謎に向かって1
翌日。これまでの疲れもあったのか、久しぶりによく寝た。起きると既に太陽は少し高めの位置まで上がり、お昼前という感じだった。ゆっくりと起き上がり、朝食と着替えを済ませた。今日は相棒が完成したことを報告することもかねて、今まで整備の関係で手伝いに行けていなかった近くの農家さんのところを尋ねることにした。すずも連れて行こうかと思ったが、今まで手伝ってもらって自分と同じように疲れているだろうと思い、今日は一人で行くことにした。
近くの畑まで歩く間、新しくなった相棒のことをずっと考えていた。エンジンや計器類も新しくし、パワーはもちろんのこと、新しい計器にしたことで飛んでいる中でも機体の状態を前よりも詳しく把握できるようになった。
そして前よりも一番変わったのは後部座席である。もともと荷物や体調を崩してしまった村の人を乗せるくらいだったため、周辺の機器などを外していたのだが、すずがサポートのために乗ってくれるので取り外した機器や新たに手に入れた機器を取り付けた。座席も新しいものに変えたので、雰囲気が大きく変わった。
そんなことを考えて歩いていると、あっという間に畑に着いた。畑に着くと、作業をしていた近所に住むおばさんが作業を止めて駆け寄ってきた!
「久しぶりね~!雲の上まで飛んだんですってね!すごいじゃない!」
おばさんは口を開くなり、そう伝えてきた。反応を見る限り、村の中ではすでに話が広がっているようだ。
「ありがとうございます。今日はこれまで応援してくださったことの感謝も込めて、久しぶりにお手伝いさせてください!」
久しぶりのお手伝いはとても楽しかった。あっという間に時間は過ぎていき、お昼の時間になった。あまり作業はできなかったが、おばさんが気を使って、畑で採れた野菜を渡して他の農家さんのところも周ってくるように言ってくれた。おばさんに感謝とまた来ることを伝え、他の農家さんのところへ向かった。
何軒か周って、最後にすずのいえに向かった。すずやすずの両親には言い表せないほどお世話になったので、感謝を伝えに行くことにしたのだ。すずの家に行くと、出てきたのはすずだった。
「今日、家に行ったんだけどいなくて、どこかに行ってたの?」
すずも何か話があったのか、家まで来てくれていたらしい。申しわないことをしたなと思いつつ、用件を聞いた。
「特に用ってほどのことじゃないんだけど、今日も何か手伝うことあるかなーと思って」
その話を聞いて、さらに申し訳なくなってしまった。
「今日は近所の農家さんのところを周って、飛行機のことを報告したり、少し手伝ったりしてたんだ」
「そうだったんだ!それなら私も一緒に行ったのに!!」
「すずなら絶対そういうと思ったけど、疲れてるかなと思って」
すずに正直に伝えると、納得してくれたようで、家にいなかったことは大丈夫だよと言ってくれた。その後すずからも
「今日は何か用があったの?」
と聞かれ、すずとすずの両親に感謝を伝えに来たと言うと家の中に案内してくれた。今日は少し早い時間だったということもあり、港町で働くすずのお父さんの姿はなかった。本当はお父さんにも伝えたかったが、すずとすずのお母さんに今までの感謝を伝え、おばさんのところでもらった野菜を渡した。
すずのお母さんと話した後、すずに格納庫に行かないかと言われ、二人で格納庫へと向かった。
既に陽が落ち始めていたが、この季節はまだ完全に陽が落ちるまでには時間があった。少し駆け足気味のすずを追いかけて格納庫に着いた。すずは格納庫のまえで止まると、こっちを向いた。
「これからこの村とも少し離れることになるかもしれないんだよね」
立ち止まったすずはそう言った。まずは山を越えた先にある大きな町で話を聞くつもりなので、そこまで遠くには行かないがあの飛行機を追いかけているうちにこの村とは離れた遠くの場所まで行くことになるかもしれない。
「そうだね、きっとそういう時が来るのかもしれない」
「外の世界は一体どうなってるのかな。もちろん心配もあるけど、楽しみなんだよね!」
すずは明るく答えていたが、やはり不安なようだ。
「すず…」
呼んだつもりはなかったのだが、口から声が漏れてしまっていた。
「ん?」
すずが振り返る。紅くなりはじめた夕陽に照らされて、すずの顔が良く見える。
「二人でこの大きな空のどこかにいる、誰も分からない謎を見つけ出そう」
「うん!二人で…ね!」
みなさんお久しぶりです。約一年ぶりの投稿となりましたが、この後は少し続けて出そうと思っています。読んでくださっている皆さん、ありがとうございます。




