0.プロローグ
10月某日。
勤め先のブラック企業からの帰り道、俺は電車に乗りながらおもむろに自身のズボンのポケットからスマホを取り出した。
画面が明るくなると、スマホの時計が既に23時を回っていることに気付く。
今日はまだいい方だ。終電で帰ることも間々ある俺の勤め先では時計の針が真上を過ぎる前に帰路につけただけでラッキーだ。
慣れた手つきでスマホの画面を操作し、一つのアプリを開く。
すると画面には大きく『ゼルベスト』と表示され、背景には剣を持った主人公と弓を構えるヒロインが映る。
—ゼルベスト。通称ゼル。
このゲームは王道ファンタジーな世界でその世界に一つだけ存在するという超巨大ダンジョンに潜り、モンスターを倒して下層に住まうボスを討伐するという、どこにでもありそうな普通のゲームだ。
だが俺は会社帰りの電車でこのゲームをするのがすっかり習慣になってしまっている。
画面に表示された俺のレベルは230。今いる階層は実装されている中で最も深い139階層。
「今やってるクエストは・・・、ああそうか。エルフの頼みで薬草を集めてるんだったっけ・・・。」
相棒の短剣をボタン一つで振り回し、指定されたポイントにある薬草を取りまくる。
クエスト完了には薬草が200必要だからあと30か・・・。
電車の心地よい揺れに耐えられなくなったらしい俺の瞼は、徐々に視界を狭めていった。
・・・まだ最寄りまでは時間があるはず・・・。少しくらいならいいか・・・。
そうして俺は揺れる車内で完全に意識を手放した。
亀更新です。
モチベになるので是非気になった方は評価のほどよろしくお願いします。




