護衛依頼
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そんな感じで護衛依頼を受けた。期間は30日。1日500ギレットらしい。これで盗賊が出た場合は、別途報酬が出ると。何も無ければ1日500ギレットにしかならないらしい。これが護衛依頼の相場。でも、宿に関しては村長宅を使わせてもらえるし、食事に関しても商人持ちである。なので、駆け出しの冒険者には結構おいしい依頼ではあるらしい。……危険が無ければって話だけどな。
そもそもこの程度の金額で依頼を請けてくれる上位の冒険者なんている訳も無く。大抵が普通の冒険者らしい。確実に500ギレット手に入るんだから、美味しい依頼だよな。30日間の拘束だから、15,000ギレットは確定なんだし。俺にとってははした金かもしれないけど、襲われなければ美味しい依頼だよなあ。襲われなければ、だけど。だって、1日に500ギレットも稼げない冒険者が沢山居るんだからな。
まあ、空≪あ≫いている時間でアイアンゴーレムを滅多撃ちにして、資金を稼ぎ、行商に備えたのだ。……一応メルベルメ錬金術店の店主には、今回の顛末は伝えてある。襲われるといいなあとは言われてしまったんだけどな? 死体の確保は絶対らしいので、何とか確保したいとは思う。死体は貰えるんだろうか? 門で回収されなければ良いんだけどな。
そんな訳で当日。エニュール商会の前に俺を含めて7人の冒険者が揃っていた。……どうも3人パーティーが2組らしい。俺的には強そうには見えなかった。それはお互い様だろうとは思うけどな。俺も強そうに見えるのかって言われると、見えないだろうし。素手にマジックバッグしか持っていないんだからな。まあ、これで俺は準備は万端なんだけど。他の冒険者もやる気はあるっぽいんだよな。簡単に負けてくれるなよとは思うんだけど。
「じゃあ、出発しようか。レイウード君は先頭ね。で君のパーティーは真ん中、君のパーティーは一番後ろで警戒をよろしくね。それじゃあ、出発するよ!」
先頭で御者席の隣に座らせてもらう。……正直なところ、真ん中に配置してもらった方が良かったんだけどな。何処からでも対処が出来るように、真ん中に居た方が良かったのはそうなんだよなあ。
まあ、依頼主の言う事が優先だしね。護衛依頼ってそういうものだから。依頼主が絶対な訳だ。戦うときは命を賭けて戦わないといけない。依頼主が負傷したら負けって感じなんだよな。そんな事はさせないつもりでは居るんだけど。
「いやー、助かるよ本当に。あの子たちも強いんだろうけど、戦ったところは見た事ないしね。1人でも知っている冒険者が居ると安心できるよ」
「そう言ってもらえて嬉しいですが、後ろの6人はそこまで強くはないと思いますよ?」
「それでも素人の僕らよりはマシでしょ? 当初は5人の予定だったんだけど、ちょうど良いパーティーが居なくてね。更に出費が痛い訳だけど、その分は稼がないとね。馬車も5台に増えたんだし、マジックバッグも増やしたからね。いつもよりも買い込んでいけるよ」
「儲けるのは良いですけど、襲われた時の事も考えておいてくださいね? 出来れば安全第一で。戦うのは俺たち冒険者で良いんですけど、馬車はなるべく逃がさないで欲しいです。囮の可能性もあるので、出来れば護衛対象は近くに居てくれると助かります」
「そうなのかい? 普通は逃げてくれって言うと思ったんだけど……」
「今は盗賊団の残党が居る可能性もありますからね。逃げてそっちが本命だった場合、非常に面倒な事になるので。出来るだけ離れない方が良いですね。ただ、弓矢だけは警戒して欲しいです。馬にも当てない様にしてもらわないといけないので。こっちでも対処はしますけど、人数が多いと、どうしても無理な時もありますから」
「解った。敵の人数が多い事を前提に動けば良いんだね」
「そう言う事ですね。後は、盗賊1人につき1,500ギレットって話でしたけど、本当にその額で大丈夫だったんですかって事くらいですか」
「その金額で? ああ、相場なんだよ。その代わり、襲われなかったら払わなくてもいいんだし。相場通りにはしないとね。冒険者の質も下がるだろうし」
「ああ、そういう相場があるんですね。それなら、まあ、安心はできないですけど、解りました」
なるほどなあ。相場が1,500ギレットになるのか。……メギルパンサーよりも討伐報酬が美味しいから、結構気になっていたんだよね。人間の方が手強いとは思うけど、単純な強さだけだとメギルパンサーの方が強いからなあ。人間は連携をしてくるから面倒なんだけど。魔物は基本的には連携はして来ないしな。真っ直ぐ倒しに来るから。そういう意味では、討伐報酬は確かに人間の方が美味しくて当然かとも思うんだけどさ。
……まあ、後ろの冒険者が何処まで戦えるのかは知らないけど、出来れば死なないでほしいとは思うけどな。一応だけど、応急手当て用の解毒薬や塗り薬は用意してあるんだけど、傷を完全に回復してくれるポーションなんてものは無いって話だし。回復魔法は加護の領域になるらしくて、そういう人は大体医者になるそうなんだよ。回復魔法では何ともならない場合もあるんだよな。そう言うときには手術をしないといけないし、それを成功させるためにも回復魔法は必須らしい。まあ、腕が良くなければ破産するだけなんだけど。なんだかんだとメルベルメ錬金術店の店主の顔は広くて、医者にも知り合いは何人かいるらしいからな。……そっちから死体を融通してもらえば良いとは思うんだがなあ。医者ならなんだかんだと入手は可能だろうし。
「とりあえずは移動で15日。売買で15日の予定だからさ。大きな町で2日間しっかりと商売をして、また売買って感じかな。メインは食料品だけど、こっちからは鉄製品も持っていくし、色々と商売をする訳なんだよね。出来れば在庫は抱え込みたくないから、しっかりと売れると良いんだけど」
「鉄製品って武器が殆どですか?」
「いや? 武器は殆どないよ? 日用品が多いかな。包丁や鍋なんかが多いよ。武器は大規模な商人が扱っているからね。それとは競合しない様にしないと。……武器の方が売れ筋ではあるんだけどね。そんなに儲かる所には、既に専属の商人が居るんだよ。僕らみたいな小規模商人では割って入ることは出来ないかな。だから、こうして食料品をメインに扱っているんだよ。食料品が一番左右されにくいから。小規模であろうとも商売が出来るのは確かなんだよね」
ああ、武器なんかは確かに専属の商人が居るのか。そりゃそうなるか。武器の使用頻度は高いからな。それを売るとなると儲かるんだろうけど、そうなってくると競合相手が多くなるのか。食料品に関しては、競合しようが何をしても、最低限必要なものだから絶対に売れるって事なんだろうな。武器は不安定なのか。確かにそうかもしれない。
商人も生き残りがかかっているだろうからな。こんな感じで護衛を付けてでも商売をしないといけない時もあるんだし。今回はかなり特殊な例なのかもしれないけどな。……大きな盗賊団に見つかった場合は、助かる可能性は実は低かったりする。俺が全部連射で倒せれば良いんだけど、多方面から攻められたらお終いだからな。5人くらいの盗賊なら簡単に倒せるとは思うけど、10人以上になってくると、戦略の幅が広がるからな。そういう時は逃げて貰う方がいいのかもしれない。けど、それが罠の可能性もあるからな。何とも言えないんだよな。護衛依頼はいろいろと考えることが多いよ。今は平和で良いけどさ。




