宇宙の眠り姫
二つ目のワープを抜けて、次のワープに入ろうとしたら、入り口がなかった
航路地図ではあることになっているのに、何処にも見当たらない
真っ黒な宇宙空間が広がっているばかりだ
ワープは一方通行なので、戻れない
どうすればいいのか?
どうにもならないことはわかっていた
「どうしたの?」
未映子船長がきいた
「次のワープ航路への入り口がないんです」
「困ったわね。仕方ないから、ひとまず別のを通って、やり直そうか」
「それが、別のもなにも、入り口が一切ないんです」
「どういうこと?」
「なにもない宇宙空間に放り出されました」
「航路地図には・・・」
「ありえないはずのことですが、この航路地図は間違っています」
船長の顔が一瞬青くなった
「出発前に、ニア星のドックで入れ直してもらった最新の地図の筈よね
そうか・・・
そうよね」
船長は呟き、頷き、ひとりで納得した
未映子船長は若くて美しい
ニア星の大臣の息子が彼女を妻に迎えたがっていたのだが、船長は遠いファー星の王子と愛し合っていた
そして、ファー星へ、王子の花嫁になるために旅立とうとしていた
だから、大臣の息子は、船長が王子のいる星に行けないように、ドックに手を回したのだろう
自分のものにならないのなら、誰の手にも渡さないぞ、と考えたに違いなかった
「だからか・・・ あいつ、袋小路に突っ込むように、出鱈目な航路地図をセットしたのね」
ボタンを押し、外の空間を映し出した
「星が綺麗だわ」
そう言って、満天の星に彩られた宇宙を見ていた
「近くの港までどれくらいある?」
暫くして、そう尋ねた
「港までは二十光年ほどですが、十六光年ほど先にワープポイントがあります
そこまで、五百年くらいでしょうか」
「五百年か、なにしてよう?」
と、船長がきいた
「寝てるしかないですね。近くに来たら起こします」
「そうよね、それしかない
けど、目覚めた頃には、彼、死んでるわ。せっかくウェディングドレスまで作ったのに、すべて無駄になってしまった」
「船長なら、また使う機会がありますよ」
「それ、あまり慰めになってない」
「そうですか、すいません」
「いいのよ、別に
もう寝るわ、何処かに着いたら起こしてね」
宇宙船は、夜の海を渡る船のように、暗い宇宙を飛び続けた
船長は、魔法の箱と呼ばれている冬眠装置の中で、眠っている
「宇宙の眠り姫」伝説の始まりであった




