本編 1 ~その日、世界は終末を迎える~
世界が終わる。
昼食後すぐの、古典の授業時間だった。
おなかが満たされて、先生の朗読はゆったりとしたお経のようで、クラスの1/3は机に頭がくっついている。どうしようもないほどの、平和な日常。
そんな中で、降って沸いた異常だった。
無論、世界は未だ平常である。
その中で突然こんなことを口にするものが現れれば、他人はその人物を奇異の目で見るだろう。
親に言えば本気で心配されるかもしれない。そんなにテスト勉強がつらいのかって。
確かに、勉強は好きではない。特に暗記科目は苦手だ。どうして進学校に進んでしまったのかと頭を抱える日も多い。
高校二年の11月に至って、学ぶことに意義を見出せなかった諒子にとって、テスト準備期間は苦痛以外の何物でもない。諒子は自分からやりたいと思ったことしか身が入らない人種であった。
来週のテストはおろか、残り一年間以上をどうやり過ごせばいいものか、現時点で途方に暮れている。赤点は回避せねば。
それはさておき。問題は。
世界が終わる。
これは確信であった。別に、予知夢を見た、とか、ふと映像よぎる、とかではない。
『世界が終わる』。この言葉に、すべてが終着点へと向かっている。
問題は、それは本当に『世界が終わる』のか、それとも、諒子の『世界が終わる』――つまり諒子だけが死んでいくのかということだった。
と思ったが、世界が終われば諒子も結局土に還るのだから(星ごと砕ければその限りではないが)どうでもいいか、と、見上げた空には真昼の月がぽっかりと浮かんでいた。