遠くで大きな地震
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いやーいい買い物ができたな。まさか本当に甘味が売っているとは思わなかった。そうかそうか。蜂蜜も甘味だったな。これは盲点だった。
色々と探してみたら、蜂蜜があったんだよ。何処かの村で作っているんだろうな。滅茶苦茶高かったけど、蜂蜜なら色々と使い道があるんだよ。パンにかけても良いんだしな。塩も貴重品だけど、それ以上に甘味は貴重品なんだよなあ。蜂蜜が手に入ったことは良かった。心置きなく買えるのは良い事だよな。少々値段が張ったが、今後の事を考えると、良い買い物をしたとは思う。
「蜂蜜ねえ。扱うにはまだまだ高いかなあ。大規模商人なら、貴族様や代官様にも伝手があるんだろうけど、僕には無いからね。平民が買うには、ちょっと高すぎるでしょ? 普通に売っているから、買えなくはないんだけど、大量に必要かって言われると微妙でさ。僕はまだ扱えないかな」
「そんなものなのか? 甘味というだけで高級品なのには変わりないとは思うが、平民に全く売れないという訳ではないんじゃないか?」
「売れないことはないけど、そこまで多くは必要ないよね。仕入れても良いとは思うけど、暫くは在庫を抱え込むことになるだろうし、難しいかなって思うよね。今はとにかく食料をって感じになっているし、蜂蜜に使う枠は無いかな。今後の事を考えれば、解らない事でも無いんだけど――」
……ゴゴゴゴゴゴゴ
「……また地震か。縦揺れだから比較的大きく感じるな。前回よりは小さいけど、結構遠くで揺れた気がする」
「よ、良く落ち着いていられるね……。こっちはビビって馬車を運転していることを忘れたよ。前回もあったよね? あの時もビビっていたけど、馬は何ともないんだね?」
「流石に危険があると、馬も大慌てにはなるけど、この程度の地震なら得には問題ないはずだぞ? 建物が倒壊する様な大きさの地震が来たら、流石に大慌てにはなるとは思うが」
こういうのは野生の動物の方が敏感だったりするんだよな。民族大移動をしたりするのは野生動物だ。馬は、家畜の一種だから、そこまでではないんだよな。まあ、大きなものに関しては驚くんだけど。でも、短期間に2度の地震か。何か悪い前触れじゃなければ良いんだけど。
「……良し、落ち着いた。ゆっくりでいいから周りも警戒してくれると助かるよ。何か異常が無いかだけ調べて欲しいかな」
「多分何ともないとは思うけどな? そこまで大きな揺れでも……。いや、待てよ?」
「なんだい? どうかしたのかい?」
「いや、何処で揺れたのかと思ってな……」
「何処でって、ここで揺れたんだけど?」
「ああ、まあ、そうなんだけど」
震源が何処なのかって話なんだよな。そんな事の特定は難しいとは思う。思うが、最悪の事を想定しないといけないかもしれない。もし、震源が遠かった場合、そこは壊滅的な被害を受けている可能性が高いんだよ。特に横揺れとは違って、縦揺れだったからな。震源は浅い可能性が高いんだよなあ。それが何処で起きたのかによって、全然話は変わってくるんだよ。
最悪の事を想定しないといけないのかな? そんな想定をしないといけないんだろうか。マジでそんな事になったら、影響がデカすぎるんだけど。そんな事にはならないでほしいと思っているんだけどな。……まあ、何とかなる様に祈るしかない。
「……それよりもだ。前方に盗賊の気配がある。数は5とかそのくらいだとは思う。地震があったからな。結構慌てているな」
「なんだって? それじゃあ討伐してきてくれるかい?」
「勿論任せてくれ。今なら浮足立っているだろうし、簡単に処理できると思う」
と言う事で、先行してやって来た訳なんだけど、地震で立ち上がっていたり、口論をしていたから、簡単に討伐できてしまった。こういう時は落ち着かないといけないんだけど、周りがパニックを起こすと、それに引きずられてパニックが伝播するからな。気を付けないとそれだけで全滅しかねないんだよな。俺はそういうのには慣れているから問題ないんだけど。
今回も死体は貰う事になっている。報酬とは別に貰えるようになっているからな。なんだかんだと死体は必要かもしれないし、確保しておく分には良いとは思うんだよな。今回も何度か襲われるんだろうし、死体は十分に確保できると思っている。確保してあげた方が良いよな。多分だけど。まあ、要らなければ捨てれば良いんだし。要らないって事は無いとは思うんだよな。なんだかんだと実験には使うと思うしな。ある分には確保しておく方が良いんだよ。
そんな感じで、村々を回って野菜を確保していった。盗賊とも何度も戦闘をした。今回は冒険者ギルドから来ていた面々も役に立ってくれたからな。大きな盗賊団とはあわなかったけど、小規模の盗賊団については難なく撃破してみせた。そこは安心材料だったよ。これで戦えませんとか言われたら、また冒険者ギルドで一芝居しないといけなかったからな。面倒ごとは御免だ。戦えてくれて本当に良かったとは思う。これで冒険者ギルドと商業ギルドの間でも、揉めることは少なくなるだろう。……多分だけど。大規模の盗賊団に襲われた場合は、どうしようもないとは思うけどな。そもそも俺含めて10人しか居ないんだから。もっと人数を確保した方が良いとは思うけどな。盗賊団も大きくなれば30人くらいにはなってくるんだから。それを対応しないといけないと思うんだよなあ。
まあ、そんな事はどうでもいいんだけどな。いや、どうでも良い訳ではないんだけど、俺にとってはそれよりも大きな事があったんだよ。今回の盗賊も馬車を何台か使っていたから馬車が使える数が増えたとか、そういうのもあるんだけど、そんな事よりも考えないといけないことがある。……今回の馬車旅で、地震の後に雨が降ってきたんだ。しかも結構な長雨で、護衛中や農村に立ち寄っている間も雨が降っていた。大体15日くらいは雨だったかな。気がかりだよな。雨だぞ? いや、雨くらいは普通に降るんだけど、地震の後の雨なんだよなあ。もしかするとって可能性もあるんだよ。それが起きていたら、もう最悪なんだよな。
……ゴゴゴゴゴゴゴ
「ヒヒヒヒーーン」
「おおわああ!?」
「……デカいな。震度4くらいはありそうだ。……漸く雨が上がったと思ったらこれだ。最悪の事態は考えておかないといけないというか、最悪の事態が起きているよなあ。マジで最悪だ。向こうの山がメギル鉱山だよな? はああああ。どうしたものかなあ」
「良く落ち着いていられるね!? なんで慌てないの!? 頼もしいけどさ!?」
「慌てても仕方がないからな。それよりもだ。もっと危惧しないといけないことがある。多分だけど、ガロールはもっと揺れているぞ。最悪は家屋が倒壊している可能性がある。まあ、行ってみれば解ることだとは思うが、下手をすれば、商売どころの話では無くなるな。折角商業ギルドと冒険者ギルドが上手くいこうとしている時に、こんなことになるとは思わんだろう」
向こうから、もくもくと上がる煙を見ている。最悪だな。まさかこんなことになるとは。まあ、行ってみれば何が起こっているのかは解るが。まあ、間違いなく家屋は倒壊し、悲惨な事になっているだろう事は想像がつく。仕方がない事ではあるんだけど、まさか本当にそうなるとはなあ。どうするかは決めないといけない。ガロールで冒険者としてやって行こうとは思っていたんだけど、これでは無理だろうな。幾つ命があっても足りない。そんな状況になってしまったんだよ。まずは、何処にどうやって逃げるのかを考えないといけない。




