二度目の挑戦
ちゅんちゅん・・・
窓の外から鳥の鳴き声が聞こえてくる。昨日は暗い雲が村の上に広がっていたが、今日は雲も少なく快晴であった。昨日の夜は相棒である飛行機のことや、数日前に現れた飛行機のことを考えてしまいあまり眠れなかった。
眠い目を擦りながら、玄関先にあるポストに新聞を取りに行く。今日も例の飛行機の記事が一面には載っておらず、少し残念な気持ちで家に入る。
家の中で、他の記事も見ているとふと気になる見出しが目に入った。
「謎の航空機、隣国の偵察機か?」
この前話題になった例の飛行機が隣国の偵察機なのではないかという、とある専門家の意見が載っていた。確かに、海を渡った先にある隣の国は近年で軍備を強化しているという話も耳にする。しかし、旧型のプロペラ機を偵察に使うには無理がある。偵察機というのは足が速いのが最も重要である。そのため、今回現れた旧式の機体でそのようなことはしないのではないかという意見も新聞に載っていた。
朝食をとり、今日も格納庫へと向かう。昨日整備した機体を早く飛ばすためにも、早く機体をチェックしておきたかったのだ。
家を出て、格納庫の方へ歩いているとすずが小走りで向かってきた。
「おはよー!格納庫の方に行ったら会えるかなと思って、今日も来ちゃった」
「おはよう、今日もすずは元気だね」
今日もすずの笑顔が眩しい。二人で、飛行機の話をしながら格納庫へと向かった。
格納庫で飛行機の整備をしていると、
「今日、飛んでみない?」
すずが唐突に今日飛んでみないかと提案してきた。実際に今日は天気も良く、海から吹き付けてくる風も弱かった。
「よし、飛んでみるか」
そう答えるとすずは笑顔を見せた。今日もこの前と同じように、格納庫の通信機をすずが担当し、一人で空へ上がることになった。格納庫内で通信機のチェックをし、格納庫から飛行機を出す。鉄の翼が、太陽光を反射してきらきらと光る。
発動機を稼働させ、飛行機に乗り込む。昨日までに整備した、発動機、稼働翼、コックピット内の設備。全てが元気に動き出した。
発動機の音を響かせながら、飛行機は滑走路へ向けてゆっくりと進む。この先、高度6000mへの挑戦に高まる気分に合わせるように、発動機の出力も上がる。
「今回も気を付けてね」
すずの祈りが、無線機を通じて聞こえた。手を軽く上げて、すずに伝わったことを伝える。笑顔になったすずの顔を見た後、風防を閉めて離陸体制に入る。この前乗って以来二度目の挑戦に、期待と不安の心が混ざり合う。
徐々に速度を上げ、離陸。飛んでみると発動機の調子がいいことが地上にいるときよりもよく分かった。速度計、高度計などの計器も特に問題なく動いている。今回こそはと思いを乗せて、操縦桿をぐっと握りしめた。