第28話 備えあれば憂いなし
第28話 備えあれば憂いなし
悪役チームが暗躍していることは想像がついたがスラム街に戻れば、悪役以外の市民達が私のことを捕まえにくるという逃走中が始まろうとしていた。
『戻るには危険過ぎるな…』
『何かいい方法はないかな?』
ここにいるメンバーが戻れば騎士達から尋問を受けることは間違いない。悪いことをしたわけでもないのになぜここまで狙われなければいけないのか。悪役令嬢というものは辛いものだ。
『どうせ狙われるなら悪役チームと接触してみましょうか。どうかな?』
あちらさんは私の命が喉から手が出るほど欲しいらしい、それであれば情報が欲しいはず。こちらから偽の情報を伝えて撹乱させるというのがいい案かもしれない。
『お姉ちゃん、危険じゃない?』
『逃げちゃダメだ。どうせ、いずれはぶち当たる壁なのよ、大丈夫。変装とかすればバレないし…ね。』
変装して悪役と対面するのはいいが、対面した時の事を考えるとみんなのスキルが必要不可欠になってくる。その前に各メンバーのスキルをチェックしておきたい所だ。その上でどのように作戦を練るのか考えよう。
現在のスキルを数日前からアインツ家とのやり取りの際にゲットした紙とペンに記入しておいた。そして、この半月で分かったことはスキルが芽を出す条件として私との接触が多い人物がスキルアップしていることがわかった。また、ランカの”鑑定”のスキルが上がったことでスキル名だけではなく、そのスキルの効果範囲が詳しくわかるようになった。例えばアンの”癒し”の能力でいうと一度に癒す力が1人から3人になるような感じで説明が詳しくわかるという。そして、ウォルトさんが”師範”のスキルを得たことによって、指導を受けた人物には”武術”のスキルが付与されるようになった。
『どうにか今のスキルだけでもⅤに到達出来ればいいのに…』
『出来るかもしれませんよ。』
クラウスのスキルは”成長”、匠チームで活動しているが農業の生産に際して能力を使ってくれたが、植物は驚くほどに実ったのである。
『スキルを”成長”させるってこと?』
『まず、エリザベス様からやってみますか。』
クラウスがエリザベスの手を握り、魔力を注ぐとエリザベスの体が暖かくなり、徐々に目が霞んでいく。水の中に浸かっているような感覚で意識が遠のいていった。
ーーここはまた、私の部屋だ。
部屋には誰もいない。テーブルの上にはメモが書かれている。
現在のスキルメモ
●板前チーム
アン 浄化Ⅱ、癒しⅡ
ランカ 鑑定Ⅱ、武術
キリト 吸音Ⅱ、瞬足、武術
シン 暴食Ⅱ、調理、毒無効、石化、麻痺、眠り
ヒトラ 毒魔法、不死
ウォルト 武術Ⅱ、師範I
セシル 剣術Ⅱ、鉄壁I
エリザベス 炎魔法Ⅱ、インベントリ、レンタルⅡ
マリン 水魔法
ライラ 裁縫
ウララ スタイリスト
●匠チーム
ドレーク 製造Ⅲ
ジョン 隠蔽Ⅱ、武術
スラジイ 予知
ロト 移動Ⅲ、武術
ヒユウ 感知、武術
ユウト 波動弾、武術
クラウス 成長Ⅰ、武術
カズマ 強運、武術
チャールズ 効率Ⅰ、武術
ダーウィン 穴掘りⅡ、農業、武術
●スラム街側
アンリ 通信
●アインツ家
アレス
ディーチェ
エド
これは今のスキルの内容だ。やはり、ここにいるのはエリザベスさんだと確信した。そして、何らかの方法で私たちの現状を見ているのだ。
ーーきっと、あなたを救って見せるからーー
『……ちゃん…お姉ちゃん!お姉ちゃん!』
アンが心配しながら私の体をゆすっていた。
『アン、いつも心配かけてごめんね。…私どれくらい寝てたのかな?』
起き上がると頬には涙が流れていた。
『エリザベス様!!』
クラウスが血相を変えながら走ってくる姿をみて、急いで涙を拭く。
『申し訳ございません!まず、別のものに試せばよかったですね』
『平気よ、寝てただけだし。私のスキルってどうなったのかな?』
寝ている間にランカが”鑑定”を行うと私の炎魔法・レンタルはⅢに成長を遂げていた。寝ている間に他の人で試してみたが私のように寝てしまう人間は居なかったそうだ。
『10人にスキルをかけることが限界でした。エリザベス様にかけるのは危険を伴う恐れもありますし、別の物にかけることにしますね。』
『いや、大丈夫よ!クラウス、私を含めて明日もたのめるかしら?』
『かしこまりました。』
これから、みんなのスキルの底上げとスラム街へ行った時の作戦会議を皆と練っていくこととなる。




