護衛依頼で揉めている
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「帰って来るなりアイアンゴーレムばっかりだなあ、おい。まだ鉄が足りねえのか？ 幾らなんでも武器を作り過ぎなんじゃないのか？ 普通はそんな予備ばっかり持たねえし、なんならそんなに武器を使い潰さねえぞ？ 本気で何をやっているんだ？ メギルパンサーの方が儲かるだろ？ そうしねえのか？」
「しないんじゃなくて出来ないが正しいな。武器の数もそうなんだが、使用する鉄の量が異常なんだよ。普通の武器じゃないしな。まあ、こればかりは言っても仕方がないとは思うが。それにその武器はストレージの加護を貰ってないと使えない特殊な武器なんだよ。鉄の量も半端じゃないし、仕方なくアイアンゴーレムを狩っているんだよ。こっちだって金が欲しければメギルパンサーを積極的に狩るさ。金以上に欲しい物があるんだから仕方がないだろう？ 武器は絶対に必要なんだよ。それだけの性能があるんだからな。最低でも欲しい数は決まっている。それを確保するまでは鉄が必要なんだよ。まあ、壊れることは無いとは思うが。再利用はちゃんと出来るからなあ」
「まあ、そんな事は解っているがな？ 鉄の利用量が半端じゃねえのは解っているんだよ。だがよお、冒険者ギルドの職員としてはだな、一応言わないといけない事ではあるだろう？ ほら、例の盗賊の件だ。あれで食料不足になりかけているんだよ。余力があるなら食料供給に力を貸してくれてもいいだろう？ って思いがあるんだよ。一応言っておかないと、忘れているかもしれないだろ？」
「忘れる訳がないだろうさ。食料が高くなっている事なんて解っているっての。だけど、肉ばかり供給しても仕方がないだろう？ 人間は野菜も麦も食わないといけないんだから。肉ばかりだと駄目だってのは解っているじゃないか。勿論肉だけでも生活できないことはないが、色々と駄目になるのは解っているだろう？ 今足りないのは野菜なんだよ。そっちの供給が止まると、本気でやばいからな。というか、それの対策で冒険者ギルドが揉めているってのも聞いているんだが？ 護衛依頼の件だ。そっちの方が深刻じゃないのか？ 正直なところ、俺も被害者の1人だからな？ 碌な冒険者を着けなかったから、下手したら知り合いの商人と一緒にお陀仏だった可能性があるんだぞ？」
「お前さんが死ぬわけないだろうが。何をしてでも生き残るタイプだろうに。……まあ、それは置いておくとして、本気で悩んでいるらしいがな。商人に碌な護衛を着けなかったせいで、大規模商会からも死者が出てるんだからな。幸いにも跡取りじゃなかっただけマシだが、それでも被害は出ているし、なんなら中規模商会が半分になったからなあ。商業ギルドが本気でキレているらしい。かといってだな。護衛依頼を受ける冒険者は少ない。それの現状は解っているんだろう？」
「そりゃあ解っているさ。報酬が少ないのもそうだが、そもそも拘束時間が長すぎる。今までは荷台で寝てたら良かったんだろうが、盗賊が頻繁に出るようになったんだから、ちゃんと神経をとがらせてないといけないし、襲われない様にするなら、殺気をばら撒く必要もある。そんな事を無意識にやれる奴なんて、そもそも討伐依頼で食っていける。だから護衛依頼には食い扶持に困っている冒険者しか募集に応えない。でも、その候補じゃあそもそも役者不足過ぎて商業ギルドがキレているんだろう？ まあ、当然ではあるけど、そもそも簡単に解決できる問題でもないだろう？」
簡単に解決できるのであれば、そもそも解決しているのである。揉めていると言う事はそう言う事だ。冒険者の質が問題なのもそうなんだが、質が良い冒険者は、そもそも討伐で食っていけるので、そこまで困っていないのである。しかも討伐が得意なのと、対人戦が得意なのとは両立しない可能性もある。魔物には強いが、人間には弱い冒険者もいるって事だな。逆もまたあるんだが、そもそもそういう人は賞金稼ぎをやっているので、案外金には困っていない。寧ろ盗賊を討伐すると、未来のバウンティを狩る可能性があるから、そういう奴らは積極的には参加しないしな。
そもそもの話、騎士団がちゃんと機能していれば、見回りなんかを強化して、どんどんと盗賊を狩れば良いのだ。それが外征部隊の役割でもあるはずなんだがなあ。そもそもお貴族様のお遊び部隊なせいで、碌に機能もしていないのが現状だ。しかも壊滅状態にされたからな。マジで部隊遊びが過ぎた結果なんだよなあ。どうしてこうなるんだよって叫びたくなるのはこっちも同じなんだよ。まあ、一番叫びたいのは、冒険者ギルドのギルドマスターだろうが。こんな案件どうするんだよって話だろ？ どうやってまとめるつもりなんだろうな？ 俺では全然案が思い付かない。
「マジでどうするんだ？ 冒険者として護衛依頼に参加しても良いが、俺だって鉄が欲しいし。そもそも俺の贔屓にしている商人が護衛依頼をかけたらそっちに行きたいから、他の護衛依頼を受けるつもりは無いんだけど？」
「まあ、そもそもここで稼げている奴らは全員が同じことを言うと思うぞ？ 贔屓にしている商人がいれば引き受けるだろうが、稼げているんだから、こっちで良いじゃねえかって奴らが大半だろう？ そんな事は解っているんだよ。だから悩んでるんだろ？ まあ、こっちには飛び火してくるなとは思うけどな。結局は商業ギルドと冒険者ギルドの関係が微妙なんだよ。冒険者としては、利益があるなら護衛依頼を請けても良いんだ。それは解っている。結局は金なんだよ。金が一番の問題なんだよな。だから金さえ出せば、冒険者だって依頼を受けるんだ。だがよ、そんな事をしてみろ。食料品が値上がりするじゃねえか。そりゃそうだよなあ。仕入れ値が今までの10倍になったら、値段はそれ相応に上がる。となると、今度は下位層の冒険者の生きる道が無くなる。宿代だって上がるだろうし、屋台の値段も跳ね上がる。冒険者が生活できなくなるんだよな。それも解っているんだが、冒険者ギルドも商業ギルドも自腹は切りたくないときている。そんな訳で、纏まる訳がないのさ」
「まあ、結局は両方がある程度金を出せって事なんだろうな。そうじゃないと一定以上の冒険者は集まらないだろうし。後は足きりも必要になってくるだろう？ 戦力外を沢山連れて行っても戦力にはならないんだから。何処かで基準を設ける必要が出てくるだろう。他の領地はどうやっているんだ？ そっちを参考に出来ないのか？」
「あー。なんというかだな。そもそも他の領地って盗賊が出にくいんだよ。ここは辺境伯領だ。他国との国境線の近くなんだよ。だから、どっちつかずの連中が集まってきて盗賊団を結成している訳だ。他の領地はそんなにも盗賊には困っていない。それを考えて、他の辺境伯領ではどうしているんだって話も出たには出たらしいんだがなあ……。ここが冒険者にとって旨味があり過ぎるんだよ。それが面倒なんだよなあ。単純に単価が高すぎるんだよ」
ああ、それもあるのか。狩場として美味すぎるからどうしようもないのか。それはそれで問題だな。確かに鉄に肉に皮に、捨てることろが無いんだよなあ。これが食えないとなってくると話が変わるんだろうけど、そうでもないからな。食えない魔物は確かに存在する。典型的なのがゴブリンだな。あれは皮すら使えないという最悪の魔物だ。討伐報酬以外は貰えないという倒す価値のない魔物なんだよなあ。そういう場所もあると考えると、ここは金を稼ぐには良い場所だよな。それはそうなんだが。
