二度目の挑戦 2
離陸して、数分後。地上にいるすずから通信が入った。
「下から見てて異常はないけど、どう?大丈夫?」
安全確認のための通信だった。
「今のところ問題はないよ、この前のぶさんに整備を手伝ってもらったこともあって寧ろすごく順調。」
「それは良かった。高度は今どのくらいまで上がってるの?」
目の前にある計器を見ると、針はほぼ2000mの値を示していた。
「高度は約2000m。この先も注意して上がるね」
「了解。気を付けて」
ちょうど2000mを越えた辺りで、すずとの通信が終わった。
それから、また数分が経過して高度は3500mを越えた。この前は4000mほどで異常が発生したから、この先は慎重に行こうと思い、操縦桿を引く手を少し緩める。ふと外を見回すと、もう少し高いところに雲が見えた。下には暮らしている村や港町、畑が広がっている。
外を見回していると、高度4000mまですぐ到達した。ここで、前回の記録を越えたことをすずに報告する。
「現在高度4000m。特に異常なし。現在も旋回しつつ上昇中。」
すぐにすずから通信が返ってきた。
「了解、下から見てても大丈夫そうだから一安心だね!」
この前の記録を超えることができたのが嬉しかったのか、通信機越しにすずの元気な声が聞こえた。すずの元気な声を聴くと、こっちまで元気になれるから不思議なものだ。
「とりあえず、この後は前回の目標だった6000mを目指すね」
「了解。何かあったらすぐに連絡してね」
機内には操縦桿を握る自分一人だが、地上にいるすずがまるで飛行機に一緒に乗って支えてくれているような気がする。
5700、5800、5900、6000!その後も問題は特に起きず、順調なペースで目標だった高度6000mまで行くことができた。
「すず!高度6000まで行けたよ!」
嬉しさに操縦桿を握る力が強くなる。
「ほんと!?やったぁぁ!やったね!」
すずの喜んでいる様子が見ているかのように思い浮かぶ。格納庫には近くの農家さんたちも来ていたようで、通信機からすず以外の声も聞こえた。色んな人に喜んでもらえるのはやはり嬉しい。みんなの歓声を聞きながら、高度6000mを少し超えたところで旋回しながら下を見る。いつも見ている高い山や港にやってくる大きいタンカーが小さく見える。遠くには大きな都市や、雪山なども見える。初めて見る空の上からの景色に今まで感じたことのないような不思議な気持ちに包まれた。
少しすると、すずからもう一度通信が入った。
「雲の上まで行けちゃうなんて、すごいね…」
自分でもこんなに高いところまで来れたことに驚いている。
「この後はもう降りてくるんだよね?気をつけて帰ってきてね」
すずとの通信が終わって降下を始める。発動機の出力を落としつつ、操縦桿を奥へと倒す。降下するにつれて速度が上がり、強いGがかかる。今までには体験したことのないGに思わず操縦桿を手前に引く。その後は旋回しつつゆっくりと降下することにし、時々すずと通信しながら滑走路へと戻っていった。滑走路が見える頃には空が紅く染まり、太陽が山並みに沈んでいくのが見えた。
着陸すると一度機体が軽く跳ね、滑走路をゆっくりと進む。格納庫の前にはすずが誘導用のライトを持って待っている。発動機を止め機体から降りようとすると、緊張が抜けたのか翼から落ちそうになる。落ちそうになったところに、すずが慌てて駆け寄ってくる。
「だ、大丈夫!?」
「あぁ、大丈夫だよ」
大丈夫とは言ったものの、だいぶ疲れているようで格納庫に戻ったところで倒れてしまい、そのまま寝てしまった。