静かな日常 2
翌朝、新聞と手紙を届けてくれるお兄さんのバイクの音で目が覚めた。今日は新聞の配達だけだったようで、ポストに新聞を入れてすぐ次の家に向かったようだった。
ベッドから起きて、目覚ましのために顔を洗ったあとポストに新聞を取りに向かった。新聞といっても山を越えた先にある新聞社のものなので、この周辺のことは載っていない。
新聞の一面を見ると、この国の新型旅客機のことが載っていた。何十年も昔、この国では世界に誇る素晴らしい飛行機が幾つも作られていた。その技術は今のこの国の産業に繋がる部分も多く、飛行機に関するニュースは新聞に載りがちなのである。小さいながらも、飛行機を持つものとしてこの記事は大変気になった。記事によると有名な技術者が何百人も乗れて、航続距離も長い旅客機を作ったそうだ。いつか自分もそんな大きな飛行機を操縦してみたいと思いつつ、新聞を机の上に置いた。
その後朝食を済ませ、近所の人の畑仕事を手伝うために家を出た。
午前中で一通り仕事は終わり、お昼を食べたあとは道具を納屋に片付けるのを手伝ったあと格納庫へと向かった。
格納庫には飛行機の他に点検に使うための道具や設備、少しだけだが替えのパーツなどが置いてある。この飛行機自体数十年前のもので、製造元も分からないため元々あった分しか替えのパーツがないのが心配である。
飛行機関係のもの以外だと、港町など少し離れたところに行くときに使うバイクや、今はないが時々、村の人に修理を頼まれる乗り物や農業器具などがある。
今日はバイクの点検を少ししたあと、昼寝でもしようと思い屋根の上へと昇った。この辺は周りに何もないので、屋根に昇ると遠くまで見渡せて気持ちがいい。昼間は昼寝に、夜は天体観測にぴったりである。
一時間ほどであろうか、昼寝をしていると遠くから声が聞こえて目が覚めた。起き上がって辺りを見回すと、すずが何かを持ってこちらへ歩いてきていた。屋根の上で軽く伸びをした後、ゆっくり屋根を降りるとちょうどすずも格納庫の前まで来ていた。
「おはよー、お昼寝にはちょうど良い天気だね!」
昼寝していたことはバレていたようで、真っ先にそう言われてしまった。
「あ、これ」
そう言ってすずは何かを渡してきた。水筒と小さめのおにぎりだった。
「ちょうど小腹が空くころだと思って~」
小腹も空いていたし、朝持って出た水筒も中身がなくなり喉も乾いていたのでとても嬉しかった。
格納庫の中にある小さな机と椅子を使い、すずの持ってきてくれたおにぎりを食べる。たまにこうして持ってきてくれるおにぎりはいつも美味しく、好みの塩加減だ。軽食をさっと済ませ、すずにお礼を言う。
「ありがとう、すず」
その後、すずと飛行機のことや今日手伝ってきた畑の話をした。もちろん今日の新聞に載っていた旅客機の話題も出た。特にやることのないときはこうしてすずと話す時間がとても楽しい。話していると、いつの間にかだいぶ時間が過ぎていた。今日はこのあと港町に買い物に行く予定だったので、すずに一緒に行かないかと聞くと元気に「うん」と返事が返ってきた。
格納庫に置いてあるバイクに乗り、二人で港町を目指す。最近はこうして一緒にバイクに乗ることもなかったので、すずが後ろにいると妙に緊張してしまう。
港町で買い物をしていると、すずは色んな人に話しかけられた。本人はそんなことないというが、彼女はかなり美人である。そんなこんなで、買い物を済ませていると陽が落ちてきたので帰ることにした。帰りはすずを家まで送り、帰宅した。