雨の一日
帰宅後、自分なりにもう一度考えてみた。
すずの言う通りとても危ない挑戦であることは間違いない。今までは村や町の人のために飛んでいたから、危険といっても天気が悪くて視界が多少悪くなるくらいのことしか経験がなかった。自分で上に行ってみて、そして帰ってきたときのすずの顔、今日のことを考えていると自分が決めた気持ちが少し揺らいだ。しかし、なぜかやらないといけない気がしたのだ。
色々なことを考えているうちに寝てしまったようで、机の上には昨日までの新聞と冷めたコーヒーが置いてあった。
起きて、カーテンを開けると小雨が降っていた。まだ陽もちゃんと出ていない時間に起きてしまったせいか少し眠い。眠気覚ましに、シャワーを浴びることにした。
シャワーから出てくると、ちょうど新聞が届いた。昨日の続きが気になっていたため、急いで着替えて取りに行った。
今日の新聞の一面には昨日の飛行機の話題は載っていなかった。おそらく進展がなかったのだろう。一面ではないものの、次のページには特集のような形で昨日までの飛行機のこと、出現した場所の図まで載っていた。気になって読み進めていると、電話がなった。
「もしもし…」
港町の燃料貯蔵施設を管理する「のぶさん」からだった。どうも昨日飛んでいたのを見たらしく、飛行機の燃料の話だった。相棒の飛行機が飛ぶためにはもちろん燃料が必要なのだが、港から格納庫まで燃料を自分で運ぶのは無理なので、購入、貯蔵、運搬、全てのぶさんに手伝ってもらっているのだ。
「昨日は派手に飛んでたな~あれだと、もう空っぽってとこだろ」
のぶさんはいつもちょうどいいタイミングで連絡をくれる。雨でやることもなかったので、今日燃料を入れることにした。
急いで家を飛び出し、バイクで港町へ向かった。
のぶさんのところに着くと、既に運搬車に燃料が積んであった。
「聞いたぞ、何かすごいことをやってるんだってな」
のぶさんに事情を説明すると、興味を持ってくれて、整備等も時間がある時に手伝ってくれることになった。のぶさんは、車の整備なんかもやっているのでとても心強い。すずと一緒にやっていることも話すと、少しからかってきたがのぶさんとの話は面白かった。
「ひとまず、格納庫行くか」
のぶさんの運搬車をバイクで追う形で格納庫へと向かった。
格納庫に着くと、いつも作業をしている机に誰かいるのが分かった。ドアを開けると、机の近くにいるのが誰なのかすぐに分かった。すずだ。朝、家を見に行ってもいなかったのでここまで来て待ってくれていたのだという。のぶさんに、すずも加えて、それぞれ分担して給油作業を行った。
その後、すずが持ってきてくれたお昼ご飯を三人で食べて今日は解散となった