第7話 街の重鎮
第7話 街の重鎮
配給を食べ終わり、アジトに決めた家に着く。当たり前のようにアンは一緒についてきてくれて居る。一方的に協力をお願いしている立場でなんだが、知らない大人に着いていっちゃいけないと落ち着いたら教えてあげようと思う。
3人組が走って家にやってきた。
『おばさん!決めたぞ!!』
『おばさんって!!こちとらピチピチの16歳じゃバカヤロー!!!!!』
『えっ…すいません!』
2回言われただけで怒るというのは我ながら大人げないと感じた。
ランカ達は協力してくれることになった。理由としては予言の煮込みハンバーグとアンが私にくっついているのが理由らしい。アンを仲間だと思っている3人にとっては一番の理由なのだ。
協力してくれるという事でお互い自己紹介をすることになった。
『…ランカ』
3人のリーダー。髪は茶色で物静かそうにみえるが、気が強そう。まだどんなキャラか見当が付かない。
『俺はキリトだ。』
髪は少し紫色。ドジっ子そう。おばさんおばさんというのがこいつだ。
『僕はシンだよ』
黒髪で目が細目でとても優しそうな少年。一緒に居るだけでだんごが食べたくなる安心感。
『私はスベア。これからの話をするわね。』
一人でずっと考え込んでいた作戦会議も今は協力できる仲間が出来た事に喜びを感じる。
『嘘ついてるのはなんで?』
『えっ?』
『エリザベス様だよね』
『なんでわかったの?』
まさか、また昨日のロールキャベツ状態で歌ったあの歌が原因なのかと思うと恥ずかしさが込み上げてきた。
『僕は人の名前とか能力とかが見えるんだ』
これはまさにチートスキル”鑑定”ではないか!神様は私に味方をしてくれているのかもしれない。
今まで3人組と出会ってから、ランカの目線が気にはなっていた。ずっと目を離さず見つめてくるその視線はスキルを使っていたようだ。
この世界には能力を持つものと持たざる者がいて、その能力の有無で差別があることが現状である。このスラム街ではほぼその能力がないものがいる中、能力を隠し自らこの地に来た人間もいるのである。
『バレバレだぜ!おば……エリザベス様』
キリトに睨みを利かせながら話を続ける。
『アンには話していたのだけれど、君たちにも話すね。』
鑑定のスキルでもうバレバレなのだからアンにした話を再びすることにした。
3人にはアンを守ることにも繋がることも伝え、理解をしてくれた。
『でっなにからすればいいの?』
『ランカ、ここにいる能力者は何人いるの?』
『10人ぐらい、あと…目覚めそうなのが5人』
『目覚める?能力が目覚めるの?』
前例がないわけではないが、エリザベスの16歳の人生の中では能力が目覚めた話は聞いたことがない。
『アンの側にいると成長するんだと思う。』
さすが、聖女の力である。こんな力、他国に知れ渡れば戦争で奪い合いにもなりそうで怖い。
能力の開花する前のステータスには蕾の形が表示されているそうだ。ランカは開花した一人でキリトは”吸音”、シンはまだ蕾の状態だという。ランカにスラム街の人の能力の種類をリストアップしてもらうことにした。せっかくの情報を口頭で聞いた所で覚えられるか心配だ。
アン 浄化、? ロト 移動
ランカ 鑑定、? アンリ 通信
キリト 吸音 ヒユウ ?
シン ? ユウト ?
ジョン 隠蔽 クラウス ?
ドレーク 製造 カズマ ?
ウォルト 武術
セシル 剣術
スラジイ 予知
エリザベス 火魔法、インベントリ、?
聞いた限りで結構使えそうな能力ばかりである。そして、私にも蕾が出来ているという事は能力が開花するかもしれない。とてもワクワクが止まらない。
『まずはさー、スラジイに会いに行ったらいいよ』
『スラジイ?』
『そう!ここの事は何でも知ってるし、入ってきたやつのことも覚えてる。色々教えてくれるとおもうぜ』
『みんな、私の事は内緒にしてほしいの!だからこれから私を呼ぶときはスベアでお願い!』
『うん!』
みんなの提案もあり、スラジイの所に行くことにした。予知の能力という事は正直私がエリザベスだという事はバレていそうではあるが、先が見える能力の情報は喉から手が出るほど欲しい。
街の一番奥のボロボロに見える建物に着くと私以外の4人は中に入っていき、遅る遅る4人についていった。一緒に30代ぐらいの男性2人も住んでいるようだった。
『おお、お前たちか。』
『新しい住人を連れてきたよ』
『どれどれ、、』
ボロボロのベットから起き上がり、私に目を向ける。
『団子を隠そうより跡隠せ』
これは日本のことわざだ。このおじいさんは転生者なのか、私が転生者だとわかっているようだ。私以外のここにいる人たちは何を言ってるのだろうという不思議な顔をしている。
『今、お主がやろうとしていることに協力しよう。ただ、全ては無理じゃ、半分ぐらいならええんじゃないかの』
『はい、わかりました。』
この計画はまだ4人にも話していなかったのにこのおじいさんには予知能力でバレていたらしい。
『スベアお姉ちゃん、大丈夫なの?』
アンが心配そうにこちらをみていた。
『全部上手くいく』
笑顔でそう返した。
『よし、さっそく取り掛かろうかの~、ジョン、ドレーク準備を』
『はっ!』
準備が出来たら呼ぶと言われ、スラム街の中心の所で立たされていた。
『お嬢ちゃん、わしらが中に入ったら始めてええぞ。』
『…わかりました!』
『ファイヤー…、ファイヤー…、ファイヤー…、ファイヤー…、ファイヤー…、ファイヤー…、ファイヤー…、ファイヤー…、ファイヤー…、ファイヤー…』
私は次々に家に向かって魔法を放っていった。他の住人達が慌てて外に出てきて悲鳴を上げているが、気にも留めず、魔法をうつ。
『何事だ!!』
駐在所の騎士たちがこちらに向かってきた。中にはロバートもいるだろう。
『エリザベス!!!』
ロバートの叫び声と私に対して暴言、罵倒、泣き声が飛び交っていた。
『ご機嫌よう』
私は最後に貴族としてお辞儀をし、炎の燃え盛る方へと歩いて去っていた。




