『日本改造計画外電』その漆<総統閣下と子作り>
場所は、陛下より下賜された先日越したばかりの総統官邸である。
今、私の護衛兼身の回りの世話をする者達が、全員揃っている。
南風恵美奈三等陸佐
東風蝶華一等陸尉
西風四万一等陸尉
北風一香一等陸尉
「何の用かな。」
「私共全員よりお願いが、ございます。総統閣下。」
代表して発言するものの、そこはかとない緊張をにじませる恵美奈だった。
「総統閣下の御子を授からせて頂きたいのです。総統閣下。」
「そんなものに何の価値がありましょう。否、私には視えませんね。」
「いいえ。この世界人類にとって損失です。総統閣下の遺伝子には、価値があります。」
「私には、今川氏真か、北条氏政か、ナポレオン三世ぐらいにしか視えませんね。
それに、ただ単に遺伝子を保存するだけなら冷凍保存可能でしょう。」
「それでは、御子が生まれません。どうか、お願い致します。総統閣下。」
「そこまで言うなら、百人です。病気無、妊娠機能正常な女性のみ、百人用意しなさい。」
「でっ! では、百人全員と妊活さなると言うのですか。総統閣下。」
「私を誰と心得る。用意された女性全員に『種付け』は、しましょう。
但し、条件が四つあります。」
「何でしょう。総統閣下。」
「一つ、相手の女性、子供の養育費は負担しません。
一つ、百人用意されるまで、誰にも『種付け』しません。
一つ、子供は、全員母親から離して児童養護施設で育てる事。
一つ、相手の女性には、私の個人情報を一切教えない事。これが条件です。」
「かしこまりましたぁぁぁっ! 総統閣下。」
* * *
確かに、生まれた子供が数人なら、例に挙げたような家を滅ぼした無能もあり得よう。が、百人ならどうだ。一人や二人優秀な奴もいるはず。むしろ、中途半端に優秀な奴らが、潰し合って真に優秀な奴が残る可能性もある。そう言う漁夫の利、運の良さも生存戦略の一環。
これで、後世歴史の教科書に書かれるだろう。総統は、百人の女を要求した女好きだと。
それもまた楽しからずや。
* * *
「だから私が、承諾すると言っているのです。相手の女性は、別途同意書を書かせる。
特に問題は、ないでしょう。技術的、法律的にも。そこに本人の意思が加わる。
重ねて言いますが、何の問題がありましょうや。」
「では、こちらの同意書にご署名をお願い致します。総統閣下。」
「……当然だな…………ん? 撮影するのか。私の遺伝子を出すだけですよ。」
「ええ。実験ですから。総統閣下の遺伝子である事を証明しなければなりません。」
「……空の容器を手に密室に入る。密室から出ると遺伝子が入っているでよいのですね。」
「駄目です。遺伝子を出す瞬間を撮影します。これは、あくまで実験ですよ。総統閣下。」
「……なら、コンドームの中に出しても問題ないのですね。」
「そうですね。むしろ不純物が混入するリスク抑制、問題ありません。総統閣下。」
「……同意書を検証したいので、暫し時間をお願いしますよ。」
「では、後日伺います。本日はお時間ありがとうございます。総統閣下。」
* * *
「人生には、みっつの『坂』がある。本当に、『まさか』だ。よく百人集めましたね。」
「お褒めに預かり恐悦至極にございます。総統閣下。」
「褒めていませんし、褒めるべきでもありませんし、褒める理由もありません。
で、私の出した条件、相手の女性から同意書を取り付けていますね。全て。」
「はっ。全てつつがなく完了し、添付資料として保存しております。総統閣下。」
「あぁ……これですね。タッチパネルは、操作性がよろしくないですね。
ほぉ……私の指示通り、『犯罪者』を混ぜましたね。結構々々。」
「しかし、宜しいのでしょうか。『犯罪者』の子供など。『蛙の子は蛙』とも言います。
折角の総統閣下の遺伝子を『悪用』されかねません。ご再考なさっては。」
「ご存じない。『犯罪者』の直径子孫は、優秀に育つ傾向にあります。
かの有名な『郵政民営化総理』も、元を正せばヤクザの息子だったそうです。
それに、『悪用』など誰でもやります。『犯罪者』に限った話ではありません。
只単に『犯罪』と言う形にできたか、否かでしかありません。早速準備しなさい。」
「しかし、『犯罪者』の子供ですよ。ご再考なさっては。総統閣下。」
「復唱しなさい。」
「はっ。『試験管ベイビー作成の為総統閣下の遺伝子を取り出します。』
以上、復唱致しました。総統閣下。」
<END>