殺しの罰
OFUSE始めました。
https://ofuse.me/rukea
ついでにブログも始めました。好きなことをつらつらと書いていく予定。
https://rukeanote.hatenablog.com/
さらについでにTwitterも始めました。変なこともつぶやく可能性があります。関係ないことも沢山つぶやきます。
https://twitter.com/rukeanote
「さあ、準備は出来たわよ。話してくれるわね?」
「はい。まずは今の時間に帰ってきていたんですけど、後ろから追い越すように3人に回り込まれて、後ろから弓持ちに矢を射かけられたって感じです。それを対処しつつ無力化した後に首を刎ねました。今は俺のストレージの中に仕舞ってあります」
「……なるほどね。冒険者証は回収したかしら?」
「これが5人の冒険者証になります」
「……ああ、この子たちね。結構伸び悩んでいた子たちなのよ。でも、そう。盗賊になる前に仕留めてくれて助かったわ。今は大きな盗賊団がこっちの方に来ているから、この子たちが合流していたら、もっと大きな被害が出ていたかもしれない。……ありがとう。止めてくれて」
「いえ、まあ、こっちも始めから殺すつもりで戦闘に入りましたので、はい」
別にお礼をいわれる事じゃない。当然のように返り討ちにして、当然のように命を奪っただけなんだよ。殺すことは無かったんじゃないか。そう思うかもしれないが、そう言う事をしでかしたら、犠牲者は俺だけですまなかった可能性はある。それに、行き過ぎれば冒険者ギルドを追放になるし、そのまま盗賊団にという流れは当然にあり得る。それを未然に防いだと言えば聞こえはいいが、単純に人を殺しただけだからな。褒められることではない。
「現状証拠から判断するしかないけど、この子たちも何とかしないとって思いはあったんでしょうね……。それでこんなことをしでかした訳だけど」
「多分嫉妬でしょうね。俺はここで稼げていましたし」
「稼げていたという事実は知らないはずよ? 冒険者ギルドがそんな情報を出すわけがないもの。でも、そうね。ソロで外で活動する人って稼いでいる人が多いのが現状だから、それと思われたんでしょうね。まだ若いし、何とでもなるんじゃないかって思われたんでしょうね」
まあ、稼げる人がわざわざパーティーを組む必要は無いか。それは確かにそうだと思う。自分一人で何とでもなるのであれば、パーティーを組まないのも1つの手段としてあり得るからな。俺も同じだし。1人で出来るんだから、組む必要がない。組まざるを得ない状況になったら組むだろうけど、そんな状況にならないようにするだけだよな。レベルって言うなんとなく解るものまであるんだ。この世界の人間は、成功者ほど強くなると思うんだよな。俺が毎日それを実感しているように、その成功者も実感していると思う。
「はあ。参ったわね。そんなに日々で変わるような事ではないんだけど。そこまでもう知っているなら仕方がないわね。人間は魔物や動物を倒すことで強くなるわ。それには人間も例外ではないの。強くある人はどんどんと強くなっていくの。だから、大きな盗賊団にも手を付けられないのよね。強い人同士がぶつかって、負けた場合、どんどんと盗賊団を強化してしまうから。でも、まだこっちに来てから10日も経っていないんじゃないの? もうそんなに変わったって確信が持てる程に魔物を討伐してきたのね」
「そうですね。結構な数を倒したとは思います。それなりのお金にはなりましたし。けど、やっぱりそんな事ってあるんですね。村に居た時には知りませんでしたけど」
「普通は実感するのに1年以上はかかるのよ。貴方がちょっとばかり異常なだけね」
異常ねえ。まあ、俺が合気道をやっていた経験が一番大きいんだろうな。体の違和感を覚えるのが早かったのは。どう考えても動きがおかしくなっていったからな。体の動かしやすさもそうなんだけど、今まで出来なかったことが出来るようになる感覚があったんだよ。それが少しばかり怖かったけど、同時に嬉しかった。ああ、レベルが上がったんだなって実感をしたからな。狂おしいほどに嬉しかったんだ。ああ、異世界に来て良かったと思えてしまったんだよな。前世では出来なかったことが出来ると、万能感が占めていた。……だからだろうな。殺すことも躊躇わなかったのは。合気道の道から外れすぎている。これでは師範から、推薦は貰えないだろうな。
「まあ、なんにしても解ったわ。今後何度もあるようなら、貴方を疑わないといけないけど、貴方はそれをするメリットが何も無いものね。悪い事をしないのは、成功者の証よ」
それは違うなと思った。逆だ。成功者だから悪いことはしないのだ。するメリットが無いからな。まあ、戦闘狂なんて奴も居るかもしれないが、成功していたら何も悪事に手を染める必要が無いのだ。そこまでしなくても自分の欲しいものは手に入るから。それがもし、命がけの闘争だとした場合、悪事に走る可能性があるが、そんな奴は稀だと思うぞ。誰だって死にたくないんだからな。命がけの闘争を好むのは、狂人しかいない。
事情聴取もそれなりで終わった。殺したことも不問で終わった。結果としては良かったんだろうけど、罰が欲しかったのかもしれない。明日は休みにしよう。流石にこの精神状態で魔物との戦闘を行うのは危険だからな。頭の中をスッキリとさせる必要がある。そうだな。明日1日は、買い物にでも出かけるか。お金もあるんだし、そうしよう。
「それじゃあ解放するわね。盗賊を未然に討伐できたことは嬉しい事よ。気に病む必要は無いわ。遅かれ早かれ、犠牲者は出ていたでしょうしね。さて、それじゃあ換金するから木札を2枚出して頂戴」
「2枚? でも良いんですか?」
「良いのよ。報酬も出ないと。後、死体なんだけど、処分はおまかせするわ。問題ない所で破棄して頂戴。くれぐれも都市の中で捨てては駄目だからね? 変死体だと思われても困るから」
「それは、当然ですけど。メギル鉱山にでも捨ててきます」
「そうした方が良いわね。なんにしても恨みを買う事もあるから、気を付けるのよ? 冒険者ギルドとしては、まだ連続犯として罰する気はないし、そもそも稼いでいる子だしね。こんなことは普通はやらないものなのよ」
「その、恨みを買われたら、どうしたら良いんですか?」
「その時は殺しても良いわよ。そりゃあ何も無いのに殺すのは問題だけど、何かあったら殺すのは1つの手段でしょう? それを禁止していたら、冒険者が居なくなるもの。貴方が思っている以上に、冒険者はもっと殺伐としているのよね。何も貴方が特別なんじゃないの。こういう事件は年に何回もあるのよ。大体が、稼げなくてイライラしていたって感じかしら? 気にしすぎるのも問題なのよ。ある程度はあることなんだから、気分を変えないとね。でもそうね。明日くらいは休みにしたら? 何が何でも稼がないといけない訳では無いんでしょう? 息抜きも大切よ?」
「そうですね。何も言われなくても明日は休みにするつもりでした。流石に今の状態で魔物を相手にするのは怖いですし。それと、鍛冶屋さんを知りませんか? 腕の良い鍛冶師に依頼がしたいと思っているんですよ」
「鍛冶師? そうねえ。武器が欲しいなら東の大通りの……、ちょっと待ってて。地図を取ってくるわね。そのついでに換金もするから、待っててよね」
明日は武器を探しに行こう。良い武器が欲しいんだよ。ストーンバレットでは限界があるかもしれないからさ。出来れば、もっと貫通力のある武器が欲しいんだよ。案は既に頭の中にある。それを作って貰うだけなんだよな。まあ、ちょっと大きくて、重いものなんだけど、作れないことはないとは思うんだよな。……変な依頼だとは思われるかもしれないけど。それはそれとして諦めるしかないだろうからな。




