第33話 エリザベスの手紙
第33話 エリザベスの手紙
ーーーーーとく子の家ーーーーー
天高が家を出た後、テレビの画面を見るとシェードの森で各々が出陣の準備をしていた。
出陣まで少し時間がありそうだったので元の世界にはない化粧品や髪留め、服などに身に纏い、すぐ近くのコンビニへ買い出しに行くことにした。
普段は保家とく子として過ごさなければならないので本物のとく子が着ている服を着ている。クローゼットに入っている服はパーカー、トレーナー、Tシャツ、ジーンズといったシンプルな物しか入っていない。なので、ちょっとしたお出かけの際はエリザベス自身が好きな格好をして出かけていた。今日はエリザベスの瞳の色に近い緑色のジレとパンツに白いシャツを合わせ、琥珀色のネックレスをかけていた。
舗装された道路や電柱、街頭の電気による灯りはこの世界の化学技術の賜物であり、元の世界と比べると月とすっぽん感が否めない。変な人が多いというが夜道を歩いていても野盗が出てくることはないし、ここは本当にとても平和な世界だ。
『いらっしゃいませー』
コンビニに入り、数日分の食料をカゴにいれ、眠らないようにエナジードリンクも購入する。
『ありがとうございました。…』
とく子とすれ違うと皆が後ろを振り返り、その姿に見惚れてしまっていた。しっかり化粧や身なりを整えれば本物とく子は野暮ったい姿を想像出来なくなるほど美しいなるということだ。とく子になくてエリザベスにあるものは《自信》なのかもしれない。
家に着くとテーブルの上には1枚の紙が置かれていた。その紙はこの世界のものにしては色が霞んでいて、しわが目立つ材質。今のとく子には紙を見るだけで懐かしさを感じるものだった。
『これは……』
とく子は紙を持ちあげ、買いてある文字を読むとすぐに天高に電話をかけた。
ーガチャッーー
『なになに、なにかあったの?』
インターホンを鳴らさずに家に入ってくる、天高は家主の了承も得ず、ずかずかと靴を脱ぎ上がってくる。
『お部屋に上がる時はインターホンぐらいしてくださいな。』
『ごめん、ごめん!夜中だからお隣さんにうるさいかなって。』
『これを……
とく子さん、やはり私がこちらにいることに気が付いているみたいです。』
ーーーーーーーーーー
| インベントリみんな |
| つかえる |
| てつだって |
| おねがい |
ーーーーーーーーーー
文字は土を水で溶かして書いたようで紙の表面を触ると土の粒がざらざら手に触感が残る。
『さすが、漫画脳。』
『天高さんも手伝ってくださいね♪』
満面の笑みで天高の腕をホールドするとく子の力はとても力強かった。
『いやいやいや、僕こう見えて忙しいからさー』
必死に逃げようとするが逃がしてくれる様子はとく子にはまったくなかった。
ーーーーー数時間後ーーーーー
『でっ次は誰にどれを渡せばいいの?』
『ランカさんに”移動”の魔石です。』
『違います!その魔石は”吸音”と”拡声”のものです。天高さんは土の処理でもなさっててください!』
『えーー!そんなーーーーー……』
エリザベスは"インベントリ"の能力を他のみんなが使えるように力を込めた魔石をみんなに渡していた。その中でもダーウィンの"穴掘り"の土がこれでもかという具合で部屋に入ってくるのでアパートの外に運び出さなければとく子の部屋が土だらけになってしまう。その為、天高は土を袋に入れて何度も往復して土を外へ運び出していた。服が汚れるのが嫌なのかとく子は本物とく子の服に着替えていた。
『はあはあはあはあはあ、疲れたー…』
土の搬入が落ち着くと天高は部屋の空いてるスペースに仰向けに寝転がり、息を切らしながら天井を見上げていた。
ピンポーーン
『お邪魔ぁ―ってあれ?なんで倒れこんでんの?』
ワイドシルエットの水色のトレーナーとボトムスに身を包み、弓のマークが入った黒いキャップを被った、イケメンの男性20代ぐらいの男性が入ってきた。
『ァポロ…ン、お疲れさ…ま……』
『おい、ジン、ジン!しっかりしろー!』
アポロンという若い男の人に伸ばした手は届く事なく、天高は力尽き、寝てしまった。その間、2人の存在を無視するようにとく子はエナジードリンクを飲みながらしっかりエリザベスの為に働いていた。




