謎の飛行機を追って 2
謎の飛行機が消えていった雲の方を見上げていると、後ろから声がした。
「おーい、どうしたの?」
声がする方に振り返るとすずが畑の間にある細い道を手を振りながら小走りでこちらに向かってきていた。近くまで来ると、もう一度すずが
「難しい顔して空を見上げてたけど、どうしたの?」
と聞いてくる。すずに先ほどまでの出来事を話したい気持ちはあったが、まるで偵察のようにこちらを見ていた謎の飛行機たちが気になって話すことができなかった。すずを妙な事には巻き込みたくなかった。
「空を見上げたら、あの挑戦の時みたいだったから」
こういう時は不思議と緊張してしまうものである。疑われないか気にしながらすずの返答を待っていると
「確かに!あの日は今日みたいな天気だったよね~」
いつも通りのすずの元気な声が返ってきた。元気なすずの声を聞いて、そっと胸をなでおろす。その後、二人で格納庫の中に入りいつも通り作業を進める。今日はお昼前にのぶさんのところに行き、仕入れてもらった新しいパーツを受け取りに行く予定だ。
作業を進めていると、いつの間にか数時間が経過していた。のぶさんのところに行く前にパーツを載せる準備も整った。作業をしている間にも、朝の飛行機のことを何度か思い出したがなるべく気にしないようにしながら作業を進めた。
すずを連れてバイクで港町ののぶさんのところへ向かう。天気の良い今日は、バイクに乗ると風が気持ちよかった。
のぶさんのところに着くと、受け取る予定のパーツが既にトラックに積まれ運ぶだけという状態だった。
「こんにちは」
「のぶさん、こんにちは~!」
二人でのぶさんに挨拶をする。
「二人ともよく来たな」
今日ものぶさんは元気そうだ。パーツの代金は既にのぶさんに渡しているので後はパーツを運ぶだけである。もともと格納庫までのぶさんがトラックを運転してくれる予定だったが、忙しくなってしまったようで、代わりにのぶさんの部下という人が運んでくれることになった。
のぶさんの会社の人が運転するトラックを先導する形で格納庫へと向かった。
格納庫に到着し、荷物を下ろし終わると一礼してのぶさんの会社の人は帰っていった。届いたパーツは主にエンジン回りのものだが、機体に使う小さいパーツなどもある。
発注したパーツの確認などをしているうちに、時間がだいぶ経ってしまったので今日は帰ることになった。最近は二人とも遅くまで作業してしたので、明るい時間に帰るのは久しぶりだ。
すずを家まで送ると、すずの両親が夕飯を一緒に食べないかと誘ってくれた。最近は忙しくて、なかなかすずの家にも来れていなかったのでお邪魔することにした。
夕飯をいただき、その後すずとすずの両親と楽しく雑談をした。世間話や飛行機の話をするうちに外はすっかり暗くなり、時間も遅くなってきたので帰ることにした。玄関まですずが見送りに来てくれたのですずに感謝を伝え、帰ろうとすると何故か外まで着いてきた。初めは外まで送りに来てくれたのかと思ったが、すずの言った言葉に驚いた。
「朝、何かあったんでしょ。私に言えないことなの?」
怒っているのかと思ったが、少し悲しい顔をしているすずを見ると胸が苦しくなった。
「小さい頃から一緒だから、嘘ついてることくらい分かるよ・・・」
いつも元気なすずが悲しそうな顔をしているのは見ていられなかった。
「ごめん、実は・・・」
朝起きたら例の飛行機に似た謎の飛行機たちを見つけたこと、格納庫に向かうと謎の飛行機たちが格納庫の上を旋回していたこと、こちらが見ていることに気が付くと雲の中に消えていったこと、そしてすずを巻き込みたくなくて嘘をついたことを話した。
一通り話すと、すずが少し難しい顔をして黙っている。少しの沈黙がとても長い時間に感じられた。それまで黙って話を聞いていたすずが口を開いた。怒られるかもと思い、少し身構える。しかし
「ばか・・・」
「え?」
思わず聞き返してしまったが、すずが「ばか」と言ったのが確かに聞こえた。
「ばかって言ったのよ!もー!」
少し泣き顔になったすずが抱きついてくる。普通に抱きつかれるだけでもびっくりなのに、怒られると思っていた分さらに驚いた。どうすればいいのか分からなくなり、すずの頭をゆっくりと撫でる。すると、すずが抱きしめる力が強くなる。すずが抱きついたまま、時間だけがゆっくりと過ぎていった。




