第11話 うまいまずいは塩かげん
第11話 うまいまずいは塩かげん
空の色がオレンジになり、湖から魚を取ることが出来た板前チームは拠点に戻り、調理の準備を始める。
『お姉ちゃん、”匠”と”板前”ってどうゆう意味なの?』
アンからの言葉にこの世界では使わない言葉を使っていた事に今になって気づかされた。
『えーっと…匠は…すごい人で板前は美味しい料理を作るすごい人かな。』
詳しく説明するとこの世界に影響を及ぼしてしまうかもしれないと思い曖昧に答えた。
『美味しい料理!!』
シンの頭の中には食べ物の事しかないらしく、黙々と木に魚を刺していた。
匠チームで端材になった木と木くずを火魔法で燃やし、焚火の準備をする。魚はその焚火の炎で焼き、きのこや食べれそうな雑草達は木の皿の上から火魔法をガスバーナーのようにかけながら混ぜて焼く。
『完成!!!』
『よし、みんな食事にしましょ!』
『おっ魚じゃん!』
『美味そう!』
『なに、これ…』
魚は上手にアユの塩焼きのように出来たのだが、きのこや雑草の炒め物は皿自体が焦げて黒くなっていた。
『いただきます!』
『ん』
『うんっ』
『…』
『味しない』
魚を一口食べ、全員が同じ反応をしていた。
『やっぱり、塩とか味付けできるものが欲しいよね』
味のしない食事でもこれから毎日動くことを考えれば、しっかり食べなければならないし、体の事を考えると塩も必要だろう。
そして、今回の件で調理道具も必要だとわかった。
『みんな、食べないの?』
シンはとても悲しい顔でみんなを見つめていた。きのこと雑草の炒め物にはみんな手を付けず、残ってしまっていた。エリザベスの頭の中でお残しは許しまへんでと誰かがいう声が聞こえた気がした。
『よし、私は食べるわよ!!』
勢いよく平らげ、喉を通すがその味は苦みの極みのような一品に仕上がり、今まで食べてきた中でもダントツで1位になるほど不味く、エリザベスは口を手で押さえながら湖に走り、水を飲みに行った。
『……まー今は食べれればなんでもいいけどね』
要は不味くなければいいという事を遠回しでシンを傷つけないように大人たちは伝えていた。
『お姉ちゃん、大丈夫かな。』
『……』
シンが少し残っていたきのこと雑草の炒め物を見つめていた。
ーー王城の廊下にてーー
ロバートは本来スラム街の警備の当番ではなかった為、エリザベスの一件が終わってから城に戻ってきていた。
『ロバート様、エリザベス様のこと誠に残念でございました。』
廊下ですれ違ったのはメアリーだった。ロバートがエリザベスの幼馴染でエリザベスへの想いも知っているようだった。
『……メアリー様、ごきげんよう』
唇を噛みしめながら、改めて婚約者筆頭となったメアリーに丁寧に挨拶をするロバートの手には焼けたエリザベスのドレスの端切れが握りしめられていた。メアリーはゆっくりとロバートの手を握り、二人の顔の所まで上げる。
『いつでも相談になりますので声掛けてくださいね。』
『仕事に戻ります。失礼します。』
メアリーの目は微かに紫に光っていたが、ロバートが離れるとその輝きは消え、元の水色の瞳に戻っていた。ロバートが見えなくなってから汚いものを払うように手を叩く。
『………まあ、いいわ!やっと、消えてくれた!うふふふふ、ははははははははははは!!』
ーーーーー
『気持ち悪かったー……』
エリザベスはなんとか吐きもせず、湖の水を飲み戻っていた。
【聞こえるかい?】
拠点のメンバーは頭の中に響く声に驚く。
『エリザベス様、スラム街の方に残した仲間もおりまして名前はアンリと言います。彼女は通信のスキルの所有者、あちらの様子を伝えてくれるようお願いしました。』
スラジイが側に来て説明してくれた。なんでも、伝えたい相手の頭に声が届くという能力だ。この携帯のない世界にはとても重宝するスキルではないか、本当能力万歳である。ただ、アンリさん側の一方通行でしか、連絡することが出来ないのが難点だ。
【みんながいなくなってからのこっちの様子を話すと騎士団が念のため、しらみつぶしに焼けた所を色々捜索して、今いるスラム街の奴らに聞き込みをしていた。そして、見慣れない奴が10人ぐらい入ってきた。明日の見張りの担当は騎士団長様がいらっしゃるらしい。以上。】
アンリさんの言葉にセシルさんがビクッと震えていた。
『あのきな臭い団長が見張りなら戻るのは危険だなー』
森で散策していた時にセシルさんの剣術を何度か見たがとても強く、あのセシルさんが震えるくらいの人であれば相当な腕前の方なんだろう。
『それに10人も見慣れない人が入ってきたのも気になりますね。鉄や銅、調理道具とかも欲しかったのだけど無理そうね…』
『買い物なら王都じゃないところに行けばいいのではないですか?』
ロトから思いもよらぬ提案をしてくれた。
『でも、門をくぐって出るのは通行証が必要よ、スラム街に戻るのは危険だし。』
『実は海が見たくて一度王都を抜け出したことがありまして』
ロトが照れながら答えていた。王都から少し離れた所に海に面した村がある、そこはアインツ家の領地でもあるので上手く行けば必要なものをそこでそろえられるかもしれない。
『よし、行ってみましょう!』
『ただ、服が……』
ボロボロのTシャツ短パンの恰好で歩き回れば、不審者に見られる。
『どうしよう、お金があっても行くことができないなんて』
『姉ちゃん、鑑定がおわったよー』
ランカがこれから毎日の終わりに皆を鑑定してくれて、その結果を伝えにきてくれた。
●板前チーム
アン 浄化、癒し
ランカ 鑑定、?
キリト 吸音 ?
シン 暴食、毒無効
ヒトラ 毒魔法、不死
ウォルト 武術、?
セシル 剣術、?
エリザベス 炎魔法、インベントリ、レンタル
●匠チーム
ドレーク 製造
ジョン 隠蔽
スラジイ 予知
ロト 移動
ヒユウ ?
ユウト ?
クラウス ?
カズマ ?
●スラム街側
アンリ 通信
全体的に板前チームに居たメンバーたちが能力の芽が出ていたり、開花したりしている。これもアンの力なのか。
開花したメンバーはシンの暴食・毒無効、ヒトラを食べたことで毒無効を獲得できたようだ。アンは癒し、やはり聖女たるもの癒しの力はゲットしちゃいますよね。ヒトラは毒魔法、不死、神話通りである。そして、私は火魔法が炎魔法に変わってる、
そして、レンタル……使ってみようかな。
『レンタル』
【レンタルすることにより、レンタル期間を超えると保家とく子の寿命を短くすることになります?よろしいですか?】
先ほどのアンリさんが通信してくれたスキルのように脳内にAIが話したような声が響く。
延滞しなきゃいいって話ならこれはとても使えるのではないか。
『どうしたの?姉ちゃん?』
『大丈夫ですか?』
ランカとロトさん、そして皆が心配そうにこちらをみていた。
『よし、買い物に行こう!!』
本日もご覧いただきありがとうございました。
最近太ってきたのでダイエットをすることにしました。
目指せ、10キロ減!ファイト―いっぱーーーーーーーつ!!




