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転生しない  作者: めれ
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第5話 引き継がれる想い


第5話 引き継がれる想い



 アン、その名前はエリザベスの実の母と同じ名前である。

アン・ブーリンは王宮でメイドをしていた。そして、フラン国王に見初められ、エリザベスが誕生した。恐らく私を産んだ後に王妃様の指示のもと裏でスラム街に追いやられたのであろう。


『ジョニー・デップ?』


『全然気にしないで!アンちゃんは何歳なの?』

アンちゃんの目線までしゃがみながら情報収集をすることにした。


『9歳』

ボロボロのtシャツ、ズボン、髪もぐしゃぐしゃでみすぼらしい見た目をしているが、髪の色は綺麗な金髪でとても澄んだ水色の瞳、物語の主要キャラクターなのは間違いない。そして、今開花したような”浄化”の魔法。聖女に間違いない。


『9歳なんだ!お姉ちゃんはね、家がなくなっちゃってここに来たんだ。…アンちゃんはどうしてここにいるの?』

人とコミュニケーションをとる際大切なこと、

その1 質問したことに対してオウム返し・相づち

その2 質問攻めしすぎない

その3 しっかり相手の目を見る

その4 声のトーンは高めに

その5 身だしなみであるが今は無理である…


陰キャである私には予習のように勉強したコミュニケーションの基本が頭に入っているが、現実世界では友達は少ない。というかいない?


『スラム街で産まれたの』

 聖女アンはここで産まれ、ここで育っていた。アンを産む際にお産の手伝いをしたのが、エリザベスの母だった。メイドの仕事をしていたおかげで出産などには詳しかったそうだ。

聖女アンの実の母親は出産後に亡くなってしまったらしい。名前はエリザベスの母がつけてくれたそうだ。

母が自分と同じ名前をこの子につけたということはいずれ私もここに来ることを予測してあえてその名にしたのかもしれない。母は数日前に亡くなったらしい、スラム街の子供たちをかばって騎士の人間に殺されたそうだ。もう少し早く来れていれば生きている母と対面出来たと思うと何とも言えない喪失感にかられた。


『アンちゃん、ごめんね。家がなくなってしまったのは嘘なの。お姉ちゃんのお話を聞いてくれる?』

 ここまで話してくれたこの子に自分の事をすこし話すことにした。私は今浄化されたアン・ブーリンの娘だという事、私は国の使いでこのスラム街を素敵な街に変えること、期限が3か月程しかないこと、国の人間から狙われていること。自分が王族の血縁であることは話さないことにした。アンの人柄をもう少し理解してからでも遅くはないと思うし、この子はまだ9歳なのだから他のスラム街の人間に話す可能性がある。話し終わるとアンはにっこり笑っていた。


『お姉ちゃんの瞳の色がね、アン叔母さんと同じなの、信じるよ。』


『ありがとう……アン協力してくれる?』


『うん!!』


 スラム街に入ってさっそく仲間が出来たのは幸先良いスタートである。そして、聖女ともなればこれから国がしっかり育て、守らなければならない存在。お父様が退位した後、あのおバカのお兄様の下でこんなに可愛い少女を任せることになるかと思うと不安しかない。


『お姉ちゃん、お歌上手だったもんね』


『歌?なんの?…』

つい先ほど”私はエリザベス様だ!”を歌っていたの忘れていた。アンは声でもう私だと気づいていたらしい、隠していてもバレていたのだ。顔はみるみる赤くなって、髪の色に近くなっていた。

その姿をみて、アンはくすくすと笑っていた。



『エルルルルェガンンンンンンンヌャスッ!!!』

二階の天井が崩れ落ちると共に3人の少年たちが私に向かって飛び降りてくる。エリザベスの頭目掛けてチョップで攻撃しようとする姿に微笑みながら意識を失った。




ーーー『チョップって!木片とか石とかなんかあるやろ!』

あれ、また現実世界の自宅がみえる。前回は夢だと思っていたが、家には城での謁見の際バレないように通り道で盗んで…いやいや!今までの慰謝料としてもらった数々の美術品たちが綺麗に整理整頓して置いてあった。もしかして、インベントリは現実世界の自宅に入る分だけ入るという事なのか。容量についてはこれから試していこう。

 ただ、そうだとしても前回の時に映っていた私は誰なのだろう。

本物エリザベス?神様的な私を転生させた奴?そちらについては探りようがないのでまた今度にしよう。

ふと、テーブルの上をみると転生する前に見ようとしていた新刊の漫画の封が開いていた。

呼び戻されるような感覚でだんだんこの空間から自分が消えていくような感じがした。



『なんで、封印が解かれているのよーー!』

新しい新品の漫画を誰かに読まれていることに途轍もない憤りを感じながら起きた。

『お姉ちゃん、よかったー』


『アンちゃん、あれ?少年たちが降ってきて』

とても体が軽い、この怒涛の1週間ぐらいの疲れが癒えた気がした。お風呂に入ってコーヒー牛乳を飲んでマッサージまでしてもらっているぐらいの体の爽快感。どうやら、アンがお祈りをしてくれていたみたいだ。

あたりを見回すと少年3人も端の方に居てバツが悪そうにこちらを見てくる。


『ほら!謝って!』


『い、一応は悪いとおもってる……ごめん』

子供が頑張って謝る姿に萌えてしまいそうになる。


『なんともないから大丈夫だよ』

3人組は謝って恥ずかしくなったのか逃げるように出て行った。


『あの子たちは?アンちゃんのお友達?』


『ランカはね、お友達でさっき話したアン叔母さんの…』

母が守った子供達という事だった。チョップの件は私がこの空き家に入って、その後アンが入っていくのも見えたのでアンの事が心配で助けに来たそうだ。とても優しい子達である。


『アンちゃん、あの子達もう一度呼んできてもらえる?』

考えが固そうなおじさん・おばさん達よりもまずは素直そうな子供達から仲間を増やしていこう。

明日には誰かしらこの街に危険な人物が来るかもしれない。なにより、母が守った大事な子供たちの命を危険に晒したくはない。出来る限りのことはしようと母に再び祈りを捧げた。

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