最高の配合と魔眼
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アイアンゴーレム君は、もの凄く安かった。鉄鉱石は叩き買いされるようで、本当に安値でしか買ってくれなかった。討伐報酬はそれを補填するための物であって、アイアンゴーレムの難易度的にそのくらいは払わないといけないよねって感じらしいんだよ。総計では、メギルパンサーの方が美味しい。だから、メギルパンサーを積極的に狩ることにしたんだよ。大体180,000ギレットくらいで安定してきているんだよな。良い感じだと思う。これなら砲弾を結構な数揃えても大丈夫だからな。1回で3つ4つ依頼に出しても、何とか金額的に大丈夫って感じなんだよ。葉巻は安いから問題にはならないし、ちょっとめんどくさい店主って事を除けば、良い店だと思うぞ? ちゃんと話は出来るしな。
けど、今日はちょっと違った。
「いらっしゃい~。待ってたの~。待ってたのよ~。遂に~、遂に出来たの~。かんっぺきな配合が完成したの~。中庭に来てね~。最高傑作なのよ~」
「はいよ。……なんか今日はやばそうな雰囲気だなあ」
いつもとはちょっと違うというか、なんというか。テンションが高い? なんでなんだろうか。何かまた地雷でも踏んづけたのか? そんな事はしてないと思うんだがなあ。何かがあったんだろうとは思う訳なんだけど、なんなのかが見当がつかない。
「これが最高傑作の砲弾よ~。研究の結果~、純鉄に炭素を0.156821%を含ませて~、更に魔石を0.002147%含ませたの~。これがさいっこうに硬くなるの~。魔石をほんのちょっと入れるのがポイントなのよ~。この配合比率にするまでに~、色んな工夫をしてみたんだけど~、これが最高値を叩きだしたのよ~」
「……魔石を配合したのか?」
「そうなのよ~。魔石を入れることによって~、3割程度の強度が上がるのよ~。これは良い発見だと思うわね~。もっとも~、ただの鍛冶師には~、炭素を含まない~、魔石だけを配合した特殊な鉄を渡すつもりなのよ~。でも~、鉄に魔石を含ませていることは~、内緒だからね~? 秘匿するって約束だし~、でも~、私が開発したんだから~、私が卸す分には問題ないわよね~?」
「それは問題ないな。俺が言ったのはあくまでも0.9%の炭素を混ぜるだけの話だし。それ以降の研究結果については自由にしてくれても構わないかな。俺が頑張った訳でもないし。魔石を入れるって発想には至らなかった訳だしな。でも、俺に話しても良かったのか?」
「錬金術師では無いんですもの~。話しても問題無いでしょう~? それに~、特殊な工程を幾つも挟んでいるのよねえ~。他の錬金術師に情報が流れても~、問題無いの~。そもそもそのくらいの腕があるのであれば~、この金属を見ただけで~、真似をされるからねえ~」
「ほう? そんなものなのか。……魔石が含まれているってのは、錬金術師が見たら解る物なのか?」
「普通はそうだと思うわよ~? 魔力を通してみたら解ることだしねえ~」
「そうか。魔力をか。魔力は解らないからな」
「魔力は特殊な加護を貰っていないと感知も出来ないのよ~。仕方がない事よねえ~」
「目で見えたら良かったんだけどな。そういう特殊な目は錬金術で作れないのか?」
「――!? 目を~? 創る~?」
なんというか、こう、な? 某忍者の漫画みたいに、ある血族だけが使える目みたいな。そんなので魔力の流れが見えればいいなあ。なんてな? そんな事を思ったんだけど。
「特殊な目、魔力を見る瞳~?」
「ああ、そう言う事って出来ないのかって思ってな」
あの作品だと、特殊な力で目を移植するというか、自分で自分の目を付け替えるというか。そう言う事をやってのけた訳なんだけど、こっちでは無理か。流石になあ。
「ねえ~?」
「ん? なんだ?」
「人間の目を~、持っていないかしら~?」
「……人間の目?」
「そうよ~。特殊な目を創るにしても~、まずは人間の目を調べる必要があると思うの~。魔物の目は~、簡単に入手できるでしょ~? でも~、人間の目は~、簡単には入手できないと思うのよ~。だからね~? 持っていないかな~、なんてね~」
「流石に持って、……いや、あるな」
そういえば、死体を捨てるのをすっかりと忘れていた。合計で10個の目がある訳なんだが……。この状態のこの人に、渡しても良いと思うか? だけど、こう、魔眼って憧れるよね? 人為的に魔眼が創れたら、それはそれは大発見だと思うんだが? 研究する価値はあるんじゃないのか? 正直、これ以上強くなるには、何かしらの、工夫以上の何かをやらないといけない可能性があったんだよ。ストレージだけで何とかするには限界があると感じていたのはその通りだ。じゃあ、魔眼は? 後付けできるのなら、最強なんじゃないのか?
「ねえ~。あるなら~、提供してくれないかしら~? 魔力を見る目なんて~、そんな面白そうなものを聞かされて~、黙って放置はないでしょう~? 出来るのであれば~、創ってみたいわよねえ~。あるのであれば~、創ってみたいわよねえ~」
「……まあ、良いか。10個なら持っている。それを提供することは吝かではない。ただ、実験の結果については、しっかりと領主様にも伝えるんだぞ? 禁忌になるかもしれないけど、そうなったら素直に研究は止めること。これが守れるのであれば、提供しよう」
「う~ん~? まあ~、良いわよ~。どうせ領主様にもバレる事なんだしねえ~。知っているのかは知らないけど~、定期的に監査が来ているのよ~。そんな非道な事はしないって言うのにねえ~。私は真理を追求しているだけなのよ~」
「後は魔眼が出来たら俺にも試してみてくれ。強くなれるなら本望だ。特殊な目を持っているなんて良いじゃないか。最強の冒険者を目指すなら有りだと思う」
「最強の冒険者ねえ~。良いんじゃないかしら~?」
「なら、俺が思いつく魔眼について、色々と説明をしておかないといけないだろうな。こんな発想があるって事を聞いておいてもらわないと」
魔眼については色々と知っているからな。……漫画の知識ではあるんだけど、それも魔眼と言う事には代わりがない。出来るかどうかは知らない。そんな事は俺の知ったことではない。でも、もし創れるのであれば、俺だって魔眼が欲しい。後付けでもいいのであれば、俺だって魔眼が欲しい。そうじゃないのか? ある種のロマンだと思うんだが。皆欲しいんじゃないのかね?
それが実現するのであれば、かなりの事なんじゃないのか? 今後の事を考えれば、冒険者がお金次第で魔眼を手に入れることが出来るようになる。そんな世の中に出来るんじゃないか。そんな世界が来るんじゃないか。楽しいと思うぞ。俺の知っている限りの事を伝えておこうじゃないか。魔眼が出来た暁には、俺も装備したい。……痛いのは勘弁なんだけど、何とかならないかな? 流石にさ、自分で眼球を捻り出してそこに新しい目を入れるのは、ちょっとどころじゃなく恐怖でしかない。
だから、外科的な何かと、魔力的な何かで、何とかできないだろうか。何とか出来たら良いなあ。なんでも出来るのかは知らない。けど、錬金術にはある程度の事は許されているんじゃないかなと思うんだよな。創れるなら、眼球移植も出来るんじゃ無いのか? 別の加護が必要になるかもしれないが、出来るのであればしてみたい。魔眼使いとか憧れるじゃないか。それこそチート能力として、有りなんじゃないかなって思うんだよなあ。夢は大きく広げた方が良いと思う。出来るのであれば、創ってしまえと思う。出来たら、利益を少しだけ貰えれば良いんだよ。




