第9話 魔物との遭遇
第9話 魔物との遭遇
ーー王城にてーー
コンッコンッ
『入って。』
『お母様、エリザベスが自害しました!』
笑顔で報告に来たヘンリー王子の手には燃えたエリザベスのドレスの端切れが握られていた。
『あの娘が死んだ?…どうゆうこと?』
『炎に飛び込んで行ったんだ、初めからメアリーを虐げた罪で死んでいれば良かったものの』
『……』
『見たかったよー、最後の死にざまを…』
『……お母様、本当にエリザベスは王族の血縁では無いのですよね?』
『そうよ、前にも言ったでしょ。王妃教育の際に私が話してしまったって。』
『はい!失礼しました。』
安堵したヘンリー王子は部屋から出て行った。
王妃教育は実際には行われていなかった。フラン国王の寵愛を受けたメイドの娘などに教えるつもりなど毛頭なく、いつこの娘を排除しようかと常に考えていた。メイドのアンの方は上手くスラム街に追いやり、やっと殺すことが出来たが、エリザベスの方は国王によってアインツ家に匿われ、手出しが出来なかった。ただ、謁見の際にあれだけの啖呵を切った割にはあっけなく感じる。
『ジャック、コイル調べてきて。』
『かしこまりました。』
『承知♪』
ーーシャード森林ーー
『ロトさん、家を移動することは出来そう?』
『やったことないからわからないけど、この仮設の建物で実験してみましょうか!』
『お願いします!』
ロトさんの力で仮設住宅をすぐ隣に移動できるかやってみる。ロトさんの能力は手で触れたものを移動できるというものだ。
『ムーブ!』
『あれ?移動した?』
『いや、動いてないと思うけど…』
『…少しだけ、少しだけ』
泣きそうになりながらロトさんが自分の足元を指さすと地面の土台の部分の色が3cmぐらいずれていた。
『す、すごい!こんなおっきな家動かせるなんてすごいよ!』
『そうだね!』
みんなが期待していた分、残念な結果ではあったがロトさんの能力は現状人は移動できても家は動かすことはできないことが分かった。
『なんだ!スラム街に運べないじゃ……』
余計なことをいう、キリトをアンと私で睨みつけていた。
『これから、チームを組んでいきます。家を建設する匠チームと食料を集めて調理する板前チームに分かれて、動いてもらいます。匠チームのリーダーはドレークさんにお願いしようかな、いいですか?』
『えっ俺?製造のスキルはあるけどよー』
この仮設住宅を作った匠こそ、このドレークさんである。他に適任の人はいない。
『宜しくお願いします。次に板前チームのリーダーはシンにお願いしようと思うんだけど、やってくれる?』
『えっ僕?僕スキルもまだ開花してないよ。』
3人組でいるときのシンの表情が自分だけスキルがないことに時折悲しい表情をしていたようにも思えたのでスキルは大事ではあるけれど、ない人たちには自信を無くしてほしくないと思い、シンにお願いした。
そして何より、配給を食べていた時の美味しそうな笑顔がとても素敵だった。
『大丈夫!スキルなんてなくてもシンにはできるよ。』
『うん!!やってみる!』
各チーム分かれて、行動が始まった。
ドレークさんのチームは一度仮設の家を建ててることから作業の工程がスムーズに進みそうだ。
私は両方のチームの状況を把握できるように兼任で動くことにした。そして、アンも能力の開花のこともあり私に付いてチーム兼任となった。
『まずは食料よね!今日のご飯がないと♪』
森の散策は危ないのでセシルさんとウォルトさんがついてきてくれている。包丁を握りながら笑顔でご飯の話をしてくれている金髪の女性がセシルさんである。スラム街に来る前は騎士見習いをしていたそうで女性だという事もあり、差別を受け、身を隠すためにスラム街に住むことにしたそうだ。そして、茶髪のマッチョのウォルトさんはセシルさんについてきたという感じらしい。
剣や武器は調理用の包丁しかないのでこれからの課題の一つでもある。
ランカの鑑定の力を使い食べられそうな植物やきのこ、木の実を取っていく。
『今日はみんな疲れてしまうと思うし、いっぱい持って帰えらないとな』
『そうだね。』
『あっあれ!』
シンが走って飛び出していく。
『シン!!離れたら危ない!!』
走って向かった先には少し紫がかった湖があった。
『何か来るわ』
『えっ』
シンは湖の手前の所で立ち止まると一瞬で丸のみにされた。
『姉ちゃん、あれは…ヒュドラだ、毒攻撃してくるみたい』
『ヒュドラ……』
『シン!!』
『シンを返せ!!!』
ウォルトさんが子供たちを止めてくれていた。今の戦力では勝つのは難しいし、この場所から逃げるにしてもおとりがいないと逃げ切ることは出来ない。
『セシルさん、みんなを連れて逃げてください。私が全然戻る気配がなければスラム街に戻ることも考えてくださいとスラジイに伝えてください。』
『お姉ちゃん、やだよ』
『戻ってくるよ…必ず。』
嫌がる子供たちを引っ張り、セシルさん達は拠点へ戻って行った。
『ヒュドラ、よくも私の板前リーダーのシンを…』
『私はスラムの民たちを率いる炎のエリザベス・ジェームス』
エリザベスの怒りは魔力として体からオーラのように漏れ出ていた。
『いざ、参る!!』




