倒木でとうせんぼう
OFUSE始めました。
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「周囲が森だと、どうしても襲ってくれって可能性が高くなるんだよなあ。警戒しているけど、人気がある。結構前の方に結構な人数が居ると思うんだよ。……なんでなのかは知らないけど。左右にはそこまで居ないと思うんだよなあ。仕掛けてくるなら仕掛けてくるだろうし、何が目的なんだろうか?」
「左右に盗賊が居るのかい?」
「いや、盗賊とは断定できないでいるんですよ。何人か樵らしき人は見かけているんですが、それが本当に樵なのか、ですね。ちょっと疑心暗鬼になっているのもあるんでしょうけど」
そうなんだよなあ。村を出て直ぐには、樵らしき人が何人も居たんだよ。だから、数人森の中に居るのは不自然な事では無いんだよな。でも、それにしては変な気配がするし、結構前の方には、大人数が固まっているようにも感じるんだよね。気配が荒だっている様な感じがある。まあ、これは感覚に近いから、絶対に何かがあるとは解らないんだけど。
「この道はどっちに行くんですか?」
「左だね。こっちの方に行くと、ガロールがもう数日で見えてくるからさ。今回はそこで行商が終わりなんだよねえ。でも、この調子で行けば、なんでしょ?」
「……左からは荒だっている雰囲気があるんですよね。何かあるような気がしてならない訳ですよ。当たるとは限りませんけど、魔物とは違う、何かがあると思う訳です。何があるのかは解らないですけどね。行くなら急いだ方がいいかもしれないです」
「そうなのかい? まあ、少しだけ急いでみようかな。馬の負担にならない程度に急いでみようか。何かあってからでは遅いんだしね」
そんな訳で、道のりを急いだわけなんだけど、そこには大量の馬車があった。そして、その場所を塞ぐように倒木が何本も倒れており、行く手を塞いでいた。
「……気配の出所はここか。少しだけ様子を見てきます。速度は落として、ゆっくりと近づいてきてください」
「了解したよ。気を付けてね」
馬車から降りて駆ける。何が起きているのかをまずは確認だ。確認しないといけない。仮にこれが全部敵だった場合、色々と面倒な事になるからな。
「!? 止まれ! 何者だ!」
「こちらは商人の護衛をしている冒険者だ。この状況の確認の為に先に駆けてきた。俺の護衛対象は向こうの馬車だ」
「……嘘じゃないな?」
「本当だ。まあ、そっちも同じ感じなんだろうなとは思うけどな」
「まあ、な。倒木が邪魔で仕方がねえ。1本なら何とか片付ければ良いんだが、積み込まれているのはな。ここで何かあるって話なんだろうさ。まだ何も起きては居ないが、ここで何かが起きるのは確かだろうよ」
「そうだろうな。それで? 来たのは今日か?」
「ああ、俺たちも2時間前くらいに通ろうとしたところだ。まあ、この通りで何も進まないんだけどな。最悪はここで1晩明かすことになるかもしれん」
「……最悪だな。多分だが、盗賊団はそれを狙って来るだろう。直ぐに動き出さないのはその為だろうな。夜まで待っていると言う事になるとは思う。……夜まで後4時間程度だ。引き返すには困る距離だし、ここに寝泊まりすることになるんだろう。普通ならな。それを襲うのが盗賊団のやり口なんだろう」
「……お前もそう思うか? こっちも同じ見解だ。だからなんとしてでも突破しようとしているんだが、難しいのが現状だな。そもそも木を切るための道具が無い。剣では限界があるからな」
「それに関してはこっちで対処が出来ると思う。俺はストレージの加護持ちだ。倒木をどかせる程度の事は出来る。だから、ここからは次の村まで一緒に行動しないか? 護衛が増える方が安全だろう?」
「……なるほどな。それなら早期に脱出できるな。こっちの商人に確認を取る。お前はそこで待機だ。見張っておいてくれ」
「任せておけ」
見張りの1人が商人に確認を取りに行ったか。……馬車の数は10台前後。中規模商人と言ったところか。護衛もしっかりとしたのが何人も居る感じだな。
「止まってくれ。レイウード君、どうだった?」
「ここには中規模の商人が足止めをされている様です。向こうで倒木があって、足止めをされていたみたいですね。ここさえ抜けてしまえば村に到着するので、協力して何とか移動できないかを確認していたところです。既に俺の加護の事は明かしてあるので、突破は出来ると思います。……突破できなかった場合は、ここで1泊する訳ですが、それは危険すぎるので、最終的にはここは強制突破でも良いかとは思いますが、まあ、商人が相手なら、普通に通してくれるでしょうね」
「なるほどね。了解したよ。じゃあこっちも警戒に当たった方が良いかな? ここも見張られているって事だよね?」
「そう言う事になります。冒険者を使って、馬車周りを固めてください。特に側面からは攻撃されやすいので、対処をお願いします」
「解ったよ」
こんな所で襲われたら目も当てられないからな。何も出来ないのではない。今できることは最大限にやるべきなんだよ。護衛の冒険者にも多少は役に立ってもらわないといけない。ここまで来て、何の役にも立ちませんでしたでは話にならないからな。
「おい、商人との話は着けてきた。さっさと邪魔な物をどけてくれ。そうしたら一緒に次の村までは行こうって話だ。そこからは別行動になるかもしれないが、一先ずはそれで利害が一致するだろう?」
「こちらとしてもそれで大丈夫です。ですよね?」
「うん。大丈夫だよ。じゃあよろしくね?」
「案内してくれ。一応個人行動はしないつもりだ」
「ああ、こっちに来てくれ」
そして、そこには倒木が10本以上も転がっていた。……ここまでやるのか。切り口からマジックバッグを使えばいいだろうとは思っていたんだが、両方から倒されているから、枝が邪魔で難しいと来たか。でも解ったことは、土属性の魔法使いは居ないと言う事だな。居たら根っこから掘り返して倒しているだろうし。その方が時間がかかるだろうからな。そこまで徹底的にやるだろうとは思う。やっていないと言う事は、居ないと断定しても良いな。ここまで念入りにやる盗賊団だ。面倒ではあるが、相手をしないといけないんだろうな。
「さて、さっさと片付けるのでどいていただければ。ストレージで一気に片付けます」
そんな訳で、この程度の障害物なら一瞬で片付けることが出来る。よって一瞬で片付けた。マジックバッグよりもストレージの方が優秀なのだよ。こういう所で差が出てくるんだよな。まあ、多くの冒険者は認めたがらないとは思うけど。マジックバッグとストレージはあからさまに違うんだがなあ。一度認識を刷り込まれると、更新するのが面倒なんだよな。それはなんだってそうだ。認識を改めるには、ある程度の時間がかかると思っている。まあ、俺はそんな事は気にしないけどな。俺にしか出来ない事もあるんだから。ストレージでも戦えるという事は、証明できる。面倒だから、証明する気はないんだけどな。
「……一瞬だったな。ストレージの加護はそういう使い方をするのか」
「まあな。マジックバッグとは別物だ。歩くマジックバッグ呼ばわりをする奴が居るが、それとは根本的に違うのだよ。どちらが優れているという訳ではない。両方優れているんだよ。伊達に加護として与えられている訳ではないと言う事なんだ」
「……まあ、そうだろうな。とりあえずはこれで通れるようになったんだ。次の村まではこちらが先導する。ついてこい」
ついていきますとも。安全にいけるからな。これだけの人数が居るところに攻め込んでくるのかって話だが、馬鹿は来るんだよなあ。




