夜の見張り
新作始めました。1話は読まなくても大丈夫です。ちょっと色々とぶちまけただけなので。
『狂おしいほど好きなこの世界』
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OFUSE始めました。
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ついでにブログも始めました。好きなことをつらつらと書いていく予定。
https://rukeanote.hatenablog.com/
さらについでにTwitterも始めました。変なこともつぶやく可能性があります。関係ないことも沢山つぶやきます。
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森の中では何も起こらずに村まで到着できた。……まあ、仕掛けてくるなら夜だろうな。村を襲うのもやるだろうとは思う。正直なところ、そこまでやる連中なのかとも考えたが、あそこまで念入りに倒木を準備していたんだ。斥候もかなりの数が居たと思う。微妙な気配をしていた連中はそいつらだろうとは思うんだよ。それなら、商人が2人も来ているのであれば、村を襲ってもリターンは確保できると考えるだろう。
何も村人を敵に回す必要はない。村長宅を襲撃すればいいだけの話だからな。そこまで大きなリスクとはならない。村人を生きて返さないような場合は、ちょっと面倒かもしれないが、今回のは商人を襲撃するだけで十分だろうと考えるだろうからな。……少々の焼き討ちはあるかもしれないが、村人に危害は加えないだろうとは思う。
そもそも村人に危害を加える系の盗賊団なら、もう既に何人も攫われている筈なんだよ。それがないって事は、商人狙いの襲撃がある可能性があるって所だろうな。村人には手を付けないだろう。手を付けるだけの余裕があるとは思えないが。居ても30人くらいがやっとじゃないか? 戦利品を持ち帰るのであれば、そのくらいの人数が居ないと持ち帰れないとは思う。
まあ、襲撃があるかもしれないとは言い切れないので、俺も事前に準備をするだけで、誰にも声はかけていなかったんだが、向こうの護衛にはこのことに考えが至っている者も居たようだ。俺が配置についていたら、後ろからこちらに近づいてきた。
「よう。また会ったな。だが、意外だな。商人としては小規模の筈だから、それなりの護衛しか用意できていないだろうとは思っていたんだがな。今回の事に気が付いている奴が居るとはな」
「察しが良ければ気が付く程度のものだろう? あそこで襲えなければ、村で襲えばいい。ただ、戦力的には30人程度だと思っている。それなら村人には手を出さないだろうし、やって来るならここに直接だ。どちらかというと、大規模な襲撃よりも、隠密に盗み出す方が正しいと見た。出来れば大きな音は立てたくないと考えていると思う。そう考えれば、ここが襲われるだろう事は解るからな」
「へぇ……。そこまでしっかりと考えられているなら、戦力にもなるって事だよな? 加護はストレージだったが、加護ではなく、実力で戦えるって事なんだろう?」
「そう言う事だな。加護に頼るだけの戦い方はしていない。まあ、戦闘でも加護は使うがな」
「ほう。ストレージの加護を戦闘で使うのか。それはそれはだな。見てみたいが、俺らは向こうだ」
「お? こっち方面は任せてくれるって事でいいのか?」
「ああ、さっきから探っているが、隙がねえ。お前ならやれるだろうよ。こっちが色々と仕掛けていたのも解っているんだろう?」
「まあな。重心の移動でなんだかんだと解る物がある。……それで良いか?」
「十分だよ。ま、こっちは任せる。俺たちは向こうを担当する。2方面から対処できれば、大きいだろう?」
「そうだな。俺1人ではどうにもならない可能性が高かったから、正直助かる」
「それはお互い様だ。行くぞ。護衛依頼ってのはこうじゃないとな」
探りを入れられていたのは解っていた。重心を微妙に動かすから、こちらもそれに対応しないといけないとは思っていたんだよ。実力の確認をしたかったのは本当なんだろうとは思うけどな。探りだけで何もして来なかったからな。まあ、戦力が増えることは歓迎だ。どうせあの6人はおねむだろうし、多方面を警戒できるに越したことはないからな。今日にでも襲撃が来なければ、明日以降も来ることはない。というか、今日しか襲えないんだよ。向こうの戦略としてはそうするしか無いんだから。そこで襲わないという判断をしたのだとすれば、襲ってくることはない。それは確定的だ。
しっかし、護衛依頼なのに、護衛が護衛として役に立たないというのはちょっとなあ。向こうの5人のように、中規模商人でも、碌な人材が集まらないんだなってのは良く解る。護衛依頼はもっと高額の報酬にしても良い様な気がするんだがなあ。それだと商人の負担が大きいのは確かなんだけど、冒険者の質の事も考えたら、ある程度の実力がある奴じゃないと護衛依頼は受けられない様にするとかさ。ランク制でも良いとは思うんだよなあ。それだけだと、商人の負担は軽くはならないんだけど。冒険者ギルドが何かしらを考えないといけない案件だと思うんだよな。今みたいに盗賊が跋扈する様な状況になる可能性もあるんだし。
盗賊が盗賊を呼び込むのはよくあることだと思うしな。数が多ければ紛れ込めるし、勝率も上がるからな。勝率は高められるのであれば、どんどんと高めた方が良い。それは盗賊稼業でも同じことなんだよ。出来る限り成功率を高める。そうしないと食っていけないからな。行き当たりばったりでは、負けてお陀仏って事も普通にあり得る世界なんだよ。生きて投獄されるなんて費用の無駄でしかない。殺して処分した方が楽なんだよな。費用が余分にかかることも無いんだし。
「それにしても、夜目が効かないのは不利だよな。そういう道具もあるのかもしれないし、薬なんかもあるのかもしれないが、気配だけで何とかするのは難しいんだよ。特に明かりが豊富って訳でもないしな。来るなら一気に来るだろうが、何処から来るんだろうか。向こう側の可能性もあるんだけど、こっちの可能性もあるし、一気に両方から攻めるって手も考えられるんだよな。荷物と馬の両方を確保した方が楽に撤退できるんだしな」
……
「……見られているか。いや、殺気は感じない。となると、場所をみているだけで、こっちは認識されていない可能性はあるな。と言う事は、こっちから襲ってくることはほぼ確定か。こっちは馬小屋だから、先に馬を確保するのか、それとも両方確保するのか。作戦次第ではあるが、30人程度の相手をしないといけないことは解っているんだ。そのくらいは出来る。こっちを任された以上は、守り通して見せないとな」
夜風が気持ちいいが、そこに不穏な空気が乗っている。これは来るという気配だよなあ。ただ、向こうも警戒はしているようだ。こっちの戦力を計るような雰囲気が感じられる。こっちは1人だ。何人で来るのかは知らないが、1人で相手が出来るだけの戦力で来て欲しい所ではある。出来れば大きな音は避けた方が良いんだろうが、無理な場合もあるからな。こっちは出来る事を全力でやるだけだ。
月明りで、どれだけの把握が出来るのか。それが問題だ。ガロールのように夜も明かりが付いているなんてことはない。村では太陽が昇ると同時に活動して、太陽が沈むのと同時に活動を止めるというのが一般的だ。それに倣えば、今は活動しないのが正解な訳だ。活動するのは盗賊くらいなものなんだろうな。音を立てずにこちらに接近してくるのか、ある程度の音は仕方がないと妥協してくるのか。それでも大きく差が出てくる。
どちらでも良い様には、気配を掴んでいるんだけどな。まだ、村の中には入って来ていない。まだ村の外から様子を見ているに過ぎない。まだ寝静まるには早いと踏んでいるのかもしれない。だが、こちらは徹夜組だ。眠いなんて考えもしていない。それくらいの事は出来る。若いなら、不眠程度の事は無視できる。まあ、それだからって無限に時間を使えると誤認すると、痛い目を見るんだけどな? 人間には休息も必要なんだよ。出来る事を出来る限りやるだけで十分なんだ。




