雲の上へ
翌朝もバイクの音で目が覚めた。今日の一面には「謎の飛行物体!?」という見出しの記事が載っていた。少しオカルトちっくな見出しが気になり本文を読んでいくと、数十年前に製造が終わっているプロペラ機とよく似た飛行機が国中の色々な場所で飛んでいるのが目撃されたそうだ。どれもすぐに雲の中に消えてしまい、真相は分からないとのこと。今日のニュースも飛行機関連だったため、面白くてついつい読み込んでしまった。
今日も近くの農家さんのお手伝いがあるので、急いで朝食を済めせて家を出た。
今日は一日がかりの作業だったため格納庫にはよらず、帰宅した。疲れていたためか、夕飯とお風呂を済ませるとすぐに寝てしまった。
次の日の朝、昨日のことに関して続報が載っていないかと新聞を広げると今度はその飛行機の写真と共に続報が載っていた。昨日、国中を騒がせた飛行機は新聞で書かれていた通り数十年前にこの国で製造された飛行機であることが分かった。あの後緊急発進した戦闘機が追いかけて、なんとか一枚の写真を撮影。正体を判明できたそうだ。何よりも驚いたのが、写真の飛行機が自分の乗っている飛行機とそっくりだということであった。
新聞を読み進めていると、村の人たちが数人で家にやってきた。話を聞くと、この新聞の写真はあの格納庫にしまってあるものではないか聞きにきたということだった。目撃された時、自分はすずと話していたので、あの飛行機は飛んでいなかったというとみんな納得してくれたみたいだった。
自分でもそっくりだと思うくらいだから、村の人が間違えて当然である。村の人たちは疑ったことを謝ったのち、この周辺の人に飛んでいたのはこの飛行機じゃないということを説明しに行ってくれた。
「一体、誰なんだろうね~」
その後、お昼を作ってきてくれたすずと、新聞に載っていた飛行機のことを話していた。話している中ですずが一つ提案してきた。
「あの飛行機でも雲の上まで行けるかやってみようよ!」
驚いた。確かに新聞にのっていた飛行機と同じ時代の飛行機だが、雲の上まで行ったことなんかなかったからだ。今まではどんなに高くても山を越えたことしかなかったし、それでも谷間を縫うようにして山の先にある街まで行っていた。
「今日は天気もいいし、ちょうどいいよ!」
と言って、すずは今にでも飛び出しそうな勢いだった。実際、雲の上まで行けるかは興味があったしやってみることにした。
バイクにまたがり、格納庫へと向かう。
いつも整備はしているが、初めてやることを前に入念に点検を行う。格納庫と飛行機には古いながらも通信設備がついていたので、すずは格納庫で何かあったときのために待機していてもらうことにした。
二人で格納庫から飛行機を出し、発動機を稼働させる。この前飛んだ時以上にいい音で発動機が動き、プロペラが回る。左右それぞれの稼働翼、通信設備、計器の確認を行い、準備を整える。
準備が整い、発動機の出力を少しずつ上げる。滑走路と並行になるように機体を動かし、すずに手を振って飛び立つ。さっきまでいた格納庫がどんどん小さくなる。景色はどんどん小さくなっても、すずの期待と心配が混ざったような表情だけはしっかりと見えた。