオン王国がやってきたことを無かったことにはならない。

 それでも、これが王国の代わりにせめてもの償いとして、アリシアに出来る精一杯のことだった。

 そんなアリシアの姿に、メリセルは目を丸くした。


「……驚いた。まさか、ボクに頭を下げるなんて。大抵、亜人を初めて見る人間達は、ボク達の事を怖がったりするのに」


 メリセルは、アリシアの身体を上から下まで交互に眺めた。

 

「クウゥー」


 そして、アリシアの両腕に抱えられたフロルとメリセルの目線が重なり合った。


「精霊獣様にも懐かれているみたいだし、アリシアって本当に変わった人間だねぇー」

「あの、精霊獣とは何ですか?」


 アリシアは、気になっていたことをメリセルに尋ねた。


「精霊獣様は、大自然に存在する精霊が具現化して実体を持った存在だよ。途轍もない程の自然の加護を持っているから、亜人達の間では守り神として崇められているんだ」


 アリシアがフロルを見つめる。


——フロルが、精霊だったなんて……


 幼い頃に自分の前に現れた唯一の友人と言える子。

 以来、ずっと一緒に過ごしてきたフロルの正体に、アリシアは呆然となった。


「まぁ、普通の人間には分からないよ。ボク達のような亜人族は精霊の存在を感じ取れるけど、人間が持つ魔力と“マナ"そのものである精霊とは相性が合わないからね。そもそも、精霊の多くは人間が持つ魔力を嫌うから」


 マナというものはアリシアも知っていた。自然界に存在する魔力のことだ。

 通常、人間が魔法等を扱う場合は、自らに宿る魔力を使う。 

 魔法には、下級、中級、上級、最高位級と四段に分かれており、一般的な魔導師が扱うのは中級魔法までとされている。

 理由としては、上級以上の魔法を発動させるには、自らの魔力とマナを組み合わせことが必須だからだ。

 だが、マナを組み合わせるというには、マナを自身の体内に取り込まなければならない。

 本来、マナというのは高濃度のエネルギーを持っている為、普通の人間であれば、害をもたらしてします。良くて後遺症が残る程度だが、最悪の場合は命を落としてしまう。

 故に、マルスティア大陸で上級魔法を扱える者は、数名程とされており、貴重な存在とされていた。


——なら、フロルが私の所に来たのは……


 生まれた時から『黒い紋章』や『魔力無き者』として忌み嫌われてきたアリシアは、家族だけでなく、侍女や兵士達からぞんざいな扱いを受けてきた。

 しかし、精霊獣であるフロルが自分に懐いたのは、自分に魔力が無かったからだ。

 そして、自分以外に懐かなかったのも、魔力を持っていたが故のことだった。

 もしも、自分が魔力をもっていたら、フロルに会えていただろうか。


「そう言えば、アリシア達はあの山を越えたいんだよね?」


 メリセルは、唐突に二人に尋ねてきた。

 そう言えば、自分達は黒木の自衛隊の拠点へ向かう途中であったことを思い出した。魔物やメリセルとの遭遇によって、すっかり忘れていた。


「君達の目的は分かったけど、もう今日は止めといた方が良いよ。そろそろ、日も暮れる頃だからね」


 メリセルが山の向こうに沈みかけている太陽を見て言った。


「現時刻は、1630(ひとろくさんまる)。確かに、これ以上進むのは難しそうですね」


 話の内容を理解した黒木が、腕時計を見ながらメリセルの意見に賛同した。


「すみませんが、今日はここで野営にします。アリシア様は、しばらく休んでいて下さい。俺が準備しますので」

「あっ、待って下さい、私も手伝います!」


 野営の準備を始めようとする黒木に、アリシアも急いで歩み寄った。

 実は昨晩、アリシアが眠りについている間、黒木は一睡もせずに焚き火の番をしてくれていた。心配になって聞いてみたが、黒木は「大丈夫ですよ」と笑って返した。

 自分のせいで怪我をさせてしまった故、彼だけに負担を強いる訳にはいかない。

 アリシアが黒木を手伝おうと決意を固めていると、


「ねぇー、よかったらさ、ボク達が住む集落にくるかい?」


 メリセルによって、思いがけない提案が出されたのであった。

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