第10話 スキル開花
第10話 スキル開花
『いざ、参る!!』
ありったけの魔力を込めるように手に集中させ怒り・悲しみを炎に変換させていく、ここで大事なのは冷静さを失わないこと。これまで漫画を描き続けていた先生達の殆どの方が描いている。
”感情に身を任せて戦うと失敗する”
という、定番の展開!ここに冷静を加えるイメージで炎を打つ。
炎の色は赤から紫へと感情が足されていき、最後には紫がかった青へと変化した。
『インフェルノ!!!!!』
『シュー!!!』
ヒュドラの方も攻撃態勢をとり、毒攻撃で応戦してくる。
ヒュドラは地球でいえばギリシャ神話の怪物で9つ首があるはずだが、今の姿を見ると首は一つである。
そして、不死身なためタイミングを見計らって逃げなければ私は死んでしまう。
『ハァ――――!!!!!』
両者の攻撃は拮抗していたが、徐々にエリザベスの力の方が弱まってきた。
このままではやられてしまう。
『ぃっいたーーーーーーーーーーーい!!!!!』
ヒュドラが叫び、毒の攻撃が停まり、エリザベスの炎がヒュドラに当たった。
『うわーーー!!』
その瞬間、ヒュドラの口から毒まみれの子供が空から降ってくる。
『えっ!ちょっと!!』
子供をキャッチしようと走り、子供の重さと毒のダメージでエリザベスは気を失った。
ーーーーーーーーーーーーーーー
『ここはまた自分の家?』
テーブルの上には綺麗に並べられた、ロバートにお使いを頼んだ品々と日本の通貨ではない今転生しているお金が並んでいた。そして、その横にはヘラクレスと書かれた本が置いてあった。
『そうか!傷口を燃やせばいいんだ!』
神話によれば再生しないように傷口を燃やすことが出来れば再生することはない。
『でも、どうしてこんな本が家に?』
ヘラクレスの本なんて買った覚えはない、やはり私以外の人間がこの家を出入りしている。一番最初の夢で会った本を読んでいた私は本物のエリザベスなのではないかと思う。
ふと、テーブルの上にある新刊案内の小さな冊子に書かれている文字が目に入る。
~~『押しの娘』最終巻 発売~~
ーーーーーーーーーーーーーーー
『嘘!!終わっちゃったのーーーーー!!!!!!!』
『目が覚めた!!』
『お姉ちゃん!!』
スラム街から森に移動した皆が湖に集まってきていた。
アンの浄化の力のおかげでエリザベスの体内の毒はなくなり、わずかではあるが回復していた。
エリザベスはお気に入りの本の最終巻発売がショックで独り言を呟いている。
『やめて!食べないで!』
太った子供がヒュドラの首をつかみ、再生しようとする二つ目の首の部分に嚙みついている。
ヒュドラは先ほど戦った時より小さくなり、人間と変わらないくらいのサイズになっていた。
『お姉ちゃん、シンを助けて!!!』
『えっシン!どこ!』
アンの言葉で我に返り、あたりを見回すがシンの姿はいない。
『ふぉふぉ、あれがシンですじゃ。』
『え?あれが?』
スラジイが指をさした先に居たのは太った子供だった。
少し唖然とした後、すぐ助けに向かう。
『シン、離れて!!!ファイヤーアロー!!!』
シンはエリザベスの言葉に食べながら返事をし、ヒュドラから離れた。
シンが食べていた所に炎の矢が当たり、再生しようとしている頭は生えてこなくなった。シンとエリザベスの攻撃でヒュドラの体はみるみる小さくなり、小さい白い蛇の姿になってしまった。
『うわー、可愛い!』
『もう、ちょっと遊びに来ただけなのにこんな仕打ちある!早くこの子の力で治しなさいよね!』
アンの方に顔を向けて文句を言うヒュドラ。
『また悪さするなら、食べちゃうからね!!』
シンが食べようとするとヒュドラは静かになった。
『……本当にシンなの?』
『うん、蛇の中でここで死んだら明後日の配給が食べられないと思ったんだ。だから、蛇の中を食べて穴を開ければ出れるんじゃないかって思って!ピリピリしたけど美味しかったよ!』
ヒュドラを食べようとすれば毒で死んでしまいそうだけれども死なないって事は毒耐性のスキルでも開花したのだろうか。それにしても、魔物を食べる勇気は虫を食べるのと同じくらい抵抗がある。それをやってのけるシンは大物になりそうだと思った。
『いや、まだ街に戻らないんだから配給もらえるわけないだろ!どんだけ食いしん坊だよ!』
キリトが笑って話すとショックを受けるシンを見てみんなで笑った。
一旦拠点に戻り、みんなで少し休憩することになった。戦闘もあった私とシンの事を考えてくれたみたいだ。
『家が移動できないと分かったから、パーツだけ作っておいて嬢ちゃんにインベントリに入れてもらった方がいいと思って、木材の準備をしていたよ。』
木材はすでに一軒に必要な分は集まっていた、とても優秀である。
『ありがとうございます!板前チームはどうかな?って集まってないよね…』
少し沈んだ空気になった。途中にヒュドラとの戦闘があったため、集めている余裕がなかった。もうすぐ夕暮れで散策に行くにも夜道は危険だ。
『ん?食べ物がほしいの?仕方ないわね、ついてらっしゃい。』
念のため、逃げたり・歯向かって来ないようにヒュドラはシンの首にマフラーのように巻きつけ、すぐ食べれるように手でヒュドラの端と端をもちながら案内させることにした。
『シン、ヒュドラの毒浴びたんだよね?大丈夫だったの?』
『食べたことで毒が効かなくなったんだよ。そしてやっとスキルも付いたんだよ!!暴食だって!』
『暴食?どんなスキルなんだろう?』
『なんでも食べれるみたい!』
やっと他の二人のようにスキルが付いたことにとても嬉しい様子だ。
”暴食”といったら、食べればその者のスキルがゲットできるチートスキルのような気がするんだが、本日の終わりにランカにみんなの鑑定をしてもらい、スキルの整理をしよう。
たわいもない会話をしながら先ほどの湖についた。
『あんた、湖を綺麗にしなさい』
『えっ‥うん…』
ヒュドラがアンに声をかけるとアンは祈りを始めた。祈りで毒にまみれていた湖が綺麗で透き通る湖に変化し、淀んだ空気も綺麗になっていった。
『見ろよ!魚がいる!』
『すげー!!!』
『水美味しいよ!!』
ランカ達が走って湖に入り、はしゃいでいる。
『これである程度ここら辺の魔物は消えたし、この子の力で湖が蘇り、元々いる生命達が息吹だすわ。あとはあんた達の努力次第よ』
『ありがとう、ヒトラ!』
ヒュドラに名前がないと呼びにくいと思い、”ヒトラ”とつけた。
『名前………』
『嫌だった??』
『悪くないわね!』
ヒトラは照れて顔を見せないようにシンの服の中に潜っていった。
今日も読んで頂き本当にありがとうございます。
全タイトルの所に修正加えましたが、
内容は変わってませんのでご了承ください。
漫画が終わるときって本当悲しいですよね…ただ、小説が楽しみ!!




