第3話 スラム街
第3話 スラム街
謁見の後にロバートと騎士達に連れられて、スラム街に向かう。
追放と言っても何か領地に戻り、支度させてもらえる時間は頂けず、パーティーの時に着ていたドレスで
水浴びもさせては頂けないまま向かうのでとても臭いが気になる。
『よかったなー、一命はとりとめて』
ロバートがにっこり微笑んでくれていた。
スラム街までは王都の中心部より離れてはいるが、入口とは真逆の他国の人や商人には目に入らない所にある。純粋に裕福な人間たちがゴミの掃きだめのように捨てられた人、宗教的な部分でアテネを崇拝しない人、人間の汚い部分の形になった町となっている。
『このまま、に…』
『ロバート!スラム街には騎士たちが常にいるの?巡回はどれくらいでくるの?』
話を遮るように情報収集を始める。恐らくロバートが言いかけたのは逃げる提案だと漫画オタクの私は察知したが、このまま逃亡ルートに行ったとてこの物語はハッピーエンドには向かうことはないだろう。
それに王妃様の今後の動向も気になる。今は確実にエリザベスが死なないように作戦を練るしかないのだ。今後の予想エピソードはこうだ。
・ロバートと逃亡ルート(恐らく王妃様の追っ手に逃げ回ることになる)
・スラム街死亡ルート(王妃様又はスラム街の人たちに殺される)
・スラム街で一生終えるルート
・スラム街から素敵な街へ劇的ビフォーアフタールート
私が目指すのは一番最後だ。その為にはこの移動時間こそしっかり今後の生末を考えなければならない。
『えっと……巡回は毎日あって交代制だ。俺も当番の時があるから何かあったらすぐに声かけてくれ。』
『ありがとう!ロバートと会えるのとっても安心する。』
そして、恐らくロバートはエリザベスの事が好きである。お決まりな展開だ。
歩きながら徐々に街並みに変化が出てきた。建物の老朽化が激しくなってくるにつれて、町の活気も住人達の着ている衣服もひどい有様である。
『ここだ』
『ロバート、ここにいる住人の方々に挨拶に回りたいのだけど付き合ってもらえるかしら?』
『いいけど100人ぐらいいるぞ?だいじょうぶか?』
『大丈夫』
ここで味方にできる人間とそうでないものを見極める必要がある。仲間を作るのだ。
挨拶を始める前に子供たちが群がってきた。
『お姉さん、頂戴。』
『ごめんなさい、これからここに私も住むことになるから挨拶に来ただけなの』
『お貴族様がなんで?』
にっこり微笑みだけ返し、エリザベスは扉のない建物に入り生死を問わず一人一人に挨拶をしていく。向こうに覚えてもらうはもちろんこと、こちらもしっかり覚える必要がある。相手の対応などどうでもいいのだ。
一回りをし、騎士たちの駐在所の前に着く。
『ふー、ロバートお願いがあるの短剣を貸して欲しいの』
『なにをするんだ!まさか!』
『ロバート様!それはさすがに!』
周りの騎士たちもざわつき始める。私が自殺を図ろうとしてるのではないか、やけを起こして暴れるのではないかと考えているのだろう。
『大丈夫みなさんが思っていることは何もしないから。安心してください』
少し緊張感がある中、短剣を受け取り、その剣で貴族ご自慢の綺麗な赤い髪の毛を切り落とし短剣をロバートに返す。
騎士たちは唖然としている。そんなことは気にも留めずに器用に素敵な赤と黒のドレスを脱いでいく。
『エリザベス、やめろ!お前らも見るな!』
ロバートの叫び声も届くこともなく、肌着にショートカットの女の子が完成した。
騎士団の皆は頬を赤らめ、中に鼻血を出す人もいた。エリザベスを国一番の美女と謳われてもおかしくない美貌とスタイルをしているので無理もない。
『ロバート、お使いを頼まれてくれない?』
僕は小悪魔でこう言った。




