浮遊のマント
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「それで？ エニュール商会に預けた物って何だったんですか？」
「ああ、これなんだけどね？ 説明を聞いても意味が解らないから、使ってみて欲しいって言われているんだよ。まあ、そのまま説明をするけどさ。使い方が解らなかったら聞き直して欲しいくらいだよ。……なんでも、上手くいけば空を飛べるらしい」
「はあ！？ 空を飛ぶだと？ そのマントで？」
「そうなんだよ。詳しく説明していくよ？ と言っても、疑問点はこっちでは聞いても無駄だからね？ 疑問は作った本人に聞いて欲しいんだよ」
ちょっと待とうか。簡単に言ってくれる。そもそも理解が追いつくのかどうかという所なんだよ。空を飛ぶだと？ そんな事が可能なのか？ なんでそうなるんだよっていっても良いんだろうか。良いよな。いいだろう。出鱈目にも程があるぞ。
という感じで説明を受けた。……なんでも、魔力をマントに纏わせると、浮遊力が向上するらしい。グレアワイバーンの被膜で作ってあるそうなんだけど、それをすると、落下が遅くなるんだそうだ。……魔力ってどうやって使うんだよ？ その説明は無かった。と言う事は、魔力は使えることが前提なんだろう。魔力ってなんだよ？ そもそも魔法使いじゃないんだから、魔力なんて使える訳がないと思っていたんだけど、まあ、なんとなくだけど、言いたいことは解る。加護の力を使うのが魔力って言いたいんだろうな。ストレージだって立派な加護だ。それを使えるんだから、魔力だって使えるだろう。そう言う事なんだろうな。多分だけど。
とりあえず、マントに魔力というか、ストレージの加護を使う時の様な何かを行き渡らせていく。なんとなくなんだけど、使い方はこれで良い筈なんだよ。多分だけどな。なんとなくで使っているけど、それはそれで良いと思うんだよな。それで、これで地面を蹴り上げると。そうすると、いつも以上にジャンプが出来て、空中に浮く感じが感じられた。……重力を緩和するのか？ 多分そういう感じになっているんだとは思うけど。
……なるほどなあ。グレアワイバーンやドラゴン系統が空を飛んでいるのはこの所為なのか。重力を何とかするというか、反重力系の何かなんだろうな。これはでも、空を飛ぶとまではいかないよな。多分だけど、上手い事上昇気流に乗らないと、自由には空を飛ぶことは出来ないと思う。風を感じて、風の力を借りて、上昇していかないといけないとは思うんだよなあ。それが出来るようになれば、かなりの時間、空を飛べると思うんだよ。地面を蹴るだけでも、5mくらいは空中に身を投げ出せるわけなんだけど、これを維持するのは、結構大変だと思うぞ？ 自由に空を飛べるようにはならないとは思うが……。
「まあ、機動力は一気に向上するよな。難民キャンプで使う分には、かなりの機動力が確保できるわけだ。障害物が必要になって来るな。オープンワールドでは厳しいんじゃないだろうか。……まあ、左右の動き事態は何とかなるんだけど、前後が厳しい。後は風を感じられるかどうかだな。それが解らないと、上昇気流には乗れない。上昇気流に乗れれば、楽しい事になるんだろうけど、その感覚が解らないからな。でも、空中戦は何とか出来るようにはしてあるんだよなあ。これでもかなり有用ではあるんだよ。なんといえば良いのか。後は空中での機動をどうするのかって話だよな。前進は簡単だし、左右に動くことも何とか出来る。問題は方向転換が難しい事か。……でも、それはグレアワイバーンやドラゴンを見ていても同じことなんだよな。自由度は結構あるとは思うんだけど、風を読む力が必要になって来るよな」
なんというか、町中での機動力は一気に増した。立体機動が出来るようになったからな。ジャンプを交えて走るだけでもかなりの速度が出る。それで壁を蹴ることによって、空中をかなりの速度で翔ることが出来るようにはなった。市街戦では負ける気がしないな。まあ、問題は魔力が何処まであるのかという心配があることではあるんだけど。魔力が無限なんてことは無いとは思うんだけどな……。普段の加護は、そこまで魔力を使わないと思うし。これも魔力を纏わせるだけだから、そこまでの消費では無い気がするんだけどさ。
「……いや、待てよ？ 俺の場合は風を読む必要も無いんじゃないか？ こうやって……」
ストレージを展開し、それを足場にして立ってみる。……うん。立てるな。なるほど、足場にも使えるのか。そうなると話は変わって来るよな。今までは障害物が必要だと思っていたが、障害物は自分で用意できる。とすれば、これを蹴り上げると、どうなるのかって話だよな。
と言う事でやってみた。ストレージは生物は入らない。その特性を使えば、足場を作ることが出来ると言う事なのか。それを足場に蹴り上げると、空も飛べてしまうと。……これは反則なのでは？ ちょっと意味が解らない。魔物を討伐する事によって、身体能力も向上している訳なんだけど、その結果、無限機動というか、自由に空を飛べることが判明した。……あの錬金術師はこの仕様を想定していたのか？ 俺がストレージの加護を持っていることは知っている。ならば、ストレージの出入り口を足場にして飛べるのではないかと考えていたのか？
そうじゃないと、色々と説明が出来ないよな。だって、試すのは誰でも良かったわけだし、空を飛べるようになるとは言わないと思うんだよな。精々が浮けるようになるというだけだろうし。……下手をすれば、俺よりもストレージの仕様を知っているというか、可能性を追いかけている可能性がある？ こっちも色々と試してはいるが、それ以上に可能性を追いかけてくれているような気がするな。錬金術師としてというよりは、研究者としてって感じなんだろうけど。でもまあ、何とか空は飛べそうな気がしている。ある程度慣れが必要にはなるだろうけど。……問題は飛べるようになったからと言って、戦闘が楽になるとは限らない所か。グランドドラゴン相手は簡単になるだろうとは思うけど、それ以外のドラゴンはなあ。空中戦をやるのもちょっと。難しいとは思うんだよな。風を読む力か。それを何とかしないといけないかもしれない。
「ただまあ、使えることは解ったんだから、積極的に使っていこう。もしかしたら、他の冒険者も使えるようになるかもしれないし。使えるようになったら、ドラゴンとか余裕になるんだろうか？ 空中戦が出来れば、色々と出来ることがあるんじゃないかなって思うんだけど、どうなんだろうか。俺の方はこれでいいとしてだな。問題は他の冒険者か。俺専用装備って訳にはいかないだろうし、そんな拡張性のない様な物作りはするようには思えないんだよな。何かを考えているとは思うんだが……」
考えても仕方がないか。積極的に使い込んでみて、改善点なんかを洗い出した方がいいのかもしれない。俺以外でも使えるようになるかどうかは、向こうが何とかしてくれるだろうからな。俺はこのマントの使い心地を報告すればいいだろう。ストレージの入り口を足場にして、空中戦が出来るようになるのであれば、色々と開けることがあるとは思う。単純に強くなるよりも、色々と出来るようになるのかもしれないしな。まあ、使い込んでみるか。それを望んでいるだろうし。こっちでも色々と考えてみるか。出来れば、冒険者が皆、空中戦が出来る様になれば、面白いと思うんだよな。武器の性能は上がるんだ。それなら、後は空中にいるドラゴンにどうやって攻撃を当てるのかって事になってくると思うからさ。
