第45話 本来の距離
第45話 本来の距離
『えーー!』
『お姉ちゃんがエリザベス様じゃないってこと?』
『やっぱりか。』
皆、様々な反応をしていた。
『そういえば、鑑定しても名前はエリザベス様になってるけど(?)が付いてたんだよな。』
ランカの鑑定の私の名前の(?)はとても気になるが、それよりもロバートだけが無言のままじっとこちらを見ていることが気になってしまう。
『私の名前は保家とく子と言います。私はこことは別の世界で暮らしていて、いつも通りに部屋で就寝して起きたら急にこちらの世界に飛ばされてきたの。
メアリーのしゃべっていた言葉の一部でこの世界では聞かない言葉を話していた……メアリーもまた私と同じ世界から来た人間だと思う。そして、ここからは仮定なのだけれどもメアリーはこの世界の事を前から知っているように話していることからこの世界は私が住んでいた世界の本の物語なのだと思う。だから、ヘンリー王子が例の娘という発言から聖女であるアンの存在を知っているのではないかと思う。』
日々を過ごしていく中で皆を偽って過ごしている罪悪感を感じないわけがなかった。ただ、この世界に来てから元の世界の話をすることを考えたことがなかった。だが、メアリーの発言の説明をするためには私の世界の話と恐らくこの物語が小説か漫画である説明を背ざる負えなかった。
『ん、ちょっとまって!聞きたいことが多すぎる!』
『この世界が物語の中の世界だってことなのか?』
ここで生きている人達にとってここが日常だというのに急にこの世界は物語だと言われても逆の立場でも意味がわからないと思う。私は”吸音”の魔石の音を再び再生した。
……しゃべれない?あれ、本では喋っていた気がするんだけど。……
『メアリーのこの発言からこの物語は文字か絵で記されている一冊の本でみんなはその物語の登場人物なのだと思う。ただ、その物語を私は憶えてない。……』
色んな漫画を読んできた私にとってこの物語は自身の記憶には存在しなかった。ただ、私には”解離性健忘”という記憶に欠陥がある。覚えてなくてもしょうがない気はするが一緒に過ごしていた皆というこんなにも好きなキャラクター達の事を覚えていないのはどこか寂しさを感じた。
『じゃあ、姉様は…エリー姉様はどこにいるのですか?』
『無事だよ。私の世界で生きている。』
その言葉にエドとロバートは少しホッとしていた。実の姉ではないとは言え、幼少期から一緒に過ごした姉弟でエリザベスの記憶の中でもエドはとても仲睦まじい関係であることが伺える。そして、ロバートもまた幼馴染としてこれまで一緒に過ごしてきた日々はエリザベスにとって、とてもキラキラ輝く思い出ばかりだった。心配に思うのは当然である。
『ただ、元の世界に帰る方法がわからなくて……』
『お姉ちゃん、帰っちゃうの?』
『アン……』
『元のエリザベス様を慕っていたロバート様やエド様にとっては戻ってきて頂きたい気持ちはあると思いますが、私たちにとっては今のエリザベス様しか存じ上げておりませんので別れとなると悲しく思うのは当然です。』
アンは私の服をギュッと握り、寂しそうにこちらを見ていた。他の皆を見てもなんとも言えない悲しそうな表情をしていた。シェードの森から一緒の皆にとって、エリザベスではなく保家とく子と過ごしてくれた時間に信頼関係が出来ていたことにエリザベスには悪い気持ちがあるが喜びを感じてしまった。
『まーこの世界が物語ってのはしっくりこねーが、とりあえず進むしかねーんだろ。じゃあ、やることやるだけじゃねーか!』
重くなりつつある雰囲気の中、ドレークさんは本題を切り出してくれた。
『そうですね、まずはからアンさんを守ること・期日までにリスタ村の開拓を進めること・そしてこちらにいる保家とく子様を元の世界に帰すこと………でよろしいでしょうか?』
エドの発言にはだれも反応することはなく、話し合いは皆の心にもやもやが残る形で幕を閉じる形となった。
そして、当たり前のようにエドとロバートとの距離が遠くなったのを感じた。




